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金魚鉢とわたし  作者: aー
桜色の彼女
37/73

第三十五話 あかりが、帰ってこなくなった。

 正月も無事終わり、いつも通りの日々が戻ってきた矢先のことだった。

「・・・あかり?」

 あかりが、帰ってこなくなった。

 どれだけ遅くなっても黙って外泊する親友ではなかった。

 私よりも案外マメな性格の彼女が戻らなかっただけではなく、妙なメールが送られてきたのだ。

 たすけて。

 ただ一言のメールに不安を覚えた私は、迷わず徹さんに電話した。

 平日の午前四時だというのに、徹さんは嫌そうな気配すら見せず静かな声で返事をした。

「どうしました?」

「あかりが!」

 震える声で説明すれば、彼は始発電車乗で来てくれた。慌ててきたのか、ボサボサの頭のままで。

「調べ物は渡瀬君のほうが得意です。彼にも協力してもらいましょう」

 私を安心させるように笑いかけ、素早く携帯電話で静を呼び出した。

 渡瀬は驚くことに十分ほどで到着した。ドアを開けた途端怒鳴るように問う。

「何があった!」

「渡瀬君。ちょっと頼まれてください」

「は? いや、だから何があったのかって・・・」

「あかりさんが、助けを求めてきました」

「・・・あ、俺帰るわ」

 いきなり踵を返す男の襟元を遠慮なく掴み、徹さんは続けた。

「これは、透子さんからの頼みでもあります。断るつもりですか?」

「あの女は世界が滅びようと生き残るタイプだろうが!」

 ほっとけ! と叫ぶ彼に、思わずかけよった。

「お願い渡瀬。あかりがこんな風に私に助けを求めるなんて、はじめてなの!」

 お願い、あかりを助けて!

目を見て言えば、仕方なさそうに溜息をついた。

「・・・わかったよ。貸し一つだからな」

「ありがとう!」

 二人はすぐに、彼女のここ最近の動きについて調べだした。

 渡瀬があかりの行動を、徹さんはそれ以外の情報を集めると部屋を出て行った。

 あかりのことは心配だが、仕事には行きなさいという二人の指示に従う。

 その日は、職場で働いていてもずっと彼女のことが気になってミスを連発してしまった。

 二人が戻ってきたのはその夜のことだった。

「わかったことがいくつかある」

 渡瀬がキッチンで夕食をつくりながら言う。

「こちらも、いくつかわかりました」

 徹さんは、持ち込んだノートパソコンをコタツの上に置き操作している。

「ここ一週間ぐらい恋人とは連絡を取っていません。彼の証言ですが、昨日の朝送ったメールの返事もないそうです」

 徹さんはあかりの恋人に話を聞いてきたのね。

「それから彼女に以前ストーカー行為を行っていた男が、一昨日の朝、日本へ帰国しています」

「あれ? しばらくは海外でお仕事じゃ・・・」

 私の疑問に答えたのは渡瀬だった。

「いきなり有給を取ったらしい。確認を取ったら理由は誰も聞かされていないし、家族は有給を取ったことすら知らなかった」

 ・・・家族?

「家族がいるの? だって、あかりに・・・」

 あかりにストーカーしていたくせに、家族がいるの?

「妻も二人の娘もいるが、そっちは何も知らされていない」

「けれど今回の一件。無関係とは思えません。知り合いに頼んで、彼の、ここ二日の動きを徹底的に調べてもらっています」

 たった一日で凄い。


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