巻き込まれて異世界…女神様と御対面
「管理者の女神にも言っておくから楽しんでね〜」
そう言って息を吹き返した桜を抱える私を美青年が送り出した先は真っ白な空間でした。
そして目の前には土下座する金髪の子供……のツムジ
………何これ?
「この度は誠に申し訳ありません〜〜」
長い金髪は緩くウェーブして腰まであり青い瞳はうるうるしている…美幼女だ……
「創造神様からお話を伺って居ます〜〜本当に申し訳ありません〜〜」
「……いえ…いろいろ便宜も測ってもらったので大丈夫ですよ?」
ペコペコ頭を下げて謝る美幼女…なんか罪悪感が半端無いんですが……
取り敢えず謝罪を受け入れる姿勢を見せると一安心したのか
「ありがとうございます!本当にありがとうございます〜〜!!」
激しく感謝されペコペコ頭を下げている
だから!私が虐めてるみたいじゃないか!!やめて〜〜!
目線を合わせる為に私も座り込み桜を膝の上に乗せると目の前の子供に興味津々な桜はふすふすと鼻を鳴らしている。
「ふぁ〜〜か…可愛いですね〜〜」
目をキラキラさせて桜を見つめる美幼女は女神ではなくただの子供に見える。
「ん?桜だよ?チワワとミニチュアダックスフントのミックスで一応 チワックスって言うのかな?」
「チワワ?ミニチュア…?桜さんは桜さんではないのですか?」
意味がわからないと首を傾げているがその可愛さには目が離せないのだろうずっと桜に釘付けだ……
ふっふっふっ…可愛いだろ〜 ご近所でも評判の愛娘(犬)だ、特に子供とお年寄りには大変愛されてました。
「…チワワもミニチュアダックスフントも犬種の名前だよ。犬って言ってもいろんな種類がいるんだよ」
「はぁ…茜さんの世界の犬獣人にはそんなにたくさんの族名を持っているなんて…」
ん?……犬…獣人??
「私たちの世界には獣人なんていないよ?」
「ふえ?桜さんは獣人の子供…じゃない?」
………………目を見開き固まる美幼女
「ええええっ〜〜??!…と言うことは魔獣なんですか?!」
「…魔獣も居ないよ…桜は犬だよ!普通の犬!可愛い私の愛娘(犬)だけどね〜〜」
桜の鼻先にチュ…とキスすれば嬉しそうにかぎしっぽを振りペロペロと口元を舐めてきた。
はぁ〜可愛いなぁ〜
桜の頭をグリグリ撫でながらサラサラな毛並みを堪能していると
「……え?魔獣でも獣人でもない??」
美幼女は暫く考え込んでいる。
「……あのですね〜〜私の管理する"ファリサス"には普通の犬?ではなく犬獣人か犬型の魔獣しか居ないのですが……」
なんと?!!
詳しく聞くとそもそも 魔物の中で獣タイプを魔獣と呼び<テイム>出来るらしい。鶏とか豚、牛、馬などに似た魔獣は存在していて比較的に大人しい種が家畜化されているが<テイム>されていなければ基本的に討伐対処になるそうだ…
「え?…桜はどうなるの?」
恐る恐る質問する私に美幼女は困った顔で
「……さぁ?」
判らないらしい……
おい?!創造神!どういうこった!!
「あ!たしか この世界に適した身体に変換されてる筈だから鑑定してみればわかるのでわ?」
美幼女の提案で取り敢えず<鑑定>してみると
ステータス
アカネ サイトウ(斎藤 茜)の眷属
名前:サクラ サイトウ(斎藤 桜)
種族:犬?
年齢:3ヶ月(4歳)
レベル:1
スキル:物理攻撃無効 魔法攻撃無効 状態異常無効 気配察知 危機回避
称号:幸運を呼ぶ犬? 創造神の加護 女神の寵愛
…………あ 美幼女のポカン顔です。
…っていうかいつのまにか貴女の寵愛が称号に付いているのですが?
「……って?!はぁあああ??!3ヶ月って??」
尻尾を振って見上げている桜は昨日と変わらない大きさ…って事は4歳なはずなのですが?
私の叫びに我に帰った美幼女が答えをくれました。
「ああ!今は魂の状態ですからこちらに来る前の形ですがおそらく地上に降りたなら茜さんの姿も変わってるはずですよ?」
なんですと?!
まさか 私まで幼女化ですか?!!
「おそらく与えたスキルの負荷がかかった分若返ったのではないかと……」
「……え"?」
慌てて私自身に<鑑定>をかけてみると
ステータス
名前:アカネ サイトウ(斎藤 茜)
種族:人族?
眷属:サクラ サイトウ(斎藤 桜)
職業:
年齢:20歳(48歳)
レベル:1
スキル:物理攻撃無効 魔法攻撃無効 状態異常無効 異世界言語 鑑定 無限収納 料理 裁縫 生活魔法
固有スキル:射的術 複製(異世界品限定) 創生 創造魔法
称号:異世界転移者 創造神の加護 女神の加護 桜の守護者
………おおぅ…美幼女のポカン顔再びです
しかし…20歳って…半分以下に……少し嬉しいかも……
しかも 桜の守護者って…保護者ではないんだ……
「……え〜〜と……?」
あまりにもなステータスに女神様も困惑中ですが
「桜の身の安全を第一に考えた結果です」
………なんだろう創造神の美青年と同じ眼差しで見つめられるのだが……気のせいか?
しかし 頼んだスキル以外にもある…料理と裁縫はわかるが射的術って…確かにガンシューティング系のゲームは得意だったしゲーム内でよくガンナーを初期ジョブに選んではいたが……それだけで??
まぁ 攻撃手段があるに越したことは無いだろう。銃があるかどうかは知らないが…スキルでなんとかなるのだろうか……不安しかない
「ところで…なんで種族が"人?"になってるの?桜も"犬?"だし……」
「おそらく…その身体は向こうの世界の貴女を基に創造神様が創られたから…かなぁ〜?」
"ファリサス"は魔法のある世界なので全ての生き物には魔力があり世界は魔素で満ち溢れているそうです。
魔素を身体の中にある器官に取り込み魔法を使うのだが…魔法の無い異世界から召喚された際には魂に見合った器を授けられるのだが私の身体は弾かれ消滅寸前だったので創造神 自らが一から創り上げた為、純粋な人族では無くどちらかと言えば管理者である女神様よりの存在になるそうです。
なので眷属にあたる桜は……幻獣かな?神獣じゃ女神様の眷属になっちゃうからね〜〜って事は私は幻人?なんじゃそりゃ……?
さすがにこのままのステータスでは大問題になるので女神様自らが隠蔽を施してくれました。私自身の魔力量は相当多いので滅多に<鑑定>で見破られる事はないそうだが念のためにね〜
しかし…桜が<テイム>された魔獣の亜種…とか納得いかないがな!
「あの……大変心苦しいのですが……茜さん…私からのお願いを聞いていただけないでしょうか…」
一段落したところで女神様直々にお願いされました。
曰く、"ファリサス"という世界は過去に何度も異世界人を召喚してはその力や知識を得ていたが過ぎたる力は混乱を招きその度に繁栄と衰退を繰り返してきたらしい。
「私の管理する世界は未熟すぎるのです。最初は増え過ぎた魔獣や天災に見舞われたりなどで助けを求めていた筈なのにその力も知識もやがては野望の為の道具と成りました。そして最後に召喚された異世界人は…膨大な力を持つ幼い子供達でした。その為に"ファリサス"は混沌に包まれ消滅寸前までに荒れ果てました。精霊王は世界を保つ為に自らの力を使い大精霊達が何とか元の世界へと送り還しましたが皆 疲弊し過ぎて眠りについてしまいました。…女神たる私も未だ幼く精霊達を起こすだけの力が無いのです。……どうか…どうかお願いです。助けて下さい。」
ホロホロと涙を流し祈る様に訴える女神様に
「嫌よ…面倒くさい。そもそも自業自得でしょ?私は桜とのんびり過ごしたいの…厄介ごとに首を突っ込む気は無いわ」
面倒くさい…そんな理由で断られるとは思わなかったのかショックを受けている女神様に
「私の他に5人も呼ばれてるんだからそっちに頼めば良いじゃない。創造神様曰く、勇者様パーティーみたいなんだしさぁ〜〜」
「…っ!!…その子達は…その子達では…駄目なのです〜〜!!!」
蒼白な顔で女神様は堰を切ったように泣き出した。
幼い子供が目の前で号泣する絵面は少し良心が痛む…が私と桜だけでも面倒ごとしか起きない気がするのに他にも…とか………本当に面倒くさい。
「最後に…ひっく…召喚された子達と…うえっ……同じなのです。だから…ううっ……駄目なのです〜〜」
しゃくりあげながらも伝える言葉に私は頭も抱えた。
…それってお馬鹿が俺TUEEEでストッパーが寝てるから無双ってこと?!
「……つまり精霊達を叩き起こして送還させれば良いって事?」
ため息しか出ない案件に落ち着いてきた女神様に聞いてみる
「…はい…ですが大精霊達だけでは力を使い過ぎて再び眠りにつかれては今度こそ"ファリサス"は滅んでしまう……」
はい?移転先が消滅間近って…どう言う事ですか?創造神様?!!
「本来ならば精霊王の元に大精霊達が世界の均衡を保っていたのですが今は行方知らず……一時的に私が維持の為に力を送っていたのですが……私の力も余り残ってなくて…今回の召喚で再びあの災禍が繰り返されればもう消えるしかないと……ふぇっ………」
再び号泣しだす女神様……おおぅ…マジですか
「…はぁ〜〜 ちなみに大精霊達ってどこにいるかわかる?」
ため息交じりの私の問いに希望を見出し顔を上げるが……涙やその他で残念な女神様になってます……
恥ずかしそうに顔を拭いて改めてこちらに向き直す女神様は
「…あの…助けていただけるのでしょうか?」
期待に瞳を輝かせながら聞いてくる
「まぁ〜ね〜 桜と幸せに暮らす為には消滅されちゃ叶わないから……ね。」
苦笑いとともに答えれば
「…すみません…私が不甲斐ないばかりに……」
としょんぼりする女神様………
「あ〜〜 そういうのはもう良いから……で?大精霊達は何処に居るか知ってるの?」
「はい…でも精霊王の行方までは……」
「ああ…そっちは心当たりがあるから取り敢えずは女神様が知っている事を教えて?」
話を促すとコクリと頷き話し始めてくれました。ちなみに桜は私の腕の中で爆睡してました。癒される…
「精霊界とは"ファリサス"のもう一つの世界で精霊達が生まれやがては還る場所です。
そもそも"ファリサス"という世界は六属性の魔素から成り立ち精霊達は取り込んだ魔素を世界へと循環させる役割を持ちます。
精霊達から得た情報を基に精霊王は指示を各属性を司る大精霊に伝え各地にいる精霊達が循環させます。」
………………え〜〜っと?……つまり??
頭の中には巨大なモニターに映る六角形のグラフを睨めつつ『左舷!弾幕が薄いぞ!!』的なシーンが展開されてます。
「単純に水の精霊が頑張ると水害が起こり反対にサボると干ばつになる……って事?」
「……そんな感じです………」
例えがアレなのか苦笑されました。
「…ん?…って事は大精霊と精霊王がいない今は結構大変なのでは?」
「……ええ…何とか私の力で最低限の維持をしてきましたが………そろそろ限界が近く、魔獣被害や川の氾濫にはじまり作物なども育ちにくくなってきています。」
まだまだ幼い風貌に疲れ切った溜め息一つ
「……話が逸れましたね……大精霊達は"ファリサス"と精霊界を繋ぐ場所…六大ダンジョンと呼ばれる最下層の更に奥に眠っています。……これを」
取り出したのは6個の鍵……
「その鍵があれば最下層に到達した時に大精霊に繋がる扉が開きます。……ただ…精霊王は……」
「あ〜……それね……ったく…創造神様にしてやられた感が半端ないわ〜〜!」
女神様から貰った鍵は銀色で其々に赤 青 緑 茶 白 黒と石が持ち手についている。
似たような金色の鍵を出して女神様に見せると
「………っ!それは!!」
あ…やっぱり………ガクリと項垂れ
「…創造神様に貰った"精霊王の隠れ家"っていうアーティファクトだって……多分 ここに居るんじゃないかなぁ〜〜」
一時 創造神に感謝の祈りを捧げると女神様は一枚の白紙を渡してくれました。
「これは"世界地図"と言うアーティファクトです。すべての
場所が描かれて任意で拡大する事も出来ます」
覗き込んで見るとそこにはおそらく"ファリサス"だと思う大陸が描かれており、見つめているその一点が拡大され村の名前とそれに至る道まで描かれているのが見てとれた。
「検索もかけられるので『六大ダンジョン』と念じてみてください」
すると地図上に六ヶ所 洞窟の記号が現れ其々の名前が浮き出てきた。
便利だ!方向音痴な私には有難い!!
「ありがとう!迷子にならずに済むよ!!」
「こちらこそ…精霊達を宜しくお願いします。後…わずかですが無限収納にお金を入れておきました。お役立て下さい………そろそろ時間ですね」
気が付けば私の周りには見たことのある魔法陣が浮かび上がりすっ…と下に落ちる感じがした。慌てて桜を強く抱きしめる。
最後に見た女神様は綺麗に笑って手を振っていた