第27章 ロメダの洞窟
魔王たちが去ろうとした時、リュウは追いかける気でいたが、マジックたちに止められた。
「今はこの5人を元に戻すのが先じゃ」
「は、はい……」
「リュウ」
「なんでしょうドーラ様」
「魔王は去る前に、リュウ・シー・ドーラと言っていたが、お前、まさか」
その言葉にリュウは下を向き、こう答えた。
「はい。僕は貴方の息子、リュウ・シー・ドーラです」
「そうか」
ドーラは驚く様子はなかった。
「(さすが父さん。10歳とは思えないほどの冷静さを持っている)」
「なるほどのう。それで二人が似ているのおるのか」
ドーラは石となった5人の女性を見つめた。
「(この中に俺の妻となる女性がいるのか……ヴィーナは俺の孫になるから確実に違うだろう。マリーか、それともミストか……それともローズか……)」
「ドーラ様?どうされました」
「ん?ああ、なんでもない」
「お姉ちゃんが石になっちゃった。うわ~ん」
姉を石にされ、泣きまくるナイト。
四天王のシンと戦っているときとはまるで別人だ。
「完全に僕の知っている歴史とは違う。しかも、魔王は未来を知っている感じだった」
「おそらくは未来人を吸収したのであろう」
「未来人ですか!」
「それしか考えられない」
「では、未来から来た人間を吸収したということですね」
「たぶん。ターム・マジンが時空の術を使った時に飲み込まれたヤツじゃとワシは思う」
リュウもラーベルの存在を知らない。
何しろ彼は竜王暦769年の未来で時空に飲み込まれて、しかも別の未来の彼はこの時代から30年後に闇から抜け出ている。
リュウが時空に飲み込まれるのは今から20年後。当然飲み込まれた後の未来の事は知らない。
「それよりこの5人を元に戻してやらねば」
「どうすれば戻るのですか?」
「1週間以内にぺルセの聖水をかければ元に戻る」
「1週間以内ですか」
「そうじゃ。もし1週間を超えたら、魂も消え、完全な石となるんじゃ」
「それで、その聖水は何処にあるのですか?」
「確実ではないが、ロメダの洞窟にあると聞いたことがある」
魔法の世界にはこんな伝説がある。
ゴルゴーンは女神でありながら、ぺルセという人間に恋をした。
だが、ぺルセにはロメダという婚約者がいた。
すでに心と姿が醜くなったゴルゴーンは、ロメダをある洞窟に連れて行き、1週間鎖で岩に縛りつけ、食料も与えず、さらに彼女の美しい体をムチで傷つけ、ぺルセをあきらめさせようとした。
だがロメダは「ペルセをあきらめるなら死を選びます」と言い、その言葉にゴルゴーンは、自分の涙で出来たゴルゴーンの石を使い、ロメダを石にして、海の神ポセイの生贄にしようとした。
それを知ったぺルセは洞窟に行き、ロメダを石にしたゴルゴーンに対し、激しく怒り、ゴルゴーンを翼の生えたウーマの姿へと変えた。
だがぺルセ自身には、人を生き物や石に変える力などは元々持っていなかった。
そして翼の生えたウーマとなったゴルゴーンはそのまま何処かへ飛び去っていった。
ゴルゴーンが飛び去った後、何とかロメダを元に戻したい。
だが、さっきの魔法は自分でもどうやったか分からない。
とりあえずペルセは汚れたロメダを湧き水で洗い始めた。
石となったロメダを洗っていると、悲しみから涙が流れた。
そして彼の涙が湧き水へ零れ落ちた。
一瞬湧き水が光った。
そして湧き水から美しき女性が現れた。
そしてこの女性こそが、ゴルゴーンの母テーナという女神であった。
実はさっきゴルゴーンを翼の生えたウーマへと変えたのは、娘に罰を与えるために彼女の母テーナが行なったと云われている。
そしてテーナは湧き水に魔法をかけ、その水をロメダにかけると、元の姿に戻ったと伝われている。
そしてゴルゴーンが落としていったゴルゴーンの石を悪人に渡らぬようにペルセはお札を付けて持ち帰ったと云われている。
そして二人は結婚した。
カーメがゴルゴーンの石を持っていたことから、もしかしたらカーメはペルセとロメダの子孫なのかも知れない。
「それでロメダの洞窟は何処にあるんですか?」
リュウはマジックに問いかけた。
「ワシもドーラも、おそらくビルダーも知らん。本当にあるのかどうかも分からんのじゃ」
「そんな……」
「じゃが、ペルセの聖水を見つけないと、この5人は死ぬ」
ローズが死ねば当然リュウは存在しなくなる。
果たして戦士たちは1週間以内にペルセの聖水を手に入れることが出来るのだろうか?