第36章 究極のパワーを求める魔王
6人が戦場へ向かってから数時間後……
「おいおい、何だこりゃ~」
土方がそう呟いた。
「魔王と戦っているのかと思ったら、誰だこいつ等」
「おそらく死刑囚」
と、ドーラが答えた。
リスポ隊はすでに16人しか立っていなかった。
「ローズさん、僕らがあいつらと戦っている間に、怪我人をお願いします」
「はい」
「何だこの餓鬼どもは?」
「あの女は知っている。今のバトルソルジャーだ。俺はアイツに捕まったのだからな」
「ほう……なら相手をしてやるか」
「皆行くよ!」
とリュウの言葉から戦いが始まった。
城の上からはハンジーとゾイが死刑囚と死戦組の戦いを眺めた。
「つえ~……何だこの餓鬼共……」
「お、おいあの男女、魔王と戦ったゴン・ドーラに似ているぞ」
「何!」
「ワシは50年くらい前に一度だけ見たことがある。もしかしたらは奴の子孫かもしれん」
「もう一人似た奴がいるが、奴もそうか?」
「おそらく」
「そ、それより強いのは、あの二人……金髪と黒髪の二枚目野郎だ」
「俺が土方だ」
土方はその辺に落ちていた棒で応戦した。
そして……
「あちゃ~」
「ぐわ~」
「これで全員倒したぞ」
「(誰も死人は出ていないようね)」
ルーナは見方だけでなく、敵の心配もした。
「魔王出て来い!」
土方が大声で叫んだ。
そしてしばらくすると、ハンジーとゾイが城から出てきた。
「魔王はどうした?」
「魔王さまは、今は留守だ」
「何」
「まさかドラコを吸収しに行ったのでは」
と、ドーラが行った。
「リュウ君?」
「何か嫌な予感がする」
「リュウ君……大丈夫よ。カーワ村にはマジック様やナイト君、ギゾランさんやレイラさんそしてヴィーナがいるわ」
「う、うん」
「いや、お前ら二人は戻れ」
「土方さん」
「ここは俺とキャーロットとドーラに任せろ」
「はい」
二人はウーマに乗り、カーワ村へ戻ることにした。
「逃がさん」
ハンジーが炎の魔法で攻撃しようとした。
「おい、お前らの相手は俺たちだ」
一瞬のうちにハンジーの間合いに入り、背負い投げた。
「こ、小僧~」
「復活したリスポ隊とローズは離れていろ」
「我々も戦います」
と、一人の隊員が言ったが、副隊長がそれを止めた。
「ヤーマ副隊長」
ヤーマ・ナミーそれが副隊長の名前だ。
「ドーラ様たちを信じよう」
「は、はい」
その頃カーワ村でも魔王軍と戦っていた。
だが、こちらは魔王軍が圧倒的に押していた。
すでにザミー隊長とナイトさらにヴィーナ以外の女性軍は全滅していたのだ。
なぜなら、ここに来たのはシン、カミューだけでなく魔王も来ていたのだ。
何故魔王はドラコを吸収しに行かずここに来たのだろうか。
「ハアハア……クソ」
「老いとは虚しいな」
「なんじゃと」
「50年前のお前はもっと強かったのに」
「くっ……ビルダー」
「ん?」
「お前は一体何が目的なんじゃ?」
「フッ、まずはお前らを殺すために究極のパワーを手に入れることだ。そしてお前らを殺したあと、この世界を悪が正義の世界にしてやる」
「くだらんことを……」
「俺様が楽しめればそれでいいのさ」
「ビルダー、50年前にも言ったが、ワシは、お前がまだカーメ先生の弟子だった頃、ワシはお前に憧れていた。心から尊敬し目標としていた」
「心から尊敬しているなら、俺様の手下に何故ならん」
「破門されてからのお前が嫌いになったからじゃ」
「フン……」
「魔王!私は幼い頃から父と同じようにお前を倒すために高度な魔法や武術を叩き込まれた。こんな程度では終われない」
「ヴィーナ……」
ヴィーナは魔王に斬りかかった。
だが、交わされると同時に、両手を凍らされた。
「老いたマジックよりもお前の方がいいか」
「何!?」
魔王はヴィーナの両足も凍らせ、さらに殴って、彼女の肋骨を2、3本折った。
「うっ……ぐわ~!」
「ドラコを吸収しても勝てんのなら、お前らを吸収すればいいだけの事。そのためにここに来た。お前らは必ず強い者を何人か残すと読んだからな」
魔王はヴィーナの頭に手を当て、吸収し始めた。
「ヴィーナ!」
「魔王さまの邪魔はさせん」
「カミュー、シン」
「魔王さまの言うとおり、老いたお前は弱い」
「今のお前なら俺たち二人でかかれば負けない」
「ぐわ~」
「ヴィーナ……あいつが吸収されたら、ワシはリュウやルーナに合わせる顔がない。じゃから負けられん」
「ジジイはおとなしくあの世にいきな」
マジックはシンの剣で腹を斬られ、倒れた。
そしてとどめにマジックの喉を突き刺そうとした時、彼の頭を岩が直撃した。
「くっ……」
岩を投げたのはナイトだ。
「ハアハア……僕は土方さんの弟子だ。こんな程度では終われない」
「(そういえばあの餓鬼土方の弟子だったな)シン、カミュー!その餓鬼を殺さない程度に痛めつけてやれ」
「はっ!」
「ガキ、この前はお前の勝ちだが、今回はどうかな~」
ナイトは自分の刀を拾い晴眼に構えた。
そしてシンの剣を打ち返し、カミューの炎を交わした。
「(ククッ……この女を吸収したら次はあの餓鬼だな)」
「お、お母様……お父様……」
ナイトが気がついてから数時間が経った。
ナイトはその間に一人でカミューとシンの相手をしていた。
前のときはシン一人だったが、今回はカミューもいる。
しかもすでにボロボロの状態だ。
だが、彼は戦った。
そしてリュウとルーナが戻ってきた。
「ナイト君!」
「リュウさん、ルーナさん……ヴィーナさんが……」
「えっ?」
「すばらしいパワーだ」
「ま、魔王、貴様!ヴィーナを」
「少し胸がでかくなったか……フッ、悔しいか?リュウ」
自分の娘を吸収されたリュウとルーナ。
リュウの怒りの炎が激しく燃えるのであった。