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金魚鉢とわたし  作者: aー
金魚鉢とわたし
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第十四話 お前はいったい何者だ!?

 犬や猫はもちろん、リスやウサギといった小動物。ヘビ、カメ、フェレット、中にはイグワナといった、出来ればお目にかかりたくない生き物の商品がずらりと並んでいる。しかし、一番目を引いたのは魚のコーナーだ。なんだ、この無駄とも思える品揃えは。

 本物の魚はいないのに、餌や海藻、ポンプ、その他の飾りや水槽、そして最も気になるのは、信じられない数の金魚鉢の種類だった。

 昨日八橋さんに貰った金魚鉢と同じデザインで、昔からよく見るひらひらした形の朝顔型や、それによく似たチューリップ型。どこが違うって、首が細いかそうでないかの違いだ。正直よくわからないけど。

 それにしても、この魚(主に金魚鉢)のスペースは他のペット商品の三倍はある。

 いくらなんでも広すぎじゃないの。どれだけマニアなコーナーだ。

 朝顔、チューリップ、波、太鼓型、水盤型、取手付き・・・エトセトラ。

 色も定番の青から赤、ピンク、オレンジ、エメラルドグリーンと様々だ。一つ一つなら可愛いともいえるが、これだけ数が揃うと可愛いなんて言ってられない。

 ホーロー型ってなに。金魚の形の金魚鉢に入れて何が楽しいの。

 ホームセンターじゃなくて、金魚鉢専門のお店に来たような錯覚を起こす。

 深い、金魚鉢深いよ!

「どれか気に入りましたか?」

 いつの間に隣に来ていたのか、全く気配に気付かなかった。思わずビクつく。

「あ・・・いや、あの」

「おすすめはこちらの、三つ足金魚鉢です。可愛いですよね」

 同意を求められても・・・

「店長に聞いたのですが、女性はインテリアのために花を生けたりするそうです。僕は部屋に飾るだけですが・・・そういうのもいいですね」

 だって金魚なんて飼う気ないし。

「・・・はあ」

 適当に相槌をうつと、しかしどうして満面の笑みのまま喋り続ける男。

・・・なんでそんなに上機嫌なの。

「金魚鉢は本来、魚を飼うのには適していないのです」

「え、なんで? だって金魚いれるから金魚鉢なんでしょ?」

 そう、つい質問なんてしてしまったばかりに、彼の笑顔がウザイ。

 ヤバい、この笑顔はヤバイ。よくわからない地雷を踏んだ。

「ふふふん。金魚鉢で金魚を飼うためには、ちゃんとした空気ポンプを用意しなければいけません。そうでなくては金魚が長生きしないからです。それに、毎日水槽の掃除をしなければなりません。短気な人にはお勧めできません」

「へー。そうなんだ、知らなかった」

 ・・・って、私が短気って言いたいのか、あんた。

「なにより・・・」

 ああ、なんか長くなりそうだ・・・

「それで・・・」

「お待たせいたしましたー」

 八橋さんが金魚鉢うんちくを披露すること十分。なにやら大きな袋を持ってきた店長が笑顔で私に手渡す。

「?」

 なんだろう、大きな包みだけどそんなに重くはない。綺麗に包装もされている。

「八橋様に頼まれましたお品です」

 笑顔だ。

「はあ、どうも」

 笑顔が眩しい。顔は特徴のない、つまんない顔してるのに。

「ですから、ポンプなんてものがついた美しくない金魚鉢なんて外道です」

「そうですねえ、確かに美しくないですねえ。でもあれがないと金魚が死んでしまいますしねえ」

 八橋さんのよくわからない言葉にも、店長は人のいい笑顔を浮かべて、うんうんと頷く。

 こいつら同類? もう逃げてもいいだろうか・・・

「聞いていますか?」

「お客様?」

 二人して同じ方向に首を傾げた。

「聞きましたから、そろそろ行きません?」

 いや、大して聞いてないけど。

「そうですね。ああ、もうこんな時間だ!」

 腕時計を見て急に慌てた様子を見せる八橋さん。

「遅くに女性の部屋に入るわけにはいきません。さあ、行きましょう!」

「またのお越しを、心よりお待ちしております~」

 腕を引っ張られて店を出る時、店長に眩しいほどの笑顔で見送られた。その隣には従業員が勢ぞろいしていた。

 ・・・本当、いったい何者なの八橋さん。




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