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第5章 カムイの秘密

一行はファンタリームという大きな街にたどり着いた。


そして、ルーナはこの世界の銀行でマーネを下ろし、5千マーネをカムイに渡した。

5千マーネ、我々の日本円にすると約50万円だ。


「ありがとう。すまないが、私用で行くところがある」

「お、おい、お前用心棒だろうが!ルーナねーさんから離れてどうするんだ」

「……」

「いいのよ。総司くん」

「だ、だけど」

「ただ、そのマーネは、旅に出る前に村の人たちがくれたマーネなの。それだけは覚えておいて」

「用が済んだら戻ってくる」

そう言ってカムイは去っていった。


「アイツ、絶対にそのままトンズラする気だ」

「あの人は、私利私欲のために賞金稼ぎをやっているとは思えないわ」

「まあ、ねーさんがいいって言うんなら、それでいいんだが」

「でもルーナさん、村の人たちから貰ったマーネはあと残り5百マーネ(約5万円)しかありませんよ」

「しょうがね~、俺もマーネを下ろしてくるか」

「土方さん、マーネ持っているんですか?」

「ああ、去年、裏のバトルカジノに何度か出場して、5万マーネ(約500万円)稼いだ」

「え~、そんなにも」

「ていうか、土方さんも賞金稼ぎじゃないですか」

「それしか稼ぐ方法知らないんだ」


その後4人は、中級クラスのホテルに泊まることにした。


「い、いいの?総司くん」

「ああ、遠慮するな。俺たちは仲間だぜ」

「ありがとう」

「お、俺、土方さんのこと見直しました」

「そうか。ならもっと見直してくれ」


それからしばらくして、カムイはある場所で、二人の男性と会話をしていた。

二人のうち一人は金髪で赤い目をしていた。

そう、この男こそ、マリーの弟クーロンだ。


「どういうつもりだ。カムイ」

「アイツは本物の戦士だ。1万マーネじゃあ割が合わない」

「なんだと」

「まあ、まて」

「クーロンさん」

「カムイ、1週間以内にバトルソルジャーの首を持ってこれたら、10万マーネ(約1千万円)やろう」

「クーロンさん」

「どうせこの世界は、俺たち魔王団がメチャクチャに破壊するんだ。そうなれば、マーネなど何の役にもたたん」

「……」

「それでも欲しいなら、バトルソルジャーの首をもって来たら、10万マーネやろう。どうだ?」

「私はいますぐマーネが必要なんだ。バトルソルジャーの首を持ってきたら、10万マーネをいただくからな」

「いいだろう。商談成立だ」


そのあと、カムイはファンタリームに戻ってきた。


「(しまった。奴らどこのホテルに泊まっているのだ?ひょっとしたら野宿しているのかも)」

と、街を歩き回っていると、公園内でリュウが棒を使って、剣術の稽古をしていた。

「(アイツは、バトルソルジャーの)おい、少年、こんな夜に何をしているのだ?」

「あっ、カムイさん、その、俺も強くなりたくて」

「フン、私は剣術は得意じゃないが、そんな弱腰ではその辺の獣すら倒せないよ」

「僕にはやっぱり無理なのかな~」

「そんなことはない。あきらめるな」

「は、はい……でも良かった。約束どおり戻ってきてくれたんですね」

「あ、ああ~」

「土方さんのおかげでなかなかいいホテルに泊まっているのですよ」

「へ~、アイツ、マーネ持っていたんだ」


そして二人はホテルへ戻っていた。


「ただいま。散歩していたらカムイさんに会って連れてきました」

「へ~、トンズラしたのかと思ったが、戻ってきたんだ」

「総司くん」

「はいはい」

「それじゃ~、もう遅いし、私とマリーちゃんは隣の部屋で寝かせていただくね」

「あっ、お休みなさい」

「カムイ、お前も隣の部屋の方がいいか?」

「な、何のことだ?」

「いや、別に、お前やリュウは、女みたいな容姿しているから隣の方でもいいんじゃないかと思っただけ」

「つまらない冗談だな」

「フン」


そして深夜1時……


カムイはベッドから起き、部屋を出て行こうとした。

だが

「やっぱ、隣の部屋の方がいいのかい?カムイさんよ」

と、土方は言った。

「ね、眠れないから散歩をしてくるだけだ」

「散歩か。なら俺も付き合うぜ」

「……好きにしろ」


二人はそのまま散歩に出かけた。


「土方」

「何だ?」

「あの公園で、夕方過ぎに、リュウが剣術の稽古をしていた」

「へ~、アイツも強くなろうと必死なんだね~」

「アイツは、自分には無理なのかな~と言っていたから、あきらめるなと言っておいた」

「そうかい」


そして二人は公園の中へ入っていった。


「土方、もし私がまたバトルソルジャーの命を狙ったらどうする」

「その時は……今度こそ殺す」

「そうか……なら、戦いの続きをするか」

「……止めておけ、今のお前さんは何か迷いがある。そんなんじゃ、俺には勝てね~し、そんなお前に勝っても嬉しくない」

「私にはマーネが必要なんだ」

「お前さん、自分からねーさんの用心棒になったんだろう。そのために5千マーネもの大金を貰ったんだろう」

「ウッ……」

「どうしてそんなにマーネが欲しいんだ?」

「言う必要はない」

「まあ、人には言いたくない事が1つや2つあるからな~女を捨ててまで賞金稼ぎをやっていることは、ねーさんたちには内緒にしてやるよ」

どうやらカムイは男ではなく女のようだ。

「すまん。だが、女を捨てたのは……」

「ん?」

「なんでもない」

とその時、ルーナが二人のところにやってきた。

「ねーさん」

「ハアハア……」

「どうしたんですか?」

「リュウくんが、お手洗いに行こうと起きたら二人がいないと教えてくれて、もしかしたら戦いでも始めたんじゃないかと」

「悪り~、俺もカムイも眠れなかったから、散歩がてら男同士語り合っていただけ」

「土方……」

「男には女には言えない悩みがあるんだよ」

「それならいいけど。とりあえずホテルへ戻りましょう。リュウくんとマリーちゃんが心配しているから」

「ああ」

「バトルソルジャー……いや、ルーナ、それに土方や皆に、ホテルに戻ったら、私の全てを話そう」

「カムイくん」

「いいのか?」

「ああ~仲間内で隠す必要は無い」

「そうか」


3人はとりあえずホテルへ戻った。


「カムイくん、言いたくないなら言わなくてもいいのよ」

「いや」

「仲間内で隠し事はよくない……そう言っていたな。なら俺も隠さず言おう。俺はこの世界の人間じゃない。別の世界から暗闇に飲み込まれてこの世界へ来た。まあ、これは、お前以外は知っているがな」

「別の世界……本当か?」

「本当だ。まあ、あと、これはまだ皆に話していないが、俺はガキの頃いじめられていたんだ」

「え?」

「泣き虫だったから、だから強くなりたくて、俺の国の格闘技、少林寺拳法、空手道、柔道、剣道、合気道、さらに独学で古武術を学んだ。リュウ、お前は密かに剣術の修行をしていたようだが、俺も最初から強いわけじゃない。悔しさをバネに努力して強さを手に入れたんだ。だから、お前も努力をすれば強くなれるさ」

「は、はい」

「あっ、自分の事だけじゃなく、お前の秘密まで言っちゃった」

「いいえ、隠し事はなしなんでしょう。カムイさん、僕はルーナさんに会うまではチンピラのパシリでした」

「土方、リュウ……」

「私の弟は、クーロンという情けない弟です」

「マリー……ありがとう。まず、私に依頼をしてきたのは、魔王団という連中だ。その中に……ん……」

カムイはマリーの方を見た。

「そ、その中に、マリーの弟、クーロンもいた」

マリーの顔が険しくなった。

「マリーちゃん」

「大丈夫です」

「私が賞金稼ぎをしているのは、病気の妹の手術代のため」

「妹さん病気なのか?」

「ああ~、手術すれば助かると医者は言っていた。だが、その手術代には5万マーネ(500万円)必要なんだ。何とか3万マーネ(300万円)集めたんだが」

「まったく、そんな汚れたマーネで助かっても、妹さんが喜ぶのかよ」

そう言うと、土方は3万マーネ出した。

「これで足りるんだろう」

「土方……」

「でも土方さん、そのお金も違法の裏カジノで稼いだんじゃ」

「い、いいんだよ。俺の妹じゃないんだから」

「土方、すまん……ルーナにも貰った5千マーネも、この3万マーネも必ず返す」

「カムイくん、あれは上げたんだからいいのよ」

「いや、必ず返す。村人からいただいた大事なマーネなんだろう」

「そうよ。だけど、汚れたマーネはお断りよ」

「分かっている」

「俺のマーネはいいよ」

「しかし」

「大事なマーネじゃないし、それにこの前楽しい戦いができたんだ。それは駄賃だ」

「本当にいいのか?」

「武士に二言はない」

「ぶし?」

「あっ、簡単に言えば、俺のいた世界の、昔の日本に存在した本物の戦士たちだ。侍とも兵とも言う」

「武士、侍……土方、お前は本物の戦士ぶし何だな」

「俺なんて、まだまだ未熟者さ」

「あと、私は男じゃない。土方には気づかれたが」

「女の人だったの……にしても、総司くんよく気づいたわね」

「前の戦いで、金的を蹴った時におかしいと思い、羽交い絞めという絞め技をする時に、胸を触って確信した」

「へ~、ってそれセクハラじゃない」

「……い、いや、女か確かめただけだ」

「女を捨てたのは……10年前5人の男たちに犯されて、それから強くなるために、女であることを捨てた」

「そうだったの」

「お前さんも俺と似ているんだな。これで俺やカムイが最初から強かったわけじゃないと分かっただろう。リュウ」

「はい、僕もあきらめず頑張ります」

「それから、私の本当の名はレイラだ」

「じゃあ、これからはレイラさんて呼ぶね」

「あ、ああ……最後に1週間以内にお前を殺すように、クーロンたちからまた依頼された」

「ということは1週間後にクーロンと会うのね」

「ああ……」

「ルーナさん、弟をその時殺してください」

「マリーちゃん……」

「とりあえず、まずは話し合ってからね。それより、今度こそ寝ましょう。明日は早いのよ」

「てか、もう4時じゃん」

「じゃあ、レイラさんも私たちの部屋へ行きましょう。じゃあ、8時にはここを出るからね」

「ああ」

「はい」


こうしてカムイ、いやレイラは正式にルーナの仲間となった。




キャラデータ


ルーナ・・・本名ダイアナ・シー・ルーナ。22歳の女性。生まれはアルテ村。

20歳の時、今は亡き恋人の意志とバトルソルジャーの名を受け継ぎ、悪と戦う戦士。

剣術、体術と炎の魔法を得意としている。


リュウ・・・本名、年齢、出身地などは不明。(年齢は推定16~7くらい)性別は男性。

7年前に山で倒れていたところを老夫婦に助けられ、その後リュウという名をつけてもらい育てられたが、老夫婦が事故死してから、チンピラのパシリをし、そのときにルーナと出会い、仲間になる。


マリー・・・本名マリー・ミゼール。21歳の女性。生まれはアクーイ村。

弟のクーロンを殺して欲しいとルーナに依頼し、その後共に旅に出る。

ある程度の怪我を治す魔法を使う。


土方総司・・・18歳の男性。生まれは日本。

山篭りの最中に暗闇に飲み込まれて、魔法の世界に来てしまい、強者を求めてルーナの仲間となる。

魔法の世界の住人じゃないため魔法は使えないが、日本武道を学びさらに独学で古武術を学んでいる。


カムイ・・・本名レイラ・ルー・ヴォワール。21歳の女性。生まれはガーク村。

病の妹の手術代のために、賞金稼ぎをし、ルーナたちと戦い仲間となる。

10年前に、5人の男たちに犯されてから強くなるために、レイラの名と女である事を忘れ、カムイと名乗る。


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