102話
「べ、別にそんなんじゃねぇよ」
「そろそろ来る頃だと思っていたわ。 むしろ遅いくらいかしら。 ついて来て安心してゲインは今日は留守だから」
ポケットに手を入れ、弾丸を一つだけ握りついて行く。
応接室に案内され、向かいに座った彼女は一息つき、品定めをするようにアタシを見る。
あまりいい気はしないので、タバコの火をつけ直し、彼女に早速、メモの内容を問う事にした。
「この前、渡して来たメモ。 一体何なんだ?」
「読んでくれた?」
「あぁ、あの書かれた場所って――」
「あなたが喉から手が出るほど欲しい情報でしょ。 手に入れるのに苦労したんだから」
「何でアタシなんかに? もっといた筈だろ。 風の勇者とか適任じゃねぇか」
「はぁ……」
ため息を一つ付き、いかにもこいつ解ってない、と言わんばかりの態度にイラつくが要するに、これが公になれば風の勇者の評判が落ちる事を懸念してとの事だ。
でも可笑しなことに数日前にあの親子が犠牲になっている事はみんな知っているはずなのに今更と疑問が湧く。
「噂が確信に変わらないうちに、処理してほしいから、あなたに頼んでるのよ」
「尚更、ほかの奴が――」
「訓練をしてるって聞きました。 それから犠牲になった――」
「てめぇらギルドの尻拭いをしろってか! 風の勇者がしくじったからメルさん達が!」
メルさん達の事を思い出し、怒り、アタシは彼女に拳銃を向ける。
元はと言えば風の勇者達が原因でメルさん達が殺された。
アイツ等がきちんと始末していればこんな事にはならなずにすんだ。
さらに自分たちの失敗をアタシを利用して尻拭いする姿勢が気にくわない。
セシールは立ち上がり、臆する事無く近づき、銃口の前に立つ。
バレルを掴み、そっと自身の胸の谷間。
丁度、心臓部分に銃口を押し付ける。
「な、何!?」
「私達が原因だと言う事。 ここのギルドが気にくわないのも知ってる。 でもあなたしかいないの。 此方は派手に動くことが出来ないから……」
彼女はアタシの目をまっずぐ見つめ、拳を握りしめていた。
勿論、すべてを信じる事は出来ない。
けど言っている事は真実なんだとなんとなく感じた。
そして撃たれ覚悟をしてまでアタシに自分の気持ちを伝える姿に気圧される。
「派手に動くことが出来ないってのはどういう事だ?」
アタシは魔法を解除し、椅子に座りなおし、タバコに火を着け、彼女と話をすることにした。
「ここのギルドマスターは誰で、襲って来た元仲間は誰の指示で動いていたのかしら?」
「泣けるぜ……」
彼女の言葉からギルドと盗賊が繋がっている事が確信に繋がる。
でもわからないのがそこまでして隠蔽したかったものは……
アタシは破いた記事をもう一度見る。
色々と繋がり、何となくではあるが事の真相が見えて来た。
「なぁこれって――」
「勘が良いのはいい事よ。 でもやる事があるんじゃない?」
「アタシにはアタシのやり方がある。 どうするか决めるのはアタシだ!」
「そぉいえばあの戦士があなたの事をずっと悪く言っていたわ。 あの売女って 何か伝えたい事はある?」」
「世の中には2種類の奴がいる。 花を売る奴と喧嘩を売られる奴だよ」
(正確にはアタシが売ったんじゃなくて売られた方なんだけどな)
好き勝手に言うのはタダだが、身体に使えない穴を一つ増やす理由には十分すぎるとアタシは思う。
「つまらない挑発に乗る気はねぇよ。 このメモの内容を信じる事にした」
「そう、期待してる」
彼女が何を企み、何をしようがアタシには関係ない。
敵のアジトが判明して、やる事は簡単。
タバコの火を消し、応接のドアを開ける。