表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

106/123

104話

「やろぉ! 捕まえてひん剥いてやる」 


 小柄な盗賊はアタシにナイフで切りかかる。

 何度か避け、銃弾を放つが簡単には当たらず空を切る。

 僅かな隙に間合いを詰められ、ナイフが腹部に刺さるが深くは刺さる事は無かった。


 ギリギリのところで銃でナイフを押さえたのだ。

「捕まえたぁ!」 左手で盗賊の頭を掴み、アタシの額を思いっきり顔面に叩き込む。

 鈍い音と果実をつぶすような音が2,3度と続き、男を地面に捨てる。



「へぇ、やるじゃないか 根性もあるみたいだし、良かったらうちに来ない? 今なら肉便器ぐらいなら空いてるからさぁ」 



 魔力を帯びた湾曲の刀身から繰り出される風の塊を、銃で受け止めるがアタシを吹き飛ばした。

 何とか立ち上がるも2度3度と続けて繰り出され、受け止めるだけで腕がちぎれそうになる。

 さっきの手下とは比べ物にならないくらいの魔力が込められている事は理解できた。



(くそぉこれじゃ近づけない)


「疲れたろう…… アンタにはちょいとキツイけど、みんな優しくていい奴らだ」


「お断りだ。 何が優しいって? メルさん達を殺したくせに!」


「メルさん…… あぁあの娼婦の娘。 あんた知り合いだったの?」


「何で…… 殺したんだ。 風の勇者の母親が盗賊で犯行の目撃者がダナンさんだったからなのか?」


「あーっはっははっはっはっはっは」


「何がおかしい!」



 懐に潜りこまれ、鳩尾に拳が突き刺さり、腹部を抱えると背中の衝撃で、地面にキスをする。

 その後は何度も踏みつけられ、罵声と笑い声が聞こえた。


(こ、こんな所で――)


「ふぅ、しぶといねぇ まぁいいさ、あの世での土産話に教えてやるよ。 あの女はなぁ――」





 話を聞いた後でも、アタシは分からなかった。

 なんでメルさん達がこんな目に合わなければならなかったのか。

 あまりにも身勝手で、そんなくだらない理由で凌辱の果てに殺されて言い訳が無いのに……。

 身体の奥底からどす黒い物が湧いてくるのを感じ、飛びそうな意識が怒りで引き戻されるほどだ。



「お前達、この嬢ちゃんを可愛がってやりな。 でも壊すんじゃないよ」


「お頭~、俺達がお化粧させたら、この綺麗な金髪まで白くなっちまいますがよろしいんですか?」


「かまやしないね。 終わったら綺麗にしとくんだよ」



 盗賊の一人がアタシを掴み引き上げる。

 どいつもこいつもアタシを欲望の捌け口にする為の道具としか思っていないんだろう。

 メルさんやレミルもこんな恐怖を味わったのだろうか?

 ダナンさんはどれほど無念だったんだろう


「おぉ? 俺達の相手がそんなにうれしいか。 よしよし、今夜は忘れない夜に――」



 銃声が鳴り響くと、男は股座を押さえ、倒れる。

 アタシは親切心で男の睾丸の1つは鉄の弾を移植してやった。

 よほど嬉しかったらしく、倒れたまま起き上がってくることは無く、どうやら眠ってしまったようだ。

 罵声が鳴り響く前に撃鉄を叩き、残りの弾丸を見事に命中させる。



(こいつ等を生かしておいてはいけない)

 怒りに呼応するかのように魔導書のページが開き、《ショットシェル》という文字浮かび、項目として追加され、形状や性質が書き込まれる。



「へぇ、あれだけ痛めつけても立てるのかい? そのまま、お寝んねしとけばいいものを――」



 帽子を拾い、砂埃を叩いて被りなおし、タバコに火を着けた。

 下腹部の刺すような痛みが気になるが我慢できる痛みだ。

 でもこの胸を刺す痛みだけはどうにもならなかった。



「いいかげん泣けるぜ。 アタシが自分の性別に後悔したのはこれで2度目だ」


「そぉかい でも覆す事なんて出来ないんだよ。 だったら利用しちまえばいいじゃない。 男なんて出さ――」



 仲間の盗賊達がアタシに飛びかかる。

 彼らのぎらつく眼に、いきり立つ股座はナニを想像していたのかがすぐ理解できた。

 襲い掛かってくる奴らは、種族や関係なく、理性や知性のある生物には見えない。

 ただ自分の欲望のままに生きて来た獣であり魔物。

(だとするなら……)

 スキル魔法が発動し、掴んだ1発の弾丸が小さな鉄球へと変化し、円柱上に固まる。

 それはまるで昆虫の卵のような姿を変えた弾を銃に装填する。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ