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金魚鉢とわたし  作者: aー
金魚鉢と大阪
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第五十三話 どうすりゃいいのよ!?


 六月、梅雨が明けた頃。

 それは、本当に突然だった。

「あんた、明日から三連休よね」

 テレビを見ながら梅昆布茶を飲んでいた私は驚いて頷く。

「うん」

 仕事から戻るなり私に詰め寄ったあかりは、お互いの鼻先がくっつきそうなほどの距離で、上着も脱がずににやりと笑った。

 その笑顔の恐ろしいこと。

「よし」

 いや、なにが。

「準備しなさい。大阪に行くわよ」

 ・・・は?

「明日、大阪いくわよ!」

 バッと音を立てて離れると、大きな胸を張って宣言した。

「ホテルはこっちで手配したわ。さあ、荷物を詰めるわよ」

 ホテル?

「えっと、私も行くの?」

「行くのよ」

 すでに決定事項らしく彼女は大きく頷く。

 相変わらず尊大な態度だわ。

「うーん、まあいいかぁ」

 特に用事もないのでとりあえず頷けば、あかりの笑顔。ヤバイ、こいつ絶対何かをたくらんでいる!

「あかり、何か隠してる?」

「別に?」

 ニヤニヤと笑うあかりは、危険人物極まりなく、私が逆らえるはずはなかった。

 楽しそうに荷物を用意し始めた彼女に不安と期待を覚えつつ、大きめのカバンを探すため部屋に戻った。

 翌日早朝、大きなバックを持った私と、小さなバックを持ったあかりは、大阪に向かった。





 足早に過ぎていく人の波の中。私は呆然と立ちすくむ。

 新幹線で大阪に着いたとたん、あかりの携帯電話に着信が入り彼女は慌ててどこかへ行ってしまった。

 私に、何も言わずに。

「・・・うそでしょ」

 とりあえず大阪駅まで電車で移動する。新大阪はあまり安全じゃないと以前同僚が言っていたのを思い出したから。 

 けれどこれからは? これからどうすりゃいいのよ! 親友をこんな場所に置いていくってどういうこと?

あかりの携帯電話にはつながらず、仕方なく適当に歩いた先の喫茶店に入った。

あまり好みではないコーヒーチェーン店は、朝からにぎわっている。ほとんどの席がうまっていて騒がしい。でも、朝食すらとっていなかったからお腹はぺこぺこなので仕方なく我慢する。

 カウンターでバケットサンドとミルクティを注文してホッと息を吐いた。

 ふいに聞きなれた着メロは私のもの。モニターには徹さんの名前。

「もしもし」

 通話ボタンを押して不機嫌を隠さずに返事をすれば相手はしばらく黙って、それから優しげな声で言った。

「おはようございます、今どこですか」

「大阪駅のドトール」

 普段はスタバ派なんだけどな。

「わかりました。ちょっと待っていてください」

 そう言って電話は切られた。

「待てといわれても・・・」

 朝からよくわからない人だと思いつつ、温かいバケットサンドを受け取って席につき、かぶりつく。

 店員の態度はあまり良くないけれど、意外とうまい。硬いバケットの食感と、やわらかなハムの塩辛さが丁度良くていくらでも食べられそう。

 咀嚼していると、いきなり見知らぬ男が目の前に座った。

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