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短編 ホラー

平成奇怪譚録 〜忘れもの〜

作者: 遠智 赤子

今日もうだるような暑さだがこの制服には夏用も冬用もないためただただ耐えるしかない。

そう思うのは某ビジネルホテルで働き始めてもう3年目になるが毎年のことだった。なぜ女子社員は半袖があるのに男にはないのか疑問でならない。だから今日は少しでも涼しくなるような話をしよう。それがいい。


では短い話からしようか。


先程も申したがホテルで勤務している。だからかよく聞かれるんだ、怖い体験ないの?とか。


まず表だってお客さんを対応する以外にもフロントにはたくさん仕事がある。その中の1つに忘れものの管理がある。お客さんがチェックアウトした部屋にはその日のうちにメイクさんが掃除しに入るんだ。そこでお部屋の片付けをしながら忘れものがあった場合には


「〇〇〇号室」


って書かれた紙が貼られて事務所に一度集められる。これが多いんだ。とくにスマホの充電器とか髭剃りとか。なかには下着とかもあるし最悪だね。


で当然どこの部屋の誰のなのかはすぐわかるし全て記帳する。そして保管庫行き。それじゃあ溜まる一方だからうちだと2週間の保管期限を設けてそれ過ぎたら捨てるんだ。前置きが長くなったね。これは先輩の女性フロントと一緒に忘れものの対応をしてたときの話なんだ。


「今日の忘れものやりました?」


「あ、ごめん。まだなんだ」


「じゃあ俺やりますよ」


「え、ほんとに!ありがとうー!」


忘れものの保管箱はやたら重いから最初から俺にやらせる気だったくせに女の人はずるい。


「じゃあ今日の記帳終わったらもう二週間前の日のは捨てちゃいますねー」


先輩から返事はない。いいからやれってことなんだろう。俺は貴重品類は選り分けそれ以外は記帳し保管箱にしまっていく。貴重品は念のためのこともあるからこちらからお客さんに電話する決まりになっている。


「もしもしー私〇〇ホテルのフロントでございます。

昨日のチェックアウトの際にお部屋にお忘れものがあったようでー」


こんなやりとりを出勤の度に繰り返している。というか鍵とか財布忘れて気付かないもんなのかと疑問に思う。そんなこんなで今日の分を片付け、処分するものに取り掛かる。処分する際にも記帳したところと確認して二週間たっていることや部屋番号と物品があっていることに目を通さなくてはならない。


「あれ?これ、記帳漏れですかね。記帳欄に部屋番も書いてないっすけど二週間前の日付で箱に入ってますね」


誰かがあとから出た忘れものをめんどくさがって記帳せずしまったのかもしれない。


「どれどれー?え、てかこれ貴重品じゃないの??」


先輩がいうとおりプロポーズでよく見る指輪が入る箱がそこにはあった。


「そうなんすよね。けっこう問題ですよね。貴重品ならその日に連絡しないと。てかプロポーズ出来ないっすねこれじゃw」


「そう!こういうのはちゃんと管理しなきゃダメだ

よ!」


冗談もかわされ先日三十路を迎えた先輩にはなにか共感するものがあったのか


「わたしが連絡するね!」


とか言い出した。先輩は指輪の箱に貼ってある紙から部屋の番号を確認し、パソコンで二週間前にその部屋に泊まった人を調べる。


「あれー?その日その部屋売れてないや。誰のだろう」


「その日以前に泊まった人の忘れもんが回収されてなくて出て来たってこともあるんじゃないスか?」


だがこの時点でお互い少しの気味悪さを感じていた。

誰も使っていない部屋から忘れものがあがることはあまりない。


「てか、空なんじゃないスかね」


「あ、これ?じゃあちょっとあけちゃおっか」


軽いノリで無理に元気を出したように先輩は箱あけた。しかし中を見て一度箱に顔を近づけた先輩は


「イヤーーーー!!!」


女性特有の金切り声をあげた。


「え、どうしたんすか!?」


俺も箱の中を見たが一瞬ではそれがなにかわからなかった。しかし理解が追いついたあとも声が出せなかった。

そこには歯が入っていた。それも乾いた血が少しついた奥歯がまるで指輪を鎮座させるように箱に刺さっていた。


俺はそれをすぐに捨て他のフロントには伝えずオーナーにだけ報告した。しかし、あまり信じてはもらえなかった。それもそうだ、誰も泊まっていない部屋からの忘れものにしては悪趣味過ぎた。


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