第30章 リュウグ村の秘密
短期間だが土方とキャーロットが戻ってきた。
だが、時間がない。
戦士たちはウーマに乗って急いだ。
土方のウーマはかつて魔王に攻め込んだときに買ったウーマに乗ってきたようだ。
キャーロットは浮遊術で後を追った。
そして旅に出てから三日目に戦士たちはリュウグ村に着いた。
マジックやドーラ同様に、キャーロットも着たことはない。
「ここがリュウグ村」
だが、その村はゴーストタウンだった。
ぼろい家などが建っているだけだった。
だが、土方たちは人の気配を感じた。
「怪しい物ではない。出てきてくれないか」
土方が大声でそう言った。
すると一軒のボロ小屋から一人の老人が出てきた。
「な、何者じゃ?」
「バトルソルジャーとその仲間、死戦組だ」
「バトルソルジャー……噂は聞いておる」
老人は小屋の中へ案内した。
小屋の中には男女の年寄りが17人いた。
「若い人はどうした?」
「若いやつらはこの村を出て行った。ここは見ての通り極貧の村。若いやつらはそのため5年前に皆出て行った」
「もちろんワシらにも出るように薦められたが、わしらにはこんな村でも思い出がある。だからワシらは残った」
「ここはカーメという人の故郷だよな」
「そうじゃ。だが、あの方もこの村を捨てたお方。さらには魔王という怪物まで作り上げてしまった」
「オイラ、先生の弟子なんだけど……ここにいる人たちは先生が嫌いなのか?」
「ほう、まだ生きておられるのか」
「いや、もう亡くなった」
「そうか……残念じゃ」
「若いの。わしらはカーメさんを嫌ってなどいない。むしろ尊敬していた」
「ワシらが子供の頃、すでにカーメさんは、今のワシらよりも上じゃった」
「面倒見のいい方で、よく遊んでもらった」
「懐かしいのう。まるで昨日のようじゃ」
「ワシらは尊敬しておった」
「ワシらはカーメさんの弟子というわけではないが、魔法も教えてくれた」
「でもカーメさんは、かなりの高齢者。自分が死ぬ前に一人でも多くの優秀な魔法使いを育てるため、旅に出たんじゃ」
「じゃが、今の若いものには魔王を生み出した悪魔だと思われておる」
「そんな」
「まあ、極貧の村ということで出て行ったが、他の理由として、悪魔がいた故郷。さらにこの村の近くでドゥーサが出るというのも出ていったやつらの理由じゃ」
ドゥーサとは我々の世界で言う悪霊の事だ。
「ゴルゴーンの伝説を知っておるか?」
「はい、私たちはそのゴルゴーンの石で仲間が石にされたため、聖水を探して旅をしていたのです」
と、ルーナが答えた。
「俺は詳しく知らないんだけど、ここにロメダの洞窟はあるのか?」
土方はここの世界の人間ではないため、この伝説をあまり知らない。
そして土方の質問に村人の一人が答えた。
「あるぞ」
「本当ですか」
「ワシらはゴルゴーンの洞窟といっておるがな」
「この村の外れに洞窟がある。そしてこの洞窟に悪霊となったゴルゴーンが出るんじゃ」
「神が悪霊……あっ、いや、ドゥーサとなったのかい」
と土方が聞いた。
「伝説では神と言われておるが、彼女もこの村の人間じゃ」
「千年くらい前、この村でテーナの娘として生まれたんじゃ。テーナも美しかったらしいが、娘のゴルゴーンもかなりの美女だった。だが、性格は悪く、自分より美しいと言われた者に対して、酷い仕打ちをしておった」
「ある日、ディーテという美女を切り殺そうとした」
「これの事件に母テーナは娘に激怒した」
「テーナは人や生き物を別の物に変える能力を持っておった。そして、娘ゴルゴーンを醜い姿に変えた」
「さらに自分にも責任を感じ、自ら炎の魔法で焼き死ぬつもりだった」
「だが、その時彼女の炎を一瞬で消すほどの大雨が降った」
「おそらく海の神ポセイ様が助けたのじゃろう」
「そうじゃ、そうじゃ」
「テーナは体に軽い火傷を負った程度で済んだ。そして、その間に、ゴルゴーンは呪いの石を作った。伝説では彼女の涙で出来たと云われているがのう」
「それがゴルゴーンの石か」
「そうじゃ」
「そしてこの頃、ペルセという男性に恋をしておった。じゃが、彼には婚約者ロメダがいた」
「ゴルゴーンは彼女に苦痛を与え、あきらめさせようとした。だが、彼女はあきらめようとしなかった」
「それで石にされたのか」
「伝説ではペルセが湧き水で石になったロメダを洗っていたら、涙が出てきて、そしてテーナが現れたと云われているが、実際は最初からテーナと共に洞窟に向かったと聞く」
「そして、テーナは翼の生えたウーマ……この村じゃペガーと言われているが、とにかく、そのペガーにゴルゴーンを変えた」
「翼を生やしたのは、せめて大空を自由に羽ばたいてほしいということからと聞く」
「その後、テーナは石に札をつけてペルセに渡し、そしてテーナは自らの手首を切り、湧き水に自分の血を落とした」
「これじゃあテーナの聖水って言うべきだな」
と土方が言った。
「ワシらはそう呼んでおるがのう」
「……」
「続きをお願いします」
「うむ……ペルセはすぐにやめさせようと止めに入ったが、テーナが氷の魔法を使い彼の下半身を凍らせ動けなくした」
「かなりの血を流したテーナは倒れ薄れゆく意識の中、炎の魔法を使ってペルセの氷を溶かし、息絶えた」
「確か最後に娘を許してねと言って世を去ったらしい」
「そしてテーナの血が混ざった湧き水をかけて、ロメダは元に戻ったという」
「ペガーとなったゴルゴーンは数年後、洞窟に入り最後を迎えた」
「で、そのペガサスになったゴルゴーンは何で悪霊……ドゥーサになったんだ?」
「土方さん、ペガサスではなくペガーですよ。それに悪霊ってなんですか?」
と、リュウにつっ込まれた。
「き、気にするな」
「やはり、ペルセのことを今でも想い続けているのだろう」
「なんか悲しいお話」
と、ルーナが悲しい顔でそう呟いた。
「じゃあ、ほっとけば何の害もないわけだ」
と土方が言った。
「今はペルセとロメダの子、ペルセ2世が結界をしてくれたおかげで、何とかゴルゴーンを洞窟の外から出てくることはできぬが、でもすでに千年以上経っておるから、結界が弱まっている。結界が解かれたら、ゴルゴーンは外に出てきてしまう」
「じゃあ、結界がある以上、俺たちも洞窟の中に入れないのか?」
「もちろん」
「じゃあ、どうやって聖水を手に入れるんだよ」
「結界を解きましょう」
とルーナがいった。
「洞窟に入らないと聖水は手に入らないし、何よりゴルゴーンがこのままじゃかわいそうだわ」
「どうする」
村人たちは相談し始めた。
そして
「あんたらを信じよう」
と答えた。
果たして聖水を手に入れる事ができるのか?
そしてゴルゴーンをどうするつもりなのか?
キャラデータ
バトルソルジャー・・・本名クラハ・ツー・ガート。出身地はアルテ村
実は元リスポ隊の隊士であったが、自由に活動できぬ事から脱退し、一人で戦う決意をする。
バトルソルジャーとはマジカルワールドで「希望の光」を意味する。
ルーナとは幼馴染であるがクラハの方が5つ上である。
ルーナにとっては恋人でもあり、魔法や武術の師匠でもある。
だが、病で病死した。
現在はルーナによって故郷アルテ村にある墓に眠っている。