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第10話:訓練する魔王様、そして趣味に走る

「足元がお留守だぞ」

「えっ?」


 俺の言葉に反応して、足元を見る亮に対して下から掌を顔面に優しく叩きつける。


「そこで下を見たら、視線が切れるだろう」

「すいません」


 いま俺は亮に、最低限の戦闘を教えている。

 意外と武技各種もマスター済みの万能魔王なのだ俺は。


 1000年の間で400年くらい、武を突き詰めていた時期もあったからな。

 前の世界では地球からの転移者や転生者も割と多かったので、そいつらから格闘技各種を学んだり。

 あとは現地の剣術や杖術、槍術などなど様々な武術も学んだ。


 持ち前の才能……まあ、与えられた身体のスペックにものをいわせて強引に全部マスターしていったが。

 それぞれの最強を目指して。


 だから剣を教えることも出来る。

 とか言いつつ、いまは素手の格闘をしているが。


「ほらっ、また足元がお留守だぞ?」

「その手にはって、うわっ」


 俺の言葉を無視して殴りかかって来る亮の足を軽く払って転ばす。

 なかなか道のりは険しい。


 暫くは木人を相手に、訓練させる。

 俺が造った自動で動く木人だ。

 

 常に亮よりほんの少し早く、ほんの少し力強い動きをするように設定。

 技術レベルもほんの少しだけ上にして。

 行動は割と単調に。


 その間に未来には魔法を教える。


「まずは、火の魔法からだな」

「はいっ!」


 先生と生徒という立場を理解しているのか、訓練の間だけは敬語を使ってくる未来。

 

「魔力をグッと掌に集めて、バッと熱に変換して、ドッと出してみろ!」

「さっぱり分かりません」


 飲み込みが悪い。


「というか、普通に言葉で説明するのが下手くそすぎるでしょう」


 敬語だからって態度までは変わらない。

 その辺りは、やっぱり未来だ。


「そんな事言ってもな、俺はそれで出来る! というかイメージしただけで発現できるからな」

「魔王はやっぱりズルい件」


 ズルいと言われても……


 ということで、改めて懇切丁寧に説明。


 まずは、魔力を感じるところから。

 改めて考えてみても、俺自身魔力ってのが分かってない。

 どうすれば分かり易いだろうか。

 取りあえずは、感じてみて貰わないことには。


 仕方が無いので、未来の身体に手を触れて直接彼女の体内の魔力を操る。

 スキル【魔力操作】を使って。


「どうだ、身体の中で何かエネルギーを感じないか?」

「なんか、気持ち悪いです。身体の中を何かが動き回っているみたいで」


 どうやら、感じることは出来るようだ。


「それが魔力だ、まずはそれを掴まえて自分の意思で動かせるようになれ」

「あっ、分からなくなっちゃった」


 俺が【魔力操作】のスキルを切った途端に、感覚が分からなくなったらしい。

 暫くは未来の頭に手を置いて、ゆっくりと魔力を動かして彼女に自分で動かせるようになってもらうまで待つしかないらしい。


 そんなこんなで一週間が過ぎたのだが。


「はっ!」

「へえ、なかなか鋭いじゃないか」


 亮がそれなりに動けるようになり。


「【火球(ファイアーボール)】!」


 未来が各種魔法スキルを使えるようになった。

 レベルの上昇に伴い、スキル自体は習得していたらしい。

 初級くらいまでなら一通り、火系と水系は中級魔法まで使えると。

 流石大魔導師。


 並行して、亮にも魔力の使い方を指導。

 それと、聖気の使い方も。


 この世界では魔力で魔法が使える。

 その中に、ステータス向上系の魔法や、回復魔法もあるにはあるが。

 バフや回復は聖気がの方が効果が上らしい。。


 そっちは信仰形のスキルとのこと。

 でも、亮は特にこの世界の神を信仰していない。

 そもそも、あまりこの世界の神事情が分からない。


 取りあえず薬師如来様でも信仰するか? 

 回復関連が捗りそうだぞ? と冗談で言ってみた。

 熱心に祈っていたが、特に使えるようになったスキルは無かった。

 現地の神様じゃないと、駄目なのかな?


 仕方なく教会に行って、回復と加護の神様に祈りを。

 結果、回復とステータス向上系のスキルが使えるようになった。


 亮の放つ淀みのない綺麗な聖気を見た、その教会の神官の勧誘が激しかったが。

 流石賢者、その辺りは優秀らしい。


 そんなこんなで、2人とも戦えるだけの地力はついた。

 ついたので……


「今日は薬草採取? 森の入り口で? もうそろそろもっと難易度の高い依頼でも、良いと思うけど?」

「初級冒険者だからな。暫くは、ランクに見合った依頼で金を稼ぎつつポイントも稼げ」


 最近では拠点にしているトアルの街の冒険者ギルドに放り込んで、依頼を適当にこなさせる。

 2人のランクに見合った。

 レベル的には上の依頼も出来るが、悪目立ちして変なのに目を付けられるのは避けた方が良い。


 そういえば全然触れてなかったが、2人が冒険者として登録したり情報を集めたのはトアルの街というところだ。

 平野部にあって、特にこれといって目だった特徴は無い。

 まあ、海や森、川沿いの街を繋ぐ街道の中心に位置する交易都市だ。


 転移で森からそのトアルの街に連れて行って、冒険者ギルドで受付をしたら取りあえずは放置。

 夕方には迎えに来て、合流して森に帰る日々。


 一応例のバンクルと、チョーカーは渡してある。

 それと護衛にこの森に居る、メタルなスライムも。

 亮の鞄に入っている。

 

 敏捷が恐ろしく高く、直径30cmの球体の液体金属が最高瞬間時速400kmで突っ込んでくると言えば。

 その強さは推して知るべしだな。

 それと俺が造り出した、ブリザードスワロウも付けている。

 こっちは未来の肩に常に留まっている。

 

 氷雪系の魔法は一通り使える、魔改造仕様。

 なんと第3位地獄級魔法の嗢鉢羅(うばら)を唱える事が出来る。

 別名青蓮地獄。

 全身が凍傷でめくれ上がり、青い蓮が咲いたような姿に……

 使う機会は無いと思うが。


 2人とも積極的に……ちょいちょい未来が文句を言っているが、概ね前向きに依頼をこなしている。


 どうやら未来は余り日本に戻ることには固執してなさそうだが。

 なるようになるとしか思っていないらしい。

 戻れるなら、いつかきっと戻れると。


 たくましい。

 

 逆に亮は、戻れない可能性を視野に入れつつ、自分に折り合いをつけているところだ。

 戻る事を諦めることはしないと言っていたが。

 戻れない場合に備えて、この地に順応していくことも必要だとも。

 

 相変わらず、真面目で安心。

 出来ることなら戻してやりたい。

 だから、諦めるなよ。

 

 でも戻ったら数百年とか経ってて、浦島太郎状態って覚悟もしておいた方が良いぞ。


 ただ、そうなったら俺の世界にも行けるから……

 そこで配下にした、ガチの神様に相談してみよう。

 俺は魔神だが、そいつは邪神だから。

 ちなみに揉めていたのは、その世界の創造神。

 ただ、雇われ創造神だったけど。

 今は、それもどうでも良いか。


 取り敢えず、その邪神に時渡りが出来るかどうか。

 確認するだけだ。

 あまり、期待はしないで欲しい。


「分かってます! 最悪を想定したうえで、希望を捨てないようにします」


 うんうん、本当に亮は亮だな。


 亮と未来が依頼をこなしている間、俺は何をしているかというと。


 俺達のことを召喚した国の事を調べたり、他の種族や対立関係を調べたりしていたが。

 わりと揉め事の多い世界ということが分かったくらい。


 俺達を召喚した国はリアハルド王国というらしい。

 割と悪い感じの封建国家。

 国王第一主義的な。

 というか、暴君?

 いや暗愚?


 まあ、良い。

 暫くは放置で。

 城内の上役と使用人含めて3人ほど精神支配を掛けて、配下にして色々と情報を集めさせている。


 情報は放っておいても集まるような仕組みを作りつつ、家の周辺を開拓する。

 取りあえず草花をどけて、家だけ用意した状態。

 というか、そもそもは土魔法で床と壁と天井を作り出して、あとは幻影魔法で誤魔化しているだけ。

 これからも住み続けるなら、ちゃんとした家にしないと。


 そう思って作り出したのは、日本家屋に近い建物。

 少しでも、日本を感じてもらいたくて。

 日本を忘れないようにと。


「流石にこれは違う」

「うちも普通の建売で、畳の部屋もありましたが基本はフローリングでしたよ?」

「浴槽が檜って……」


 反応はいまいち。


 純和風建築といえば、純和風建築だと思うが。

 家の周囲を浜縁高欄がぐるりと覆った形の。

 角には擬宝珠も配置したり……


 これも、なんか違うと言われそうだが。

 渡り廊下を隔てて、亮と未来の部屋も作っておいた。

 それぞれの部屋にトイレも付けたし。

 プライベート空間ってやっぱり必要だと思うんだ。


 家の周りも大分余裕をもって、土地をならしたりもしたし。

 石畳や庭園も造ったり。

 池はまだ用意していない。

 その辺りは、これから。


 さらにその周りは一応、柵で覆っておく。

 かなり広い作りになったが、俺的には満足だ。


 寝殿造りの家に住むのって、割とロマンだと思うんだけど。

 寝殿造りだけど厠はトイレだ。

 洋式で、温水洗浄便座完備。

 流水のせせらぎが流せる装置付き!


 お風呂は檜風呂で、男性女性と別々に作った。

 でもそれぞれの部屋にシャワールームも用意してあるので、面倒くさいときはそっちで済ませる。

 ほぼ、3人とも本殿の風呂に入りに行ってるが。


 ちなみに板の間は流石にくつろげないので、4分の3くらいは畳敷き。

 亮と未来の部屋は文句を言われたので、フローリングにしてやった。

 2人ともそれはそれで、少し不満そう。

 雰囲気がとか……子供てのは本当に我儘だ。

 ウォークインクローゼットまでつけてやったのに。

 

 その派手な行動が良くなかったのか、最近家の周りをうろつく不審な気配が。

 割と大胆にうろついているが、バレてないと思ったのかな?

 気配を消して、魔力も隠しているのか反応はかなり脆弱だが。

 微妙な空気の流れとかでも分かるんだよ。

 俺クラスになると。


 でも普通に、気配探知で分かっちゃったりもする。

 もしかして、エルフさんかな?


 ここは是非とも、お近づきになりたいところだけど。

 そろそろ、亮と未来を迎えにいかないと。


 今日は、庭に松や銀杏を植えるだけで終わってしまった。

 魔法で植えるんだけどね。


 理想の家の完成が目前に控えている。

 2人にももう一度、希望が無いか確認しておかないと。

 

 今日もあいつらドロドロだろうな。

 取りあえず家に入る前に、未来にリフレッシュを掛けてやらないと。


 未来は自分でも使えるくせに、俺に頼ろうとしてくる。

 面倒くさいだけだろうが。

 

 可愛いやつめ。

 

 亮は普通に自分で使ってるが。

 それ以前に、そんなに汚れないよなあいつ。


 聞いたら合間合間で使っているとか。

 綺麗好きな辺りも、あいつらしい。


 夕飯はハンバーグを食べたいって言ってたっけ?

 寝殿造りの家でハンバーグか……

 木のプレートに乗ってる、サプライズドンキーのハンバーグとまで指定されたら出してやらない訳にはいかない。

 張り切って作るぞ!

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