表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/19

第4話:魔王様お金について調べる

「冒険者やってみたい!」

「やめとけ。どうせ定番のイベントが発生するだけじゃ」


 未来がアホな事を言っている。

 たぶん、そもそもが2人とも現時点で雑魚だと思われる。

 さっき見かけたスライムに殺されそうなほどに。


 やるにしても、少しは鍛えてから……

 うーん……何か、特殊技能でも。


 確か魔法の武具が、宝物殿にいくつかあった気が。

 攻撃はともかく守りは大事だな。

 確実に命を護れるような装備。

 

 宝物殿に繋がるオーブが入った革袋を呼びだす。

 竜の皮で作られた皮の袋。


 うん、配下の竜が脱皮した皮で作ったから、本物だ。


 たしかステータスが上がる系は……

 あれ?

 確かここに……

 これ、誰か整理したな。

 

 勝手に触ると、場所が分からなくなるから触るなって言っておいたのに。

 床に放り投げてるんじゃなくて、床に置いてるんだと何度説明しても綺麗に棚に陳列する配下が居る。

 宝箱に入れて見たり、セキュリティ抜群の透明のケースに入れて見たり。


 あった、あった。

 透明ケースの中に。


 ふふふ、たとえどんな結界を張っていても……あれ?

 硬いなこれ。

 うわっ、電撃が。

 痛く無いけど、ピリッとくる。


 取れない……


 仕方ないから、あっちの棚に置かれた鎧で良いか。

 

 どれどれ?


 怨念の鎧か……

 たしかこの鎧を着て殺した相手の人数だけ、ステータスが底上げされる鎧。

 

 ちなみに、これまでに使用していた人達がかなりの人数を殺しているから強いのは強いけど。

 

 副作用として、毎晩殺された相手に殺されるという悪夢を見るらしい。


 俺も試しに使ってみたけど、夢の中でも俺は強かったとだけ……


 これ、要るかな?

 真っ黒で、鎧のあちこちが苦悶の表情を浮かべたフェイスボール的なのが浮かんでるけど。


 あとで聞いてみよう。


 それよりもまずは2人のステータス的なものを調べないと。

 基礎ステータスは俺でも見られたが、この世界独自の職業適性やらスキルってのは分からない。


 ちなみに俺が前居た世界に職業適性なんてのは、無かった。

 いや、あるにはあったけど、普通の職業適性というか……

 手先が器用なやつは、職人が向いているとか?

 小さいころから剣を学んでいる人は、騎士や剣士を目指す的な?


 この世界での職業についても少しだけ情報を仕入れたが。

 この世界では適性のある職業にしかなれないと。

 というか、適性のある職業になっていると。

 すなわち、決められたロールがすでに与えられているらしい。


 そしてその職業によって、色々な成長ボーナスが付くらしい。

 すなわちレベル1なら、たとえ魔導士でも魔法が使えない。

 たとえ剣士でも、剣はいまいちといった感じらしい。

 レベルが上がると、職業に合わせたステータス値が上がっていく。

 そして、スキルも覚えると。


 いまいちレベルのある世界と無い世界の差が分からない。

 俺が前いた世界でもレベル的なものはあったけど、ハンティングトロフィー的な。

 多少の恩恵はあるが、それ以上に敵を倒した証みたいな……


 まあ、そんなわけでこの世界では、与えられた職業が優秀でもレベルをあげないといけないと。

 

 でもって大体の人が、職業に準ずる仕事についているらしい。

 その上で身分があると。

 王様が農家の職業適正があるかもしれない。

 身分としての騎士が実は、料理人の職業適性があるあもしれない。

 騎士という職業適性があるにはあるらしいが、いくらその適正があっても貧民が騎士になれることはほぼ無いとか。

 フリーランスの騎士というか……傭兵騎士的な?


 ただ、ある程度親の資質が受け継がれるらしい。

 だから、農家の子は農家。

 騎士の子は大体が騎士の適正を持って生まれると。

 

 何とも、夢の無い世界だ。


***

 さてとまずは、情報収集に行こう。


 情報を仕入れるためには、まずは新聞的なものを見るのが一番だけど。

 そんなものは無さそうだな。

 紙自体が高級品なのだろう。

 植物紙が無く、羊皮紙がメインのようだし。


 金儲けの手段に植物紙が使えると、心の中でメモを取る。

 なるほど街の中は石造りの建物と木造の建物が半々くらいか。

 目抜き通りには数多くの店が立ち並んでいて、通りには多くの人の往来がある。

 俺達三人の服は、一人で調査と身分証の作成の為にミランダの街に行ったときに見掛けた人達を参考にしている。

 それなりに上等な身分っぽい人たちの服を真似ているが、未来と亮は服に着られている感じがあるな。

 

「情報収集ってどこでやるの?」

「うーん……適当に質問して、相手の心を読むとかかのう」

「心読めるの?」

「むしろ、なんで魔王に心が読めないと思った?」

「いや、かっこよくないから……割とサイテーな力だと思う」


 未来の言っていることはごもっともだけど。


「田中さんに限って、安易にそんなことするわけないじゃん」


 いや、亮のこの不用心さもどうかと思う。

 

 2人を足して、2で割ったくらいが丁度良い…… 

 そうだ、いっそ合成させて……

 いや、やらないけど。

 やったら、色々と捗るなと思っただけ。


 守るのも、世話するのも半分で済むし。


「なんか、田中さん変な事考えてない?」


 なっ!

 心を読むスキルを持っているだと?


「顔に出てますよ?」


 そういえば、配下の者達にもよく考えていることを当てられていたのは良い思い出だ。

 俺、そんなに顔に出やすいかな?


「そこで顔を触ったら、それはもう肯定って意味じゃないですか」


 亮が呆れて溜息を吐いている。

 もう一度言おう。

 亮が呆れて、溜息を吐いている。

 まさか、亮に呆れられる日が来るなんて。

 しかも、こんなにも早く。


 かなりショックだ。


 色々と情報を集めることに成功した。


 お金の価値が分かったから、あとは社会情勢的なものを。

 

 いま、少しだけこの世界の小金持ち状態。

 適当に創り出した武器を売ったお金が、財布に入ってる。

 少しだけウハウハ。


 まあ、武器屋でのやり取りも割といい加減なものだったのだが。


***

「そうですね、この剣でしたら8万カネルくらいですかね?」


 カネルがこの世界か、この国の通貨の単位と。

 ふむふむ、ミスリル製の魔法剣の価値が8万カネルか。


 さっき屋台で見掛けたなんの肉か分からない串焼きが、60カネルだったから。

 大雑把に考えて8万円前後くらいの価格かな?


 意外とこの世界でミスリルの魔法剣てのは、珍しくないのかもしれない。

 ちなみに一緒に出した鋼鉄の剣が、12万カネル。

 鋼鉄の剣の方が高いのか。

 そうかそうか……


 んなわけあるか!


「流石に青銅の剣なんて、田舎者くらいしか使わないですから。それでも、だいぶ色は付けさせてもらったんですよ? 一生懸命磨きあげられて手入れもされているみたいなので、飾りとしては使えそうですし」


 ふむ……

 こいつは本当に武器屋の店主なのだろうか?

 青銅とミスリル銀の違いも分からないなんて。


 胡散臭い。


 売ってくれというオーラが全身から滲み出ている。

 どうやら、ぼったくるつもりのようだ。

 面白い。 


「おお! 凄く良い値段! お金持ちになれるねおじいちゃん」


 未来が金額を聞いてはしゃいでいるけど。

 違うんだ未来。

 それは銅の剣なんかじゃないんだ。


「ふむ……じゃあ、こっちの鋼鉄の剣だけにしようかのう?」

「えぇ……分かりました。でしたら、青銅の剣をセットで売ってくださったらもう5万カネル上乗せしましょう」


 馬鹿だ。

 こいつは、商売が下手過ぎる。

 もうバレてるんだから、そこで値を吊り上げたら、店主……お前も価値を知ってたのかってなるだろう。

 お店の信頼を落とす事にしかならないというのに。

 

 うん、目が血走ってる。

 よっぽどの逸品のようだ。


「しつこいのう、その鋼鉄の剣も業物じゃ。欲など出さず、最初に提示した金額でその剣を買えばよい」

「はぁぁぁぁ……分かりました、この名剣が手に入るだけでも恩の字ですからね」


 絶対に売る気が無いという気持ちが通じたのか、店主が溜息を吐いて金貨2枚ほど用意している。


「釣りは出せんぞ?」

「いえ、適正な価格でいったら買値は20万カネルといったところでしょう。少しでも心象を挽回しておきたいので」

「最初から、そうしておけば良かったものを」


 俺の言葉に、店主の男が悔しそうに歯ぎしりをしている。


「まあ適正価格なら、とてもじゃないけどそっちの剣は買い取れそうにないですし」


 これは本心らしい。

 もしかしたらあわよくばくらいにしか、思って無かったと。


 だからどうせ手に入らないものだったし、やっぱりといった気持ちが強そうだ。

 

「お金も手に入ったし、これからどうするの?」

「貨幣価値は1カネル1円くらいで考えた方が、分かり易くて良さそうですね」

「物価は、まあ文化や土地の差で変動が大きそうじゃが、概ねそんなところかのう」


 金貨2枚だと使い勝手が悪いので、一通りの硬貨で支払って貰った。

 金貨が1枚。

 大きな銀貨が9枚。

 銀貨が9枚。

 大きな銅貨が9枚。

 銅貨が9枚。

 薄い板状の小さな銅貨が10枚か。

 それぞれ上から10万、下が1カネルの価値か。

 分かり易くて助かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ