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その9
半年後の披露宴と二次会はつつがなく終了した。二次会の終わり、会場から出ていく参列者を見送って、幹人と果歩は顔を見合わせた。長い一日が終わった。
「結婚したのか」
後ろから声が聞こえた。徹だった。徹はかっちりしたスーツに身を包み、土日だというのに仕事の帰りといった様子だった。その隣には、可愛らしい女性を連れている。その女性は斎藤真子そっくりに見えたけれど、幹人は不思議と穏やかな気持ちだった。
「そっちのネットビジネスとやらはうまく行ってるのか?」
「これからその是非が決まるんだ。お前もそうだろ」
結婚を決めた時に、おめでとう、とさんざん言われた。けれど幹人は思う、花嫁花婿にかけるべきことは「おめでとう」よりも「お幸せに」のほうが適切だ。
「大垣、お前らも頑張れよ」
たぶん、グッドラック、というのが一番適切な言葉なんだろうと幹人は思った。幹人は、颯爽と歩き去っていく徹の背中に、幸運を願って目を閉じた。