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第5話:少年少女、魔王様にお小遣いをもらって買い物に

 武器屋でお金もゲットしたことだしと、3人で街にくり出す。


「さてと、これでさっきの串焼きが食べられるね」

「美味しそうでした」

「あー、あれ鳥じゃ無くて兎なのじゃが?」

「「えっ?」」


 2人がさきほど通りで見かけた屋台の串が食べたいとはしゃいでいたが。

 ウサギだと伝えると、固まる。

 おおかた鳥だとでも思っていたのだろうが。


「やっぱり他のにしようか?」

「ちょっと興味はある……」


 亮はあからさまに嫌そうな顔をしているが、未来は気になるらしい。

 ウサギを食べるのは気が引けるが、味や食感は試してみたいという感じの。

 ゲテモノ料理に、率先して挑戦するタイプかこいつは。

 危険だ。

 異世界でそれは……いや、地球でも外国でゲテモノを食べるのは危険だった。


「取りあえず食べるものはわしが用意する。異国というか、異世界じゃからのう。衛生環境的に不安がある……まあ、治療魔法くらい使えるから腹をくだしたところでどうということはないが」

「魔王が治療魔法……」

「魔王でも、お腹壊すんですか?」


 2人が見当違いなところで驚いているが。


「まず、わしは魔王じゃが聖属性魔法も一通り使える! それと、亮……腹を壊す心配をしておるのは、わしじゃなくてお主ら2人なのじゃが? わしは病気どころか体調不良すら起こさんからのう」

「なにそれ! ズルい」

「ですよね」


 それぞれが、別々の反応を示す。

 聖属性魔法を使えるうえに常に体調万全の魔王ズルいとのたまう未来。

 普通に考えたらそうかと納得する亮。

 

 本当に2人を足して2で割ったら、格段に会話も楽になりそうな気がしてきたのだが……


 それよりも、今にも駆け出しそうな2人の首根っこを掴む。

 

 あっ、駆け出しそうなのは未来だけだったか。


 亮に睨まれる。


 俺、魔王なんだけど?

 というか、年上。

 

 魔王歴のぞいても年上。


 もう少し、年上に対する態度というものをだな……


 いや、まあ今回は俺が悪かった。

 亮も子供らしく、屋台のある広場に駆け出すかと思った。


 子供扱いしているが、2人とも高校生。

 国によっては完全に大人だ。


 うんうん……


 だから、未来は待てって!

 お前は、待ても出来ないのか。


「ほらっ、手を出せ!」

「えっ?」

「自分で買い物をして、お金の価値や使い方を覚えるのだ。それがお前らの最初の仕事じゃ」

「買い物が仕事? 素敵!」


 胸の前で手を組んで目を輝かせながら発せられた未来の言葉に、亮が溜息を吐いている。


「このお金を使って、細かい物価や値引き交渉を学習しろってことですね」

「うむ、そういうことじゃ! 亮は偉いのう」


 亮の頭を撫でてやる。

 すこし不満そうにされる。


「別に子供じゃないのですが……まあ、その姿なら孫と祖父に見えなくもないですし、良いですけど」


 デレた?


 いや、もともとツンではない。

 普通の行動、普通の反応の繰り返しだった。

 面白くないけど、可愛いやつではあるな。


「じゃあ、いっぱい買い物してくるね!」


 逆に素直に喜びを全身で表してくれる未来は可愛い。

 歳の差もあって、本当に娘か孫かみたいな?

 あっ、孫も娘も居なかったわ。


 小さい頃の妹みたいだ。


 うんうん、可愛い。


 いっぱい買い物か。

 こいつは小遣いをもらったらきっちり使い切るタイプか。

 絶対に要らない、物凄く安い小物まで買って執念で。

 大丈夫かなこの子。


「行ってきます!」

「だから待てって!」


 お金を渡した瞬間に飛び出しそうになった、未来の首根っこを引っ掴まえる。

 ここ数分で、何度目だこのやり取り。


「グエッ……」


 喉に襟が食い込んで苦しそうだ。

 苦しそうだけど……


「勝手に走り出して迷子になったらどうするのじゃ!」

「田中さんが、スキルで見つけてくれる」


 いや、まあそうなんだけど。

 なんか癪全としない。

 間違って無いし、簡単に出来ることは出来るけどその考えは靄っとする。

 その信頼、気持ちいいけどさ。


「それでも人ごみに紛れると面倒臭いから、2人ともこれを持って行け」


 そう言って2人に、装飾品を渡す。

 亮には黒い石の入った皮のバンクル。

 鋲は付いてない、普通のバンクル。


「これは?」

「この石に触れて念じれば、わしと会話が出来る。それと石に衝撃が加わったり腕輪を外すと魔法障壁による結界が発動すると同時に、わしのところに信号が送られてくるからすぐに向かう」


 まあ、厄介事に巻き込まれた時の保険だ。


 未来には鈴のついた黒のチョーカー。


「なにこれ?」

「猫の鈴。どこに居ても、すぐに居場所が分かる」

「見たまんまの、不思議道具だった件」


 ちょっと不満そうに口を尖らせた未来だったが、すぐにそれを首につけ始める。

 いやじゃないのかな?


「可愛いから良いよ。それじゃあ、行って来る……にゃん!」


 いったん溜めを作った後で、手首を曲げつつ首を傾げて猫ポーズをして走り去っていった。


 不覚にも萌えてしまった。

 屈辱……

 

 突拍子な行動にあっけに取られてしまったせいで、詳しい説明をする間もなく取り逃がしてしまった。

 まあ、良いか。


 横を見ると、亮の顔が真っ赤だった。


「照れんな、あほくさい」

「えっ? いや、別に照れてなんか」


 顔を背けつつ、両手を突き出してアタアタと振っている。

 なんて分かり易い。

 お約束が服を着て歩いてるみたいなやつだな。


 30分後、きちんと亮が帰って来た。

 何も言わなくても、ちゃんと帰って来られるとは。

 偉いな。


「あまり、買うものはありませんでした。なんかぼったくられそうで怖くて」


 渡したのは銀貨10枚、1万カネル。

 8千カネル返ってきた。


「何かの参考になるかと思って。この世界の傷薬はやっぱりポーションでしたよ」


 異世界っぽいアイテムにちょっとテンションが上がったのか、嬉しそうだ。

 その手には水色の液体の入った瓶が。

 鑑定したら初級ポーションといった答えが返って来た。

 擦り傷、打ち身、捻挫、肩こり、リュウマチ、頭痛、生理痛に効果あり。

 なんだろう、既視感が……

 

 そして効果に期待が持てそうにない。


「3000カネルでしたが、値切ったら2000カネルまでまけてくれました……けど、元々の値段がもっと安そうな気がして。最初の買い物で不安になったので、値段だけ聞いて回るにとどめておきました」


 普通。

 良い事なんだけどさ。

 もうちょっと、子供らしくはしゃいでもいんだぞ?


 まあ良いや、本人は満足そうだし。


「よくやった」


 頭を撫でてやると顔は不満そうだが、ちょっと嬉しそう。

 

「じゃあ、未来を探しに行くか」

「やっぱり、戻って来てないんですね」


 全く視界の中に居ない未来に向かって歩き始める。

 すでに、広場には居ない。

 折角だから気配探知じゃなくて、鈴の音を頼りに。


 すぐに発見。

 裏路地で蹲っていた。


 おいっ!

 おいっ……

 なんで、女の子が裏路地とかに入っちゃうかな?


 危機感無さすぎだろう。

 まあ、害意があるものは、この鈴の音が不快に聞こえるから大丈夫だとは思ったけど。


 どのくらい不快かというと黒板に爪を立てるような、耳元を蚊が飛び回るような……

 そんな感じの音が近付くにつれてよりいやらしく首を掻きむしりたくなるような音に変わる効果だ。


 なんでそんな効果の魔道具を?

 嫌がらせのためだけに作った。


 なんせ寝首を掻きにくる輩が、2人ほどいてね。

 大魔王と、俺の後任の魔王なのだが。

 そいつらは召喚者だったから、効果あるかなと思って。

 絶大だったとだけ。


 そのあと後任の魔王には物凄く文句を言われたけど。

 解せぬ。


 蹲っている未来に近づいて、話しかける。


「田中さん……お腹痛い……にゃん」


 にゃんじゃねー!


 溜息しかでない。

 横で亮も呆れている。

 口の周りにはタレのようなものが付いている。

 何を食ったか知らないが。


 衛生管理上不安があるから、食うなといったのにこいつは。


「うん、腹壊すかもしれないから、買い食いするなって言わなかったっけ?」

「こんなすぐに痛くなるなんて思って無かったし……田中さんのとこまでは持つかなって」


 アホか……


「でも田中さんのとこまで歩いて行くのすら無理だった……このままじゃ乙女の尊厳が……」

「いや、元から乙女要素は全く感じてなかったが。まあいいや、ほらっ」


 俺が手を翳すと、緑色の光が未来を包み込む。

 冷や汗を流してお腹を押さえながら青白い顔をしていたのが、みるみる元気になっていく。


「私! ふっかつ!」

「馬鹿たれ!」

「痛い!」


 腰に手を当てて、急に立ち上がった未来の頭を叩く。

 

「今のは、未来が悪いと思う」

「今のは? 今までもあまり碌な発言してないというか、こいつが良いと思えるところなんてあったか?」


 俺の言葉に、亮がハッとした表情を浮かべ首を傾げる。

 いや、そんな本気で悩まんでも。

 無いの一言で終わりだろう。


「そんな……あるよね? 私にも良いところあるよね?」

「良いところはあるけど、ここで言っているのはそういう話じゃないんだけど」


 未来が必死で亮に縋りついているが、話の論点が違う。

 ここに来てからの未来の言動には、残念だが良いところが無いと思うぞ?


「そ……それに、これは田中さんの魔法が本当にこの世界でも効果があるか調べるために」

「取ってつけたような嘘を吐くな」

「流石にそれも酷い」

「も? それも?」


 本当にね。

 それもどれも酷いもんだ。


「亮変わった……この世界に来て変わったね亮……前はそんな事言う子じゃ無かったのに。亮、冷たくなったよ」


 わざとらしくおよよと泣きまねをしているが。

 流石に付き合い切れない。


 裏路地に壁にもたれて座り込んだりしたもんだからドロドロになった未来の服に、浄化の魔法を掛けてやる。


「これが、異世界定番便利魔法のリフレッシュ!」

「はいはい、そうそう」

「田中さんの私に対する扱いが雑すぎて……」


 知るか!

 我が身を振り返ってから、そういうことを言って貰いたい。


 

 

忙しくなってきたので、ストック放出後は投稿ペースを落とします( *´艸`)


定期投稿という形は取りますが♪ヽ(´▽`)/


まだ、ストックは残ってますが♪


宜しければ、ブクマを是非お願い致しますm(_ _)m



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