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金魚鉢とわたし  作者: aー
桜色の彼女
39/73

第三十七話 渡瀬って呼び方がいまいち定まらないのよね

 今朝は渡瀬が朝食を作ってくれて、それは食べたけれど正直食欲などなくて、昼はお茶を二杯だけで済ませた。

 今も食欲はない。

 あかりはちゃんと食べているのだろうか。どこか怪我をしていないだろうか。

 考え出すと嫌なことしか想像できない。

「あかりさんなら大丈夫です。殺そうとしてもまわりを盾にして死んではくれないタイプですし、彼女はあなたに救いを求めた。それはきっと、僕らに連絡がいくことを想定してのことでしょう」

 そうかしら、そうだといい。

 それにしても、死んではくれないって・・・

「ともかく、今は彼女の生命力を信じるしかありません」

 よけい不安になりますが。

「うん・・・」

「大丈夫です。僕らがついています」

 はじめて、徹さんが頼もしく見えた。

「だな。つーか、あいつはゴキブリ並みの生命力持ってるから心配するだけ無駄だ」

 戻ってきた渡瀬が言うが・・・ゴキブリってあんた。

「私は聞かなかったことにするわ」

「右に同じく」

 そんな私たちに渡瀬が一言呟いた。

「俺、嘘つけないんだよ」

 あえて無視してパスタを食べると、もう冷たくて少し食べにくい。

 それでも美味しいから、なんだか悔しい。

「今日のデザートは?」

「プリンならあるぞ」

 ちゃんとデザートになるものも用意しているところが抜け目ない。

 ようやく食欲がわいてきた私は、少し意地悪を言ってみる。

「焼きプリンがいい」

「ふっ」

 鼻で笑う男に顔を上げると、自慢げに笑っていた。

「なに?」

「各種用意しているに決まっているだろう?」

 なんて用意のいい男!

「凄い!」

「違いますよ透子さん。彼は優柔不断なのです。だからとりあえず全種類買ってきたのでしょう?」

「ほざくならデザートあげませんよ」

 睨み付ける渡瀬に、徹さんは爽やかな笑顔で告げた。

「ああ、僕は抹茶プリンでおねがいします」

「人の話聞け」

「紅茶もお願いします。もちろんストレートで」

「最悪だなあんた」

 徹さんは何かを思い出したように顔を上げた。

「しまった、紅茶の茶葉を買ってくるのを忘れていました。僕としたことが!」

 そう言って弱々しく頭を振る。

「仕方がありません。コーヒーでいいですよ」

 本当に仕方がなさそうな表情が笑える。

「あんた本当にムカつくな」

 なんて緊張感のない人たちかしら。

「渡瀬ちゃん、お茶ちょうだい」

「静さまと呼べ。まったく」

 文句を言いながらもお茶を入れるあたり親切だわ。

「僕にはコーヒーを」

「ああちくしょう!」

 足音荒いが気にせず私たちは食事を終えた。

「しーとん、デザートちょうだい。プリン!」

「あ、それいいですね。しーとん。こちらにもデザートください」

「てめーら誰に言ってやがる!」

 そんな風に一日目が過ぎていった。



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