第31章 キャーロット対ビルダー
聖水を手に入れるため、戦士たちは村人に案内され洞窟へと向かった。
村を出て近くに洞窟はあった。
「この中にゴルゴーンがいるのか?」
「そうじゃ」
土方の問いに村の老人が答えた。
「結界なんて見えないが、やっぱ見えないだけか?」
「ああ、見えぬだけでこのように入ろうと思っても入れない……あれ……入れたぞ」
「な、何てことだ!結界が破られておる」
「何!」
「きっと千年も経っていたため、結界が弱くなり破られたんじゃろう」
と、その時だった。
笑いながら一人の男が現れた。
戦士たちの顔が険しくなった。
なぜなら男は魔王ビルダーだからだ。
「魔王……」
「一足遅かったな。たった今、俺様が結界を解いて、ゴルゴーンを自由にしてやった」
「クソ、ヤツはここに聖水があるのを知っていたのか!?」
「いや、俺様も知らぬ。だが、考えればカーメの故郷にあるんじゃないかと思ってな。しかも、お前らがここに来る事も、さらにシンやカミューが石となったお前らの仲間を壊しに来ると読み、ドーラとマジックを残してくると計算した」
「へ~、お前、頭いいな」
土方の問いに魔王の顔が険しくなった。
「誰だ?貴様?」
さすがの魔王もまさか土方だとは気づかなかったのであろう。
「忘れたのかい。まあ、無理もない。人の体を借りているんだ。なら、今度はお前の右目を潰してやろうか?」
「ま、まさか土方!」
「名前を覚えてもらっていたとは、光栄だな」
「そうか。マジックが魂呼び寄せの術を使ったのか……(ヤツがいたのは計算外だ)」
そういうと魔王は浮遊術で空に浮いた。
「この洞窟ごと聖水を壊してやる」
「何!」
魔王は雷雲を呼び始めた。
「キャーロット」
「ああ」
キャーロットも宙に浮き、魔王に電撃を放ち見事に当たった。
「ぐっ……貴様は誰だ?」
「オイラはお前の兄弟弟子、キャーロットだ」
「キャーロット!?そうかあのギゾランの幼馴染か……」
「ああ。オイラ、おめ~やクーロンに怒っているんだ。ギゾランを使って卑劣な事をさせたことに」
「フッ……くだらん」
「なんだと……土方、皆、手を出すなよ。今度はオイラが一人でやる」
「ダメよキャーロット君」
「ねーさん、アンタには分からないだろうが、俺たちは一度でもいいから、強いと思う相手と、1対1のタイマンで勝負したいのさ」
「で、でも」
「それにアイツがどれだけ強くなったか、俺は見てみたい(さて見せてもらうぞキャーロット……ジャッキー・リーから学んだ中国武術を)」
キャーロットは地上に下りた。
「身の程知らずが……いいだろう。兄弟子として相手をしてやる」
そう言って魔王も下りた。
「行くぞ。小僧」
「ああ」
魔王が先に炎の魔法で攻撃を仕掛けた。
もちろん余裕でキャーロットは交わした。
だが、間合いに入られた。
再び手から炎を出そうとしたので、キャーロットは魔王の手首を握り締め。さらにもう片方の手で、魔王の首を絞めた。
そしてそのまま電撃を放った。
「ぐっ……ガ、ガキが……」
キャーロットは両手を放ち、顔面に正拳突きを放った。
バキッ!
「す、すごい。もしかしてキャーロットさん一人で勝てるかも」
「どうかな。キャーロットも本気じゃないが、魔王も本気を出していない」
「いいパンチだ」
魔王が不気味に微笑んだ。
キャーロットは拳に力を入れ、パンチを繰り出した。
この時、1秒間の間に60発のパンチを撃ち込んでいる。
「凄すぎて見えないわ」
「他人の体を借りているから、動きにくいはずなのに、慣れない体でよくあれだけのパンチが撃てるな~」
「どうした?もうお終いか?お前の兄弟子……俺様にとっては弟弟子のアックスは1秒間に80発は撃っていたぞ」
「アックスって、マジックのじーさんたちと共に魔王と戦った男か?」
「ええ。でも男性じゃなく女性よ」
「へ~、女で1秒間に80発も撃てるのか。化け物だな。だが、何十発撃っても、威力がなければ意味がない(そろそろ見せてみろ。ジャッキー・リーから教わった戦い方を)」
キャーロットは2度右ジャブを放ち、右フックが決まる。
そして左右さらに後ろにステップした。
「あちゃ~」
再び右フックを放ち後ろに下がった。
「(何だコイツの動きは……読みにくい動きをしやがる)」
「あた~」
と、叫び声と共に、右の上段蹴りが魔王のコメカミに入った。
だが魔王は自分の手を氷柱にし、手刀。
完全に避ける事はできず、胸元が切られ、血が出た。
キャーロットはその血を指につけ、そして舐めた。
再び左右に動くキャーロット。
魔王は凍らせて動きを封じようとしたが、キャーロットは跳んで回し蹴り。
「これは避けれる」
魔王は避けたがそのまま足が地に着くことなく、後ろ回し蹴りが魔王に直撃した。
「(何て旋風脚をしやがるんだ。まあ、ヤツは浮遊術が使えるからな~)」
さらに全身全霊を込めた横蹴りで魔王はふっ飛んだ。
「すごい」
「だが、怒りがあっても、やはりヤツはあまいな」
「えっ?どういうことですか?」
「今の一撃、常人なら確かにあの世いきだ。だが、相手は俺でも勝てなかった男だ。殺す気で蹴らねば効果はない。キャーロットは強いが、あまいんだよ。俺もヤツと戦ったとき、アイツに恐怖を感じたことはない。闘気はあっても殺気がないんだよ。だが、ヤツが俺のように本物の修羅となったら、俺でも勝てんがな」
魔王は立ち上がり不気味に微笑んだ。
「肋骨が2、3本折れたか。だが、この程度じゃ、まだまだだな」
「キャーロット!怒っているなら、殺す気で攻撃したらどうだ」
土方がキャーロット忠告した。
「土方の言うとおりだ。こんな蹴りじゃ俺様は死なんぞ」
「うっ……」
「だが、なかなか楽しめたぞ。もっと相手をしてやりたいが、俺様も他にやることがあるんでな」
「何!逃げる気か?」
「ああ、頑張って聖水を手に入れな」
「しょうがね~。リュウ、俺の刀を貸せ」
「は、はい」
「土方、キャーロット、お前らは所詮数日しかこの世にいられない。1年以内に何度も魂を呼ぶ事は禁じられているからな」
「俺たち、二人から逃げられると思っているのか?」
「ああ……ゴルゴーン!ここにお前の嫌いな美しい女が二人もいるぞ!」
「あ、あの野郎」
「ゴルゴーン!いいのか!お前より美しい女を殺したいんだろう」
魔王のその言葉に、洞窟から出て行ったゴルゴーンが戻ってきた。
その姿は、人間でもなく、ウーマでもない。
醜い姿をした化け物だった。
「美しい女は殺す」
「あれがゴルゴーンか」
土方やキャーロットたちがゴルゴーンに気を取られた瞬間、両手を使い、土方とキャーロットの二人に電撃を放ち直撃した。
そしてその隙に魔王は姿を消した。
「し、痺れた……」
果たして、戦士たちはゴルゴーンを退治できるのか?
キャラデータ
今回は本編で登場していない伝説の戦士3人のデータを書きました。
J・O・・・本名ジェイ・オルーノ。出身地ビート村(別名パイロ村)
カーメの5番目の弟子である。
自然を操る魔法は氷系を得意としていたが、実はカーメの弟子になる前は炎系の魔法が得意であった。
だが、彼には恋人がいて、自分が留守中、何者が村を放火し、その時に彼女は焼き死んだ。
この事から、炎の魔法を封印し、氷の魔法をカーメから教わった。
また、この事からパイロ村と呼ばれている(パイロとはマジカルワールドの言葉で放火という意味である)
また、飛び道具を得意とし、氷柱を相手の急所に当てる事を得意としていた。
いつ、どこでどのように死んだかは不明で、現在はマジックによって故郷ビート村にある墓に彼女と共に眠っている。
ジンヤー・・・本名ジンヤー・ラムド。出身地はザンダ村。
カーメの4番目の弟子である。
雷系の魔法を得意としていた。
また5人の中では一番の大男であり、かなりの怪力の持ち主であった。
死因はJ・Oと同じく不明でマジックによって現在は、故郷ザンダ村にある墓に眠っている。
アックス・ジャンパー・・・本名アックス・サイジェラ・ジャンパー。出身地はヴィジュアールの街
カーメの3番目の弟子。
炎の魔法を得意としていた。魔王と戦った5人の中で唯一の女性。
マジックに好意を持っており、魔王を倒した後、彼の彼女となる。
肉弾戦も得意とし、1秒間で80発パンチを撃つ事ができる(キャーロットは60発だが他人の体を借りているため、スピードが落ちてしまう。自分の肉体なら70発は撃てるが、やはりアックスの方が早い)
彼女の洗礼名サイジェラとはマジカルワールドで「華のような美しさ」である。
死因は他の二人同様不明で、現在は故郷ヴィジュアールの街の墓で眠っている。