第35章 死戦組出陣
土方とキャーロットの魂がこの世にいられるもあと2日。
ファンジー城は魔王に乗っ取っられたため、城の近くには100人位のリスポ隊が不眠不休で待機していた。
「俺様の城の近くで、クズ共が……焼き殺してやる」
そう言って手から炎を出そうとした。
だが、魔王は何かを思いついたようだ。
「城の地下に死刑囚が50人いたな~」
「はい」
「こいつらを使って、城から殺し合いを見るのもいいな~」
「囚人共はリスポ隊を憎んでいます。自由にしてやれば、喜んでリスポ隊を殺しに行く事でしょう」
「では私が行って、牢から囚人共を出してきます」
「まあ、待て」
「はい?」
「お前らは今、王たちの姿をしている。奴らはリスポ隊だけでなく、王族にも恨みがある。お前たちを必ず襲う。俺様直々に奴らのとこに行く」
「はあ」
魔王はそう言って一人地下牢へと向かった。
地下牢……
不気味で暗く、1つの牢に10人ずつ収容されていた。
「我が名はクーマ・ビルダー」
その名を聞いて、さっきまで静まっていた牢の中が、騒ぎ始めた。
「あの魔王か?」
「そうだ。これからこの世界は俺様の物。よって、お前たちを自由にしてやる。これからは悪こそ正義の時代だ」
「本物か?」
「何!?」
「魔王の封印が解かれたのは番人たちの話で知っておる。だが、50年も刻が流れておるのに、お前の姿を見ていると高齢者には見えん」
「そうだ」
「信じぬのならそれでいい。このまま牢で死ね」
騒ぎの中、一人の30代の男性が叫んだ。
「俺は信じる」
「本気か?罠かも知れんぞ」
「俺たちはもう死刑が決まっている。そんな連中を罠にかけてもしょうがないはず」
「確かに」
「本当に俺たちを出してくれるのか?」
「ああ、王と王妃は俺様の仲間の魂が乗り移っている。だが、外にはリスポ隊が100人おる。奴らを己の手で血祭りにしたくないか?」
「おう!」
「この手で奴らを殺して~」
「俺もだ」
「だが、奴らは俺たちの2倍もいるぞ」
「それがどうした。俺たちには魔王、いや、魔王さまがついている」
「そうじゃ~!これからは悪が正義の時代じゃ~」
そして魔王は囚人たちを解放した。
死刑囚とリスポ隊との激しい戦いが始まった。
魔王は王室に戻り、城の上からこの修羅場を眺めた。
数ではリスポ隊の方が上だが、王や王妃の身の安全を考えながら戦っているため、思うように戦えない。
だが逆に囚人たちは怒りと恨みで殺す気で襲ってくる。
そして1時間半くらいの時が流れた時、カミューがキングドラコを見付けたという知らせに参った。
その頃にはすでに隊士たちの半分以上が瀕死の状態だった。
「そうか。やっと見付けたか」
「はい」
「いい所だが仕方ない」
魔王はそう言うとパワーを解放した。
「魔王さま?」
「挑発だ。吸収しているときに邪魔されたくない。今のでリスポ隊の身に何かあったと思い奴らがここへ来る。留守中頼んだぞ。ゾイ、ハンジー」
「はい」
「本当は土方たちが消えてから、お前たちを使いたかったのだがな。まあ、しょうがない」
そう言い残し、魔王はカミューと共に飛び去っていった。
その頃カーワ村では……
「ファンジーの街で何かが起きておる。この前はワシもドーラも聖水のことしか頭になく、ビルダーがファンジーの街に攻めたことに気がつかなんだが……」
「マジック様、まさか部下たちが」
「リュウ」
「なんですか?土方さん」
「俺が一人で攻めに行ってもいいが、俺とキャーロットはあと2日でこの世にいられなくなる。だから今からはお前とねーさんが、この死戦組を指揮しろ」
「……わ、分かりました」
リュウは悩みそして指示を出した。
「ウーマは土方さんと隊長のを合わせて4頭……僕と土方さん、キャーロットさん、ナイト君、ドーラ様、マジック様でファンジーの街へ向かい、女性軍はザムー隊長と共にこの村とマーナさんを守ってください」
「いいのか?女性軍ばかり残して」
土方がリュウにそう言った。
「そ、そうですね……では……」
「ワシが残ろう」
「マジック様がですか」
「ワシは年じゃ。この前のハンジーたちとの戦い、ドーラがいなければワシは死んでおった」
「僕もお姉ちゃんと一緒がいい」
「えっ!で、では二人にも残ってもらって」
「二人の変わりに私が行くわ」
「ルーナさん」
「お願い行かせて」
「俺もその方がいいと思うぜ。お前はねーさんと一緒の方がいい」
「わ、分かりました。では僕と土方さん、キャーロットさん、ドーラ様、ルーナさんの5人で行きましょう」
「待ってください。私も、私も連れて行ってください」
そう言ったのはローズだ。
「戦う事は出来なくても、少しだけなら回復系の術が使えます。ですから隊員の皆さんの怪我を治せます」
「(母さん……)分かりました。行きましょう」
マリーもそして錬金術だけでなく、回復系の魔法も使えるミストも行こうとしたが、怪我の回復はローズに任せ、残る事にした。
こうして6人の戦士は戦場へと向かった。
どのような修羅場が待っているのかも知らずに……