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終わらない物語が終わりを告げた後で

作者: かのさん

終わらない物語が終わりを告げた後で

                       


 大好きだったものがたりは終幕に近づいて

 彼女はおおきく手を振ると その笑顔のまま

 翼でもはえたように駆け出していった


 振り向きもせずちいさくなっていく背中に

 輝いた日々の 瞬間 瞬間が つぎからつぎへと訪れて

 哀しい話じゃないのに 涙があふれてとまらない


 私はどこまでも行けるとまっすぐな瞳がたしかに語っていた


 さんざめいてた季節が過ぎてしばらく経ち

 可愛らしかった少女は 大人になり

 その後ろすがたの装いも おおきく変えて

 水彩画の淡い夏にすっかり溶け込んでしまいながら


 私ね 結婚するの

 視線を合わせないままつぶやいた


 おめでとう ありがとう

 他人同士の交わすよそよそしい会話は蝉時雨にかき消され

 相手が誰なのか訊きもせず 云いもしなかった


 いちばんありふれたしあわせのかたちに身をうずめる彼女はそれでも輝きをたたえたまま

 前を向いてゆっくり歩いていった

 あの時とは違った色どりで 手を振って ほほえんで


 そうして終わりを告げた物語は

 まだ終わることなく続いていく

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