第16話:メリッサの弟子 モリッサ 前編
「変な竜だったね」
「仲良くなれそうな気がしなくも無かったけど」
バハムストを見送って、亮と未来がそんなことを言っていた。
竜か……いや、龍か?
そこらへんは良く分からないけど、西洋っぽいから竜かなやっぱり。
いや、バハムストで良いか。
「さて、明日も早いのじゃろう? 寝るぞ」
「はーい、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
次の日も普通にギルドに行って依頼を受けるので、2人に早く寝るように促す。
テレビも無いせいか、日が暮れたら寝るようになったので大分楽だ。
来たばっかりの頃は、2人ともなかなか寝付けずに色々と暇つぶしの相手をさせられたが。
途中で睡眠魔法を掛けてやるようになって、最近では自分達から眠るようになった。
ルキアとルナはさらに早い時間に床についているが、寝る子は育つというし。
子供だから、当然だろう。
2人が自分達の部屋に戻ったのを確認して、庭の一角に目を向ける。
「で? 性懲りもなく何をしにきたんだ?」
「ゲッ! バレた!」
そこに声を掛けながら、手を翳す。
間を置かずして、一匹の蜥蜴が茂みから石が敷き詰められた場所に移動する。
「見つかってしまっては仕方ない、お前に言いたい……ん? あれっ? ちょっと待って?」
小さな蜥蜴が何やらえらそうなことを口にしようとしたが、何かおかしなことでもあるのか首を傾げる。
そして周囲を見渡して、こっちを見て、上を見上げて、またこっちを見る。
「どうした?」
「あれっ? 戻れない? ちょっと待って!」
「戻れないとはなんじゃ?」
「いや、元の姿に戻れなくなっちゃった。ええ」
そりゃそうだろう。
俺が蜥蜴の状態に停止の魔法を掛けたからな。
その姿のまま固定されるように、仕向けたわけだ。
正直創造魔法といってもいいくらいに、俺の魔法は自由度が高い。
というか、魔法っていうのはこういうものだろうというのを体現したような魔法だ。
「そうか……なら、一生喋る蜥蜴として過ごせばいいではないか。用事がないならとっとと出ていくがよい。わしも、もう寝ようと思うし」
「待って待って! このままじゃ、私なんにも出来ないし! 助けてよ!」
「何故助けなければならんのじゃ? というか、何も出来ないなら余計なこともされなくてすむのう」
「そんな、意地悪言わないでよ」
こいつは自分の状況が分かっているのだろうか?
そもそもが、変化の魔法まで使って勝手に忍び込んでいるというのに。
こともあろうか、そこの家主に助けまで求めるとか。
厚顔無恥にもほどがある。
って、現在進行形で意地悪している俺のセリフじゃないけど。
「五月蠅いのう……ほれっ」
「わわっ!」
仕方ないので解呪の魔法を掛けてやる。
一瞬で少女の姿に戻ったそいつは、自分の身体を見て……固まる。
「キャアアアアア! ちょっと、見ないでよ! すけべ!」
「……いや、蜥蜴になるのに、自分で服を脱いだんじゃないのか? 変化した場所に服があるんじゃないのか?」
「えっ? あっ! わぁぁぁ! ちょっと、あっち向いてて!」
「というか……服ごと変化できんのか」
一糸纏わぬ自分の姿を見て両手をこっちに突き出していたが、距離が離れているので隠していた場所がもろもろ丸見えだったり。
うーん……うーん……
美少女ではあるが、守備範囲外だ。
胸もまだペタンとしているし、毛も薄いから中学生くらいかな?
将来に期待といったところ。
正直興奮よりも、後ろめたさというか。
ついうっかり見てしまってすまんすまん程度の感情の揺らぎしかない。
「もう、お嫁にいけない」
「うむ、別に気にすることはないじゃろう。まだ、女の身体というには至らんところも多いし。そもそも老人のわしからすれば、赤子の裸みたいなものじゃ」
「……これでも140歳なんですけど? 肉体年齢も21歳くらいなんですけど?」
「うむ、ガキじゃな」
俺の生きて来た年月の約7分の1くらいか。
「はっ?」
「わしは、1031歳くらいじゃが?」
「えっ?」
「ガキじゃな」
「はい……」
てかその体つきで21歳って……
よく見ると、髪で隠してあるが耳が尖っている。
エルフみたいだな。
「というか、エルフかお主」
「そういうあなたは……えっ? 何者? なんで1000年も生きてるの? 嘘ついてるでしょう!」
あー……うるさい。
それから色々と話を聞く。
「ふむ、お主の師匠であるメリッサに拾われて魔女として100年ほど修行を積んだと。で森を任せられるおうになったからと、師匠は世界を見て回る旅に出た訳か」
「ええ、師匠が920歳だから、タナカさんは師匠よりも年上ですね」
「そうじゃな……で、何をしにきたんじゃ?」
「えーっと、一応森の管理人をやってる訳でして、こう得体のしれない建物を急に建てられたら困るというか」
「バハムストと似たようなことを言うのう」
どうやら、こいつも俺があいさつに向かわなかったことで、嘗められたと思ったらしい。
嘗めた訳じゃない。
気にするほどのことでも無いと思っただけ。
「いやいや、これでも結構魔力あると思いますよ? 気にするほどじゃないって」
「ん? 口に出てたか?」
「ええ、思いっきり!」
どうやら、考えていたことをつい口走ってしまったらしい。
「まあ、今日はもう遅いし、明日また改めて来るがよい」
「そうですね……って、貴方が来いって言ってるんです! なんで、私が毎回足を運ばないといけないんですか!」
勝手に来ていたくせにこの言いざま。
こいつは、本当になんなのだろう。
ちなみにメリッサに弟子入りしたときに、モリッサと名前を改められたらしい。
その時に前の名前を奪われたらしく、師匠の言う事に絶対服従しないといけなくなったと。
うんうん……どっかで聞いたことのあるような話だな。
しかもそのせいでエルフの里にも帰れずに、師匠が居なくなってから30年くらいずっと一人で過ごしていたと。
不憫だ。
「お前の名前はエルナな? これで解放されただろう?」
「そうそう、私の名前はエルナ……えっ? なんで知ってるの? そうよ、私はエルナ! エルカとエルダの子供!」
これで無事に解決だな。
もう魔女の弟子として過ごさなくても、里にも戻れるだろうし。
「って、ちょっと待ってよ! いまさら、どの面下げて里に戻れって言うのよ! 森の管理者として、里にも貢物を要求したりしてるのに」
そんなことまでは知らない。
というか、お礼より先に苦情を言われるとは思わなかった。
「うわーん」
と思っていたら、ルキアとルナの部屋から泣き声が。
こいつがあんまり騒ぐから、ルナが変な時間に目が覚めて泣き出したようだ。
「貴様が騒がしいから、ルナが起きてしまったではないか!」
「えっ? あっ、いや……ごめんなさい」
仕方なくモリッサ改めエルナを本殿に放置して、ルキア達の部屋へといく。
ルキアは布団を頭からかぶって寝ていたが、隣のベッドでルナが上半身を起き上がらせて大泣きをしている。
「大丈夫かい?」
「ワーーーーーン!」
駄目だ。
幼児特有の寝ぼけた泣き叫び状態。
たまに泣きながら走り回ったり、布団を激しく叩いたりする子もいるみたいだけど。
ルナは胸の前で布団の端を両手でつかんで、それを噛んだりしながら泣いている。
こうなると、一度完全に起こさないと落ち着かないだろう。
「ルナ、起きろ」
「ワァァァ! ウゥ! アアアアアア!」
癇癪をおこしたルナを一生懸命あやしながら、起きるようにもっていく。
魔法で寝かしてしまえば楽だが、こうやって自分の力で向き合う方が良い気がするので一生懸命抱きしめて話しかける。
「うう……うぅ……」
ようやく落ち着いたのか、少しずつ静かになって目がトロンとしてくる。
よしっ、もう少しで寝るぞ。
「居た! なんで、急に放置してどっかに行くんですか!」
「うぅ……ううう……ウヴァァァァァァァァァァン!」
いきなり部屋に飛び込んで来たエルナの声に吃驚したルナがまた泣き始めた。
こいつ……
時間があまりとれなくて、途中での更新になりました(,,・д・)
後半は、なるべく早めにあげられるよう頑張ります♪ヽ(´▽`)/




