異世界
始まっちゃいました(笑)よろしくお願いします。
目が覚めると雲一つない青い空が見えた。太陽の光に照らされているが、暑いわけではなく心地よく感じる。
体を起こして辺りを見回すと一面の緑。見覚えのない草原だ。
どうして自分がこんな見覚えのない場所に寝ていたのか、まったく記憶にない。所謂、記憶喪失ということだろうか。
幸いなことに、名前とかは憶えている。それ以外だと好きな人、一般的な常識、計算とかは忘れていないみたいだが、日本で生まれた以外のことを思い出せない。まるで霞がかかったような不思議な感覚である。
途方に暮れていると、視界の隅で小さく点滅しているものがあるのに気がついた。先ほどまではそんなものはなかった筈だが。
「なんだ…これ…」
半透明な板に<押してください>と書かれて光っていた。なんだかゲームのメニュー画面みたいだな、と思いながらもそれを押してみる。
『異世界へようこそ!』
押した途端、板に表示されていた文字は変化して音声化した。
一瞬思考がフリーズしてしまった。異世界? 俺が今立っている場所がそうだというのだろうか。
固まった自分をよそに、音声は続く。
『現在は転生前の記憶はほとんど残っておりませんが、了承は転生前に頂きましたのでご安心ください。ここは剣が鍔迫り合い、魔法が飛び交うファンタジー世界。今、あなたは転生前に選んでいただいたスキルとステータスになっています。詳しくはステータス画面を確認してください』
色々ツッコミたいところだが、それをグッと抑えて板の<ステータス>と書かれた部分を押す。
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タツミ 18歳 男 人間 剣士
レベル:1
称号 :なし
HP :20/20
MP :10/10
筋力 :3
耐久 :2
敏捷 :5
魔力 :1
幸運 :2
スキル:御影式抜刀術(S級)【経験値不足のためC級まで開放】
胆力(D級)
隠蔽(C級)
成長率二倍
獲得経験値二倍
獲得スキルポイント二倍
SP残:20
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ほんと、ゲームのような画面である。俺は気がつけばその画面を食い入るように見ていた。転生前の自分は相当ゲームが好きだったのだろうか。ソレを見ながらワクワクしているのも事実だった。
「とりあえず、スキルの詳細を……」
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御影式抜刀術(S級)
異世界である日本で生まれた古流剣術。異世界の剣術であるため、使える人間はおらず、スキル習得もできないため、ユニークスキルの分類に位置している。現在レベルによる制限を受けているためC級までの剣術しか使えない。
胆力(D級)
D級までのスキル・恐喝、スキル・威嚇の影響を受けない。また、戦闘による精神弱体を受けない。
隠蔽(C級)
C級までのスキル・鑑定眼を防ぐことができる。また、C級までのスキル・探知の影響を受けない。
成長率二倍
レベルアップ時のステータス上昇が倍になる。
獲得経験値二倍
獲得経験値が倍になる。戦闘・非戦闘は問わない。
獲得スキルポイント二倍
レベルアップ時にもらえるスキルポイントが倍になる。
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「おお、完全に前衛に特化した構成になっているわけだ。レベルアップのこともちゃんと考えられている」
『転生前はその若さで御影式抜刀術の師範だったそうですよ。そのスキルを異世界に持ち込むために記憶をスキルポイントにしたみたいですし。ちなみにS級なのは転生前の経験をスキルポイントでさらに上級へ昇華しているためです。世間一般でいうA級が達人になります』
……なんだか細かいところまで教えてくれるこのメニューさん?は一体なんなのだろう?
『あ、申し遅れました。私、神見習いの天使・サムエルと申します。転生された方にナビゲートで付く決まりになっています。よろしくお願いしますね』
「はあ、それはご丁寧に……」
『このシステムがあったため、タツミ様は記憶を手放す決意をされました。転生前のタツミ様がお願いされたことがあります。あなた様に転生に至った経緯をお話しすること。お聞きになりますか?』
先ほどまでの声とは違い、どこか真剣な……そんな声に俺は頷けずにはいられなかった。