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病院で…
気が付けばここは、病院。
しかし病院に来る前の記憶と、もうひとつ大切な何かを思い出すことができない。
俺はいったい何を忘れてしまったのだろう…?
覚えているのは…
君との約束と、君の泣き腫らした顔と…
それから、それから…
目を開くと、そこは見慣れない真っ白な世界。
ここは…?
「宮藤さん!わかりますか!?」
清潔な白衣を着た女性が俺の顔を覗き込んできた。
ってことは、ここは病院か…?
「先生!宮藤さんが気づきました!」
看護師がそう叫ぶと、同じく白衣を着た男性が駆け寄ってきた。
「宮藤さん!よっかた!何処か変な感じがする所とかありますか?」
「あ、特にありませんが…
あの、どうして俺病院なんかにいるんですか…?」
「覚えていないんですか!?」
その後の精密検査からわかったのは、俺は病院に運びこまれる直前の記憶だけが「ない」ことだ。
それ以外の記憶はちゃんとある。
家族、友人、会社のことなど、すべてはっきり覚えているのに病院に来る直前の記憶だけが、どうしても思い出せない。思い出しては、いけないような気がする…