107話
ここは暗く、どこから敵が現れるか分からない中で、何度か小型のトロールと戦う。
森と言う場所もあり、散弾よりもいつもの弾丸を使用する。
薬の効果で魔力も安定してきたので口径の大きな弾丸も安心して撃つ事が出来た。
(よかった。 今は安定してるからこのまま森を抜けていけば外に出られる。 でも敵の数が多くなって来てやがる。 近くに巣があるのか?)
死体からトロール独特の血の臭いには慣れたが鼻にはつく。
それを晴らす為、タバコを吸う事で、その瞬間だけは血の匂いを薄れさす。
ふと、闇夜に浮かぶタバコの小さな火はまるで、今の自分を見ている様だった。
「あぁぁぁぁ」 何処からともなく、声がし、アタシは暗闇に銃を向ける。
(な、何だよ今の声!?)
避けて通りたかったが、何があるのか気になり、声のする方に歩を進める。
もしかするとさっきの魔法使いの仲間がいるのかもしれないと思った。
(助ける義理なんてない) けど恐怖ゆえの好奇心がアタシの歩を進める。
開けた場所に出るとトロール達の声が聞こえて来た。
(いやがったか)アタシは見つからない様に木の陰に隠れて様子をうかがう。
人間の肉だろうそれは、ご丁寧に靴を履いたままの足を食べている様子が見える。
どこかの村を襲ったのか、その足は明らかに小さな人間の足だった。
アタシは、背後にそっと近づき、トロールの後頭部に銃弾を撃ち込む。
穴の開いた頭部から血が噴き出し崩れ落ちる。
「ギャギャ!?」 もう一匹がアタシに襲い掛かるが撃鉄を叩く。
後悔したのは穴の開いたトロール達が地面に倒れ動かなくなった後だった。
「あぁぁぁぁ~ 助けてくれぇぇぇぇ」
声は洞窟から聞こえる声が響くと共に風に乗ってくる臭いに鼻をつまむ。
その匂いはトロールの血の臭いとは違い、鼻腔にねっとりと絡みつくような異臭だった。
弾丸を再装填すると、意を決し、歩を進め洞窟の中に入っていく。
「グゲゲゲゲッ」 侵入者に対してトロールは武器を手にアタシに襲い掛かる。
放たれる銃弾は容赦なくトロールの身体や頭部を貫き、駆逐する。
(今のって!?) 何匹か倒すうちに魔導書のページにいくつか書き込みが増えたような気がしたが、今は見る事よりも歩を進める。
弾は胸や頭部を貫き、勢いが弱まることなく後ろのトロールまで風穴を開ける。
進むにつれ、洞窟の入り口から感じた異臭より、濃い臭いに気が付きその場所に向かう。
(な、何だよこの臭い!?)
板状の扉からでも聞こえる悲鳴は女性のそれではなかった。
扉の様な板を蹴破るとそこには咽るような淫臭でなにをしているかすぐにわかった。
人々の眼は既に生気は無くただ闇雲に快楽を貪る様子が見える。
「グゲゲゲゲゲッ」
一匹がアタシに気づき近づいて来た。
ニヤニヤとアタシを見るその眼は玩具と言うよりかエサであり、食べる行為と同じように欲望の捌け口としか見ていないという事は周りを見ればすぐにわかる。
特にその股座の膨らみに嫌悪した。
「畜生の癖にアタシを犯したいってか?」
銃声と共に辺りは静まり、吹き飛ばされたトロールの身体はそのまま動くことなく。
辺りの淫臭は血の臭いに変わり、淫声は叫びに変わる。
群がり襲い来るトロールに散弾が容赦なく命を奪う。
浴びせ撃つ散弾は、頭部や胸を貫き死体の山を築く。