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第11話閑話:魔王様に拾われたモフモフ

 僕の名前はルキア。

 名前もない、狼人族の集落の産まれだ。


 そこに住む、ルーガとルミエの息子だった。

 でも、もう今は子供じゃない。

 妹のルナをドラゴンの生贄にしようとするような奴なんか、親じゃない!

 そして、それを父さんと母さんに強引に認めさせた集落の長も、他の皆も群れの仲間なんかじゃない!


 だから僕はルナを連れて集落を飛び出した。

 最初はよく分かっていなかった妹も、自分の状況が分かった時は泣き出して大変だった。

 だから、僕がルナを助けるために集落から連れだした。


 僕の家族はルナだけ。

 ルナが居れば、それで十分だ。


「おにいちゃん……おとうさんも、おかあさんもルナのこと嫌いになったのかな?」

「そうじゃない、そうじゃないけど……自分の子供も守れないようなやつを、お父さんやお母さんなんて呼ばなくて良い」


 3日間、集落から逃げて走り続けたが、追手が追い付く事は無かった。

 父さんが俺達が出ていくのを、そっと窓から見ていたのも知っている。

 俺達が逃げられるように、上手いことやってくれたのかもしれない。

 

 そんなことを隠れてコソコソしなくても、堂々と守ってくれたらよかったのに。

 ルナのことを、堂々と守って欲しかったのに!


 両親に対する失望、村の者達に対する憤りを抱え、ルナを連れてひたすら森を走る。

 目的地なんて無い。

 しいていえば、ルナと2人で生きていけるような場所。

 

 森の中には、強くて怖い魔物もいっぱいいる。

 そいつらの目や鼻を掻い潜ってひたすら逃げる。


 途中で食料が尽きて、虫や木の実を食べながら。

 食べられない日もあったけど、どうにか死ぬことなく走り続けてしばらくして奇妙な物が視界に入る。

 最初は人が住むような家だった。

 

 ただ、集落では見た事のない真っ白で平べったい壁。

 凄く綺麗だと思った。

 周囲には柵が囲ってあり、その中は何故かとても平和な空気が流れていた。


 住んでいるのは3人の人間。

 大人の男性と、僕よりも年上の男の子と女の子。

 2人は兄妹かな?


 大人の男性は、とても優しそうな見た目をしている。

 それと時々、おじいさんも屋敷にいるのを見かけたりもした。


 こんな森の深部に住むようなもの好きな人間は初めて。

 だけど、なんとなく人も敷地内も穏やかな空気を纏っていて、離れたくなくなってしまった。


 最初は柵の近くに身を潜めていたけど。

 夜になると、少しでもあの人の傍にいたくて中央の建物の床下で寝る事にした。


 ある日、床下に藁が敷いてあった。

 もしかして見つかったのかと思ったけど、寒くなって来るから床の下に藁を置いたら少しは上の建物も暖かくなるかなと考えて置いたらしい。


 この館の主っぽい大人の人が、そんなことを呟いて藁をさらに増やしているのを見掛けたから。

 たぶん、間違いない。


 誰かに説明しているような、言い訳をしているような喋り方だったけど……


「いつまでもそんなところに居ないで、近くに来ないか?」


 一瞬自分達に話しかけられたのかと思って、ビクッとなる。

 妹のルナと身を寄せ合って、ジッと時間が過ぎるのを待つ。

 男の人の視線は、柵の向こうの遠くを見ている。

 きっと、僕たち以外にもここに来ている人が居るんだ。


 そう思って、彼がここから離れるのをひたすら待つ。


 日中は柵の付近の茂みで、あまり動かないようにしてボーっとして過ごす。

 身体がなまりそうな気がしたけど、行く当ても無いし。


 ある日、寝床からいつもの茂みに来たら、美味しそうな実を付けた木が生えていてびっくりした。

 昨日まで、こんなの無かったのに。


「あっ、ルナ!」

「おいしい!」


 ルナが耐え切れずに、目の前の赤い実をもいで食べてしまった。

 バレたら怒られちゃう。

 もしかしたら、追い出されちゃうかも。

 でも、こんなに美味しいのが悪いんだ!


 ん?

 美味しいのが悪い?

 なんで、味が……


「おにいちゃん食べすぎ!」


 気が付けば口の周りがベトベトで、周囲に種や赤い皮が散乱している。

 誰がこんなことを?

 ルナか?

 

 いや、俺だ……

 あまりに美味しそうな色つやと、香りについ夢中になってしまった。


 隠れる茂みを変えた方が良いかもと思いつつも、何かを期待して次の日に来てみれば。

 色とりどりの果実のなる木が。


 夢でも見ているのかな?

 それとも、ここは天国かな?


 数日もすれば、僕とルナが好きな果実のなる木の割合が多くなってる。

 もしかして見つかってる?

 いや、実の減りが早いから、木を増やしたんだ。

 だって、さっきこの前の道を男の人が、「”りんご”の木と”みかん”の木は何故か実があまりナラナイナー! モウスコシウエヨウカナー」と言いながら通り過ぎて行ったから。

 きっと見つかって無いはず。


 この男の人、おっちょこちょいらしくてよく道に干し肉やら、パンやら、柔らかくて不思議な味付けをした木の皿にのせた焼いたお肉の塊とかを落としていく。

 しばらくしても戻ってこないので、申し訳ないけどルナと2人で美味しく頂いているけど。


「アレー? コノアタリニ落トシタト思ッタノニナー?」


 いつも食べ終わって離れたあとで、戻ってくる。

 そして、周囲をキョロキョロして首を傾げながら去っていく。


 最初は申し訳ないと思って放置したりしたが、取りに戻ってこない。

 虫が寄ってきそうだったので、仕方なく頂くと食べ終えたタイミングでいつも戻ってくる。

 これでも僕たちが彼等に見つかって無いとか、本当に奇跡だと思う。


 だんだんと風が冷たい季節になってきた。

 流石に床下は限界かなと思ったら、急に庭のすみに誰も使わない建物が出来てた。

 いつの間に作ったか、さっぱり分からない。

 釘を打つ音も、木を置く音もしなかったのに。

 さらにいえば、木材などの匂いすら……


 数日は様子を見ていたけど、男の人が


「うーん、休憩所にしようと思ったけど、屋敷から近すぎてあっちに戻ってゆっくりした方がいいか」


 とぼやいていた。

 そして、本当に使う気が無さそうだったので、こっそりと使わせてもらってた。


 そんなこんなで家出をしたにも関わらず、飢えることも凍えることもなく過ごしていたら事件が。

 妹のルナがあまり食べなくなったと思ったら、苦しそうにして起きなくなってしまった。

 どうしよう。

 

 パニック。


 でも、俺には何もできない。

 もしかしたらという期待を込めて、あの男の人に頼んでみるしか。

 でも、断られたら。

 それどころか、勝手に住んでたことを咎められて殴られて追い出されでもしたら。

 でも、このままでもルナが……


 頭の中がごちゃごちゃになってしまったが、気が付けば屋敷の近くで男の人が帰って来るのを必死に待っていた。

 いつもこの人は、男の子と女の子を朝のうちにどこかに送っている。

 もう少しで、戻ってくるはず。


 いつもより遅い気がする。

 空を見る。

 太陽の位置的に、いつもよりまだ早い時間だった。


 早く!

 早く!


 身勝手にも、そんな事を考えていた。

 自分達となんの関わりもない男の人がなかなか戻ってこないのを、じれったく思って「なんで、今日に限って」と悪態をついたり。

 空を見る。

 先ほどと、太陽の位置はあまり変わって無かった。


 いつもより、時間が長く感じる。


 と思ったら、急に男の人が現れた。

 どいういうわけか、この人はパッと消えて、スッと現れることが多い。 

 いまは、そんなことを考えている場合じゃない。


「どうした?」


 慌てて男の人の前に飛び出したのは良いけど、なんて言ったら。

 物凄く優しい声色で語り掛けてくれているけど、言葉が出てこない。

 もし断られたら……

 叱られたら……

 怖い……


 だけど!

 

 妹を助けないと!


「は……初めてお会いした方に頼むようなことじゃないと思うけど……妹を! 妹を助けてください!」


 結局物凄く怒られた。

 勝手に住んでたことをじゃない。


 妹の体調が二日前から悪いのに気付いていながら、すぐに助けを求めなかったことを。

 物凄くびっくりした。


 普通は勝手に屋敷に住んでたうえに、木の実を盗んだりしたことで叩かれたりすると思う。

 聞けば、床の下の藁も、木の実も、道に置いていた食べ物も、あの建物も全部僕たちのために作ってくれていたものだった。


 物凄く驚いた。

 絶対に気付かれてないと思ったのに。


 最初に妹が男の人に怯えてしまったので、嫌われると思ったけど。

 男の人はショックを受けたような感じで、特にそのことについて思うところはないと。

 徐々に距離を詰めていけばいいと言っていた。


 うん、旦那様は徐々にと言ったよね?

 ご飯の時に、旦那様の膝の上に乗るのは従者としてどうなのかな?


 妹は、最近では旦那様の膝の上が特にお気に入りだ。

 たまに見かけたおじいちゃんも旦那様と同一人物だった。


 姿を自在に変えられると。

 人じゃないですよね、それ?


 年齢は1030歳くらい?

 お爺ちゃん過ぎるし、人の寿命を遥かに超えてるし。


 おじいちゃんの姿の旦那様はとても優しそうに見えて、妹がべったりなのも理解できる。

 時々僕も旦那様じゃなくて、おじいちゃんって呼びそうになる。

 というか、呼んでしまった。

 

 怒られるかと思ったら、目を細めて笑みを浮かべて頭を撫でてくれた。

 物凄く大きくて力強くて、頼りがいのある手だった。

 それからこっそりと心の中で、老人の姿の時はおじいちゃんって呼んでる。


 内緒だけど。


 旦那様はタナカ様というらしく、この世界の人じゃないって言ってたけど。 

 そうだと思う。


 だって、手をかざすだけで料理が出てきたり、物が出て来たりするんだもん。

 普通じゃないし、そんな魔法らしい魔法は聞いた事がない。


 神様って言われても、信じちゃうくらいに凄い力をいっぱいもってる。


 いまは旦那様のそばで、お手伝いをさせてもらってる。

 妹の病気を治して貰った治療費を払うために。


 でも、僕と妹の仕事でもらえる給料って、絶対に毎日御馳走になってる食べ物の一食分どころか、メインのおかずの代金にもならない気がする。

 それでも、銀貨1枚はきちんとくれる。

 住んでる部屋も、前に居た集落の家よりも遥かに豪華。


 こんな家を建てようと思ったら、どれだけのお金がいるのかな?

 

 フカフカのお布団に、温かいお風呂。

 亮お兄ちゃんも、仕事の後にいっぱい遊んでくれるし。

 こんなに幸せで良いのかなって、たまに不安になることもあるけど。


 なんか、色々と悩んでるのがもったいないくらいに充実した毎日。

 なにより、妹とずっと一緒に居られるのが本当に嬉しい。


 ……妹を助けてもらっただけでも返せないくらいの恩なのに、毎日これ恩が溜まっている気がする。

 大人になって自立して、なお人生を10周くらいしないと返せない気が。


「なに、ルナが毎日、病気もせずに成長する姿を見せてくれることが、何よりの礼じゃよ」

 

 と言われたけど。

 やっぱり、この人は神様かなにかだと思う。


 えっ?

 魔神だから神様ってのは間違ってない?

 またまたー。

 信じないからね。


 もと魔王でいまは魔帝で、配下に邪神もいる?

 冗談に聞こえないくらいに、凄い人ってことははっきりと言えるけど。

 こんな優しい人が、そんなはずないし。

 

取り敢えず土曜日の18時とかどうかなと思って、投稿してみます(*´▽`*)

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