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天と地の境界線  作者: 虹乃 咲
天の章
13/18

013 お人よし



「儂は面倒事は嫌いだ。だが、一つ教えておこう」


 そうゲンが切り出し蛍子の黒い瞳に視線を合わせる。


「黒の騎士団は男しかいない。それが常識、いや当たり前のことだ」


「黒の騎士団って髪の毛や瞳、それに翼が黒い人達のことですよね。何故ですか?」


 本当は初めて会った人物には、もっと警戒しなくてはならない。けれども、蛍子はゲンを会ってすぐだと言うのに信頼していた。

 口が悪いけど自分を匿って面倒をみてくれるなんてお人好しだ。

 申し訳ないが自分がここでの知識を得るまでは匿ってもらいたい。自分は打算的だ、と思うも、こうしないとこの世界で生きていけないのだ。


「黒の騎士団、つまり黒騎士には男しか生まれてこない。過去に1人として女児が生まれたことなど無かった。黒騎士は魔法にあまり優れないが体術は一般の有翼人の3倍、『地』の人の5倍だ」


 そんな事もしらんのか、と目を向けられた。

 はい、知りません。兄である太陽は肝心なことを教えてくれないのです、いや兄が忘れていたというだけだと思いますがね。


「もっと聞いていいですか?」


「あまり話したくないのだが」


 ゲンは口数が少ない。後になって聞いたのだが、見た目通り生来大人しい性格であったが妻と娘が死んだことにより頑固さに磨きがかかって更に無口になったそうだ。


「太陽、様・・って?」


 『地』ではない太陽とは誰なのか。太陽=兄だと思っていたが、この世界では違うだろう。兄は『地』の方、つまりこちら側の敵であるのだ。敵方に様付けなんてしないだろう。


「太陽様とは、つまりこの国を治める女帝、アイリ―ン様のことだ」


「何故太陽様なんですか?」


「・・・」


 すごい不審な顔で見られた。

 だが蛍子は知らぬ振りをして答えを待った。唇を突き出して、むっとした表情を作る。だって知らないもの。

 やがて根負けしたゲンが溜め息を深々とつきながら口を開いた。


「・・有翼人は太陽から魔力を貰う。そのため太陽がないと生きていけない。だから有翼人は太陽を独占したがる。だがただの有翼人とは違って、女帝は太陽の光を浴びると全ての者を従わす力を持つ。その力は絶対だ。自分の意思とは関係なしに従わざるを得ないそうだ」


 太陽から魔力、信じられない話だと窓から光り輝いている太陽を見上げた。


「えっ?」


 だが普段眩し過ぎて直視できない太陽を見ることができた。

 蛍子の驚き声にゲンも外を見る。


「・・こいつは珍しいもんを見た。太陽代わりだ」


「太陽代わり?」


「ああ、女帝が退位するんだ」


 2人が見上げた太陽は日蝕が行われている。ゆっくりゆっくりと黒い影が太陽を侵食している。


「初めて見た」


 テレビで見たことがあったがこんなにも近くで見たことは無かった。

 ここの太陽は地球で見るより2倍の大きさである、とても神々しい。とても壮大で周りの青い空を燃やし尽くすよう。


「儂もだ、女帝の退位や即位は、この太陽が決める。その太陽に選ばれた方が次の太陽様、つまり女帝となる」


「女帝? 普通、男がなるものじゃないですか?」


「いや、歴代の太陽様は全て女帝だったそうだ」


 黒も騎士団は男だけ、太陽様は女だけということか。では貴族とやらは? ソフィアから得た情報を元に尋ねる。


「赤、緑、青」


「ん? 光の三原色?」


「なんだ、それは?」


 逆に聞かれてしまったが今ゲンが挙げた色は全ての色を表す元となる三種の色だ。それを挙げられて、つい聞いてしまったが違うのだろうか。


「いえ、何でもないです」


「・・この色を持つ奴らには近寄るなよ。特に濃い色を持った奴には」


「もしかして、その色を持つ人が貴族?」


「ああ、胸糞悪い奴らだ」


 悪役のような顔のゲンが言うと貴族が悪く感じられないのは何故だろう。でも、そんなことを言ったら怒られるのは目に見えているので黙って話の続きを促す。


「この日蝕が終わったら女帝が代わった、ということですか?」


「そうだ、女帝が自分の証を見せることによって太陽が顔を出すと儂も聞いた」


「証?」


「さあ、そこまでは儂も知らん」


 ゲンが肩をすくめて首を振った。

 蛍子は太陽の下に出来た小さな黒い染みを不安な面持ちで見つめた。


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