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姉の気持ち2
手術室の前にいた時でさえ、そうおもってしまった。
固い椅子に座りながら、『これは本当は夢なんじゃないのか…』とバカみたいに考えていた。
実の弟が危険な状態にいるというのに、不謹慎なものだ。
だけどそれくらい現実味がなかった。
それにあの子だって、自分から死を選ぶ様なバカな真似だけはしてはいけないと痛いぐらいにわかっているはずだ。
結局これは現実なんだとわかったのは、医師からの説明を受けているときだった。
溢れ出た涙は、弟が無事だったことか飛び降りたことへの裏切りかはわからなかった。
ただ、胸が暑苦しくて、喉が痛かった。