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第14話:森の魔女と出会う魔王様

 森の中から視線を感じる。

 物凄くこの家を見ている。

 なんだろう……


 魔力量的に魔女かなと思ってるんだけど。

 どうかな?

 エルフっぽい人たちの里は、大体分かってる。

 ちなみに彼等の魔力量と比べても、この家を見ている人の魔力が豊富なのは分かる。

 だから、魔女かなって思ったり。


「もし、そこの方? 道に迷われたのかな?」

「えっ? 私?」


 興味があったので、屋敷から出て茂みの方に声を掛ける。


「えっと……なんで?」

「なんで?」


 なんでとは、なんだ?

 

「まあ良い、よくぞ気付いたな! その方、誰に断ってこの森にこんなものを建てておる!」

「ああ、そういうのは良いから。何じゃわしらに用事か?」


 いきなり森から飛び出してきたのは、20歳前後の若い女性。

 黒いローブを身に纏っているが、森だととてもよく目立つ。

 夜ならあれだけど、日中は緑色のローブとかの方が良いんじゃないかな?


「ええ……」


 にべもない俺の言葉に、女性が不満そうな表情を浮かべている。

 

「私はこの森を作った魔女の孫にあたるものだ! すなわちこの森は私の支配下にある!」

「作った本人ではないくせに、偉そうじゃな」

「……」


 というか本人はどうしたんだろう?

 孫ってどういうことだ?


「師匠……最近の人間って凄くドライです」


 なんか独り言を言い出したけど、大丈夫かなこの娘。


「旦那様どうされたのですか? おや、どなたですか?」


 俺が1人で外に向かったっきり、すぐに戻らなかったのでルキアが心配して様子を見に来てくれたらしい。


「ああ、こちらの淑女が道に迷ったらしくてのう」

「淑女……って、迷ってないし! というか、ここ全部私の庭だし!」


 なんかまともに相手するのが、かなり面倒くさいタイプだ。

 適当にあしらって、追い払ってしまいたい。


「少し頭のイタイ奴のようじゃのう」


「師匠……最近の人間って凄く無礼です」

「どうでもよいが、屋敷の周りをあまりウロウロせんようにな? どこの不審者かと思って思わず攻撃するところじゃったぞ?」

「なめるな! そうだ! なめたな? よしっ! 私をなめたことを後悔させてやるんだから!」


 おお、どうやら怒らせてしまったらしい。

 そんなに何度も繰り返し言う程に、馬鹿にされるのが嫌なのか。

 親切心から警告してやっただけなのに。

 魔力が膨れあがるのを感じる。

 そうだな……

 前の世界の俺の配下の魔王軍の平均的な小隊長クラスから、優秀な小隊長クラスにはなった気がする。

 些細な変化過ぎて、よく分からないけど。


「あまねく水を司る聖霊よ「長そうじゃな、それ」」


 なんか魔法を使うための詠唱っぽいのを始めたので、取りあえず目の前に移動して口に飴を突っ込んでみる。


「ムグッ!」

 

 思わず面食らった顔をしていたが、口に何かを突っ込まれたのに気付いて吐き出そうとして固まる。


「甘い…てか美味しい!」


 うん……詠唱とともに渦巻き始めた魔力が霧散するのが分かる。

 そうか、詠唱を中断させると魔法は発動できないんだな。

 一つ賢くなった。


「それは良かった、良かった」


 俺は顎鬚をさすりながら、ルキアの背中を押して屋敷へと戻る。

 相手にするだけ、無駄な気がしてきた。

 得るものも、無さそうだし。

 

「ちょっと、待ちなさいよ!」


 後ろから女性が追いかけてくるのが分かったが、無視して扉を閉める。


「ブハッ!」


 思いっきり扉に何かがぶつかったような音が聞こえる。


「痛い……」


 そして、何やら小さな声で痛いとも聞こえた気が。

 まあ、良いか。


「宜しいのですか?」

「うーん……本人が迷子じゃないと言い張るなら、放っておいても問題無かろう」


***

「また来てますよ」

「うむ……」


 縁側で本を読んでいたら、ルキアが報告してくる。

 ルナが見張っているらしい。

 あんまり近づいて欲しくない。

 馬鹿がうつったら困るし。


 最近、この辺りをウロウロしているローブ姿の女性。

 漆を周囲に植えたら、3日くらい来なくなった。

 その後は、がっつりと長ズボンと長袖シャツを着て、顔にマスクをつけたうえでローブを纏ってくるようになった。

 ので、漆を魔改造して触手を使えるようにした。

 マスクをはがしたり、袖をめくったりしてタッチするだけ。

 それ以上のことはしない。


 暫く来なくなった……と思ったら、手に鎌をもってやってくるようになった。

 なんともまあ、執念深い。

 

 そういえば、一度だけ屋敷に向かって水の球を飛ばす魔法を受けたな。

 自動防御結界に阻まれたうえに、倍返しの罠が発動してどっかに吹っ飛んでいってたけど。

 ちなみに倍返しは、1回目なら2倍返し、2回目なら10倍返し、3回目の攻撃なら100倍返しと、繰り返す程に倍率があがるようにしてあった。

 1回目で懲りたらしい。

 根性無しめ。


 そんなことを繰り返して居たら、屋敷の外が妙に騒がしいことに。

 爆発音とか聞こえる。

 そして、その時に飛び散った土や石、木片が屋敷の結界に当たった。

 倍返し発動して、複数の悲鳴が聞こえてくる……


「きゃああああ! なんで!」

「ふん! この程度の礫など大したダメージにはならぬ……ぬっ? 痛い! 痛い痛い! ぎゃああああ!」


 最初の反撃は耐えられたみたいだけど、魔女の魔法で被弾したぶんは10倍返しになってるから。

 しかも、遅れて来た第2波と第3波の爆発の衝撃がそれぞれ10倍と、100倍になって跳ね返っていたのだろう。


 五月蠅い。


「あの……大丈夫ですか?」

「おうち、こわれちゃう」


 ルキアとルナが不安そうに俺の後ろに隠れて、服にしがみ付く。

 こんなに怯えて可哀想に。

 2人を安心させるように頭を撫でてやる。


「まあ、この屋敷はちょっとやそっとじゃ壊れんから、安心して良いぞ。ただ、うるさくて仕事にならんな」


 2人が怯えて、家のことが出来そうにないので今日は休みにする。

 

「そうだ、ちょっと早いが街に行くか……お主らも付いてこい」

「宜しいのですか?」

「いいの?」

「うむ」


 亮と未来を迎えにいかないといけないのだが、いつもより早い時間に2人を連れて行って街を観光しながら時間を潰そう。


***

「そうじゃな、これとこれ、それからこれも貰おう」

「はいはい」

「良いのですか?」

「よいよい、あとはこの帽子とスカートももらおう」

「これ、ルナの?」

「そうじゃよ!」


 取りあえず服を扱っているお店にいって、ルキアとルナの服を買う。

 一瞬でも目を止めたものを、片っ端から店主に言って取り置きさせる。

 お金はコピーしたら駄目ということだったので、宝飾を扱う店に金塊を持って行って換金してもらった。

 相場よりかなり安く買いたたかれたが、当座のお金が欲しかったのと元手もかかって無いので笑顔で快諾。

 ホクホク顔の受付の男に、手元の袋の中を見せる。

 中には金以外にも宝石がたっぷり。


 そして耳元で小声でつぶやく。


「二度とお主の店では取引はせぬからの?」


 男の笑顔が凍り付いていたが、別に気にすることはない。

 いい勉強になっただろう。


 しばらくして番頭を名乗る男が追いかけてきたが、笑顔で「いえ、なかなか素晴らしい教育ですね。私も勉強になりました」と言ってやったらガックリと肩を落として戻っていった。

 そのあと店主を名乗る男性が……まあ、どうでもいい。

 二度といかないだけだから。


 そのお金で、服を大量購入。

 別にさっきのお店でストレスを感じたから、発散しているとかじゃない。

 

 両手いっぱいの布の袋を抱えて……むう、ルキアとルナと手が繋げない。

 仕方ない、魔法で……


「ご自宅まで、お運びさせますよ」


 服屋の店主が出て来て、若い小間使いを貸してくれる。

 値引きもしてくれたし、ここは良いお店のようだ。

 

「ふむ、すまんな」

「いえ、次からは使いをよこしてくだされば、適当に見繕って持って行きますよ。気に入ったものだけ購入いただいたので良いですから」

「ほう? なかなかに鼻が利くようじゃ」

「いえいえ、そんなイヤらしい言い方をしないでください。流石にご老体にお孫さん方の面倒を見ながらのお買い物は大変かと存じまして」

「そうじゃのう」


 孫か……

 ルキアとルナが俺の孫に見えたのか……

 よしっ! 

 ここを、魔王御用達のお店にしよう!

 なかなか、良い店主だ。

 この出会いを大切にしないとな。


「うふふ! ふくいっぱい!」

「里じゃこんな服みたことないです! 着るのがもったいない」

「着ない方がもったいないじゃろう」


 それから、冒険者ギルドで服屋の小間使いの少年を返す。

 勿論、小遣いははずんだけど。


 ここに住んでるのかと聞かれたので、ここに孫のように扱っている冒険者が2人いるから、ここからはそいつらに運ばせると言ったら、少年は「ほへー」と気の抜けた返事をしていた。

 冒険者のスポンサーになるのもまた、金持ちの象徴らしい。

 知らなかった。


 というか、こうなるとこの街にも屋敷を買わないといけないか。

 

「ええ、なんでルキアとルナばっかり! ズルい」


 未来が買い物袋を見るなり喚いていたが、また今度なと言って森に帰る。

 その際に受付のヨシュアに金に糸目はつけないから、でかい屋敷を探しておいてくれと依頼しておいた。


「なるほど」


 何がなるほどなのか分からないが、かなり気合を入れて探してくれるらしい。

 これは、期待が持てそうだ。


 屋敷の外に、色々と服が破れてセクシーな魔女っ子と、鱗がところどころ剥がれてあちこちから血を流している若い竜が仲良く寝ていたので「そんなところで寝てると風邪ひくぞ?」とだけ声を掛けて、屋敷に戻った。

 次の日には居なくなってたので、寒くなってそれぞれの巣にでも戻ったのだろう。


 代わりにかなりの力を秘めただろう老竜と、それなりの力を秘めてそうな賢竜が微妙な距離からこっちを見つめていた。

 ちらっとそちらに視線を送ると、慌ててお互いを押しあっていた。

 来るならとっとと来ればいいのに。


 取りあえず、門を片方だけ開けて屋敷に戻る。

 結界はあるから、害意があれば門が開いていても中には入れないし。


***

「おお、扉を開けておるということは、歓迎してくれてるのじゃな」

「ですね! ささ、ここはどうぞ竜王様から」

「あのなあ、普通こういうのは、使用人や部下が先に入るものじゃろう」

「いえ、相手が格上の場合はその限りではありませんよ?」


 むう、ああ言えばこう言う。

 もし、入った瞬間にわしがいきなり攻撃されたらどうするつもりなのだろう?

 わしを護るのも、お前の仕事じゃというのに。


 それにしてもまさか、森の魔女のやつが先にここに来るとは思わなんだが。

 それ以上に、若い連中が暴走したのにも焦った。

 焦ったが、主が不在のうえに魔女と相打ちか。

 若い衆が情けないのか、魔女が流石と言うべきか。


 とにかく、若い者のおかげで魔女の抜け駆けは阻止できたわけだし。

 せっかくのチャンス……うーむ、足が前に出ぬな。


「ちょっと、足の調子が悪いようじゃ。先に言って、少し遅れる旨を伝えてくれんか?」

「遅れるもなにも、約束すらしてないでしょう! だから、少々時間を掛けても大丈夫ですよ」


 ……どうにかして、先に入ってくれないかな。



 

 


投稿遅れました。

インフルの予防接種のあとから、体調不良に悩まされてまして……

いや、言い訳とかじゃなくてですね……ゴホッ、ゴホッ……

と、リアルに咳がとまらないわけで……寝ますm(__)m


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