第28章 リュウとルーナ
この物語はファンタジーでもあり、格闘モノでもあり、冒険モノでもあり、SFモノでもあり、恋愛モノでもある。
マジックもドーラも知らないロメダの洞窟。
だが、彼らには時間がなかった。
「マジック様」
「なんじゃ?リュウ」
「もしかしたらカーメ先生の故郷の近くにあるのでは?」
「そのような話は先生から聞いたことがないのう。それに先生の故郷はリュウグ村と聞いたが、わしらは行った事はない。だが、ゴルゴーンの石をカーメ先生の一族の方が代々持っていらしたから、ありえるかもしれぬ」
「僕、そこへ調査しに行きます」
「僕も行く。お姉ちゃんを僕の手で元に戻したい」
「お前たち二人では心配じゃ。ルーナとレイラ、それにドーラも着いていけ」
「はい」
「ですが、マジックさん。ビルダーの奴らが5人の石を壊しに来るかもしれません。俺も残ります」
「う~む……分かった。二人で留守番するかのう」
「はい」
「では長老からウーマを借りてこよう」
ルーナ、レイラはもちろんナイトもウーマに乗れる。
そして記憶を取り戻したリュウも乗ることができる。
だが、長老のウーマは二頭しかいない。
しょうがないため、ルーナ後ろにリュウが乗り、レイラの後ろにナイトが乗った。
そして4人はリュウグ村へと向かった。
その頃魔王は、オウマの洞窟にいた。
「魔王さま、私とシンでカーワ村に行き、石となった戦士共を破壊しようと思いますが、よろしいですか?」
「やめておけ、殺されるだけだ。村にはおそらくマジックとドーラ辺りが残り、守っているはず。お前らでは無理だ」
「ですが」
「まだ、ゲームは始まったばかりだ。それより二人で白竜の森に行き、キングドラコを探して来い。やはり究極のパワーを手に入れたいからな」
「分かりました」
リュウたちが村を出発してから半日以上が経った。
「もう少し行くと、メルヘンの街だ。今夜はその街の宿で休もう」
と、レイラが行った。
「そうね」
そして30分後……
4人は夕方にメルヘンの街にたどり着き、「サンドリヨン」という宿に泊まった。
この街の住人は皆無邪気な子供のような者たちが多い。
受付けの者はトライオンの着ぐるみを着て接客していた。
他のスタッフもデバガーメや他の生き物の着ぐるみを着て仕事をしている。
レイラは一番安い部屋を一部屋頼んだ。
「すまないな。一番狭い部屋を4人で寝ることになって」
「いいのよ。私たちは遊びに来ているわけではないのだから、ねえリュウくん」
「えっ?あっ、はい」
「どうしたの?」
「あっ、いえ、ただ疲れただけです」
「そう」
「(もし聖水が見付らなかったら、母さんの魂は消え、僕も消えてしまうのか)」
夕食を終えると、リュウは散歩に出かけた。
出かけるときのリュウの顔は、まるでこの世の終わりみたいな顔をしていた。
夕食の時もほとんど食べず、何か悩んでいる感じだった。
「ルーナ」
「うん」
ルーナもレイラもリュウの異変に気づき、慌ててルーナはリュウの後を追った。
「リュウくん、私も付いて行っていい?」
「えっ?はい」
「この街始めて来たけど、にぎやかな街ね」
「はあ、そうですね」
気の抜けた声で彼は答えた。
「(どうしたのかしら)」
街の外れに行くと、さすがに人気もなく、静かだった。
ふと、リュウが立ち止まり、ようやく彼がしゃべり始めた。
「ルーナさん」
「なあに」
「メルヘンの街ってにぎやかですね」
「えっ?そ、そうね(さっき私がそう言ったのだけど……)」
「はあ~」
と、リュウは大きくため息を吐いた。
「ローズさんたちの事が心配なのね」
そう言ってルーナはしゃがんだ。
「う、うん……でも一番心配なのは」
リュウは震えていた。
「リュウくん?」
リュウもしゃがみ、そしてこう言った。
「一番心配なのは、僕自身が消えてしまうかも知れないことなんです」
「リュウくん……」
「情けない……でも僕怖い……母さんを救えなかったら僕は消えてしまう」
リュウの目から涙が流れた。
そんなリュウをルーナは優しく抱きしめた。
「ルーナさん、僕、本当に情けない男ですよね」
「そんなことないわ。いくら強くても誰だって怖いことはあるわ」
「ルーナさん……戦いの事なんか忘れて、ずっとこうしていたいよ」
「そうね」
母ローズを救えぬ時は自分も消えてしまう。
そのためリュウは恐怖に怯えていた。
さらにリュウはこんなことを言った。
「ルーナさんと一つになりたい」
「リュウくん……」
「ご、ごめんなさい。出会った時と同じように変なことを言って」
「リュウくん、前にも言ったけど、最初は最低な男だと思ったわ」
「……」
「でも今は貴方を愛しているわ。だって私の未来の旦那様だもの」
「ルーナさん……僕も愛しています」
「おいで、私がリュウ君を大人の男にしてあげる」
「い、いいんですか?」
「うん。この辺なら誰もいないし」
「ルーナさん」
ついに二人は心と体が一つとなった。
リュウにとって初めての体験……
それからしばらく、言葉ではなく体で二人は愛を語った。