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決心

#10



今日は日曜だ。10月の中頃。いくら地球温暖化だとはいっても10月となれば寒くもなる。


そんな季節に……オレは決心を固めた。二人の瑠璃アオイのことだ。




ピーンポーン


アパートのチャイムを鳴らす。


「はーい」


未愛みまなアオイが出てくる。


合コンで知り合った男と結婚したが、まもなく離婚。そしてオレが職員室でイジメを受けていることに同情してオレと結婚したいといってきた。



「カイトじゃーん!!!どうしたの〜?」


「なぁアオイ…話しがある」


微妙な間が空く。だけれどアオイの顔は笑顔に戻り……


「いいよ!入って」


オレは悩みに悩んだことをアオイにいうためにアオイの部屋へと足を踏み入れる……



「ここ座ってて」

ソファーへ案内される。


「麦茶?んなわけないか寒かったでしょ、コーヒーいれるね」


「アッべつにいいよすぐ帰るし」


「いいから!飲んでいきなって」


「んじゃぁ……一杯だけ」



ちょっと洒落たマグカップに注がれたオレのコーヒー。

かわいらしいクマの顔が描いてある黄色いマグカップに入ったアオイのコーヒーが


カタッ


と音を立ててテーブルに置かれる。



「んで?話しって?」


「……あのな」


オレは…アオイに結婚してほしいといわれたこと。つまりプロポーズを

断るためにこの家にきた。



「なにッ?」

愛らしい声で言われるとこれからとても残酷なことを言おうとする自分がみじめになる。


だけども……


「やっぱりオレ……オマエとは結婚できない……」


口に出した。


「えっ……」


彼女の顔はキョトンとしていた。


「やっぱり、いじめから逃げたらだめなんだよ。ましてや男が結婚に逃げるなんて、ありえないことだって」


「そう……ヨネ。そうよね!アタシどうかしてた!本当に好きなら逃げることを勧めるんじゃなくて、いじめに立ち向かえるように見守るのが本当なんだよね!」


無理やり。明らかにそう感じられるアオイの表情があった。


「ごめんな」


そう言ってオレはアオイの部屋から立ち去った。









いじめから逃げちゃだめ。確かにオレはそう言った。オレは自分で自分の首を絞める

ようなことを言った。だけど言ってしまったからにはもう曲げられない。戦わなければいけないのだ。



〜職員室〜


「おはようございま〜す」


いつものように職員室に入る。

いつものように返事はない。


すると―――



「内宮先生」


教頭がオレに話しかけてくる。こんなこと最近になっては滅多になかった。


「はい?」


すると教頭は深刻な顔をして話し出した。


「ついにPTAで内宮先生の噂が流れました。保護者はその噂を信じてしまっています。 

   ――教師と生徒のあいだに恋愛感情がある――

 ということを。そしてそれが内宮先生だということも……」


「えッそれはつまり?」


「はい。この学校を辞めていただきたい。これはもう決まったことですので……今月いっぱいで荷物をまとめてください。それから、このような事件があってのことですので離任式は行いません。次の学校は私達で手配させていただきますんで」



それを聞くなり身体全身の力が抜けた。

今月で教師という職業がおもしろくなくなる。

今月でアオイに会うこともなくなる。

今月でいじめからは解放される。



オレにとって教師という職業はなんでもないものになる……





オレは胸の奥でとても苦しみながら授業を行いに向かう。


 

すると―――


教室にはだれもいなかった。黒板には……


「先生へ


 このまえのビラを貼った人がわかりました。なのでさかふね中学校に

行ってきます。クラスのみんなでいくんで心配しないでください。『ビラ、どういうつもり?』って聞いてくるだけです。授業サボってごめんなさい



                         瑠璃アオイ



と……あった。




「おまえら……がんばってこいよ」



そっとオレはつぶやいた。







続く


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