第2章 旅の始まり
二人が食事を終えて、お互いの事を話していた時、呼び鈴が鳴った。
ルーナがドアを開けると、一人の二十代前半の女性が息を切らせながら、立っていた。
「何か?」
「ハアハア……あなたが、バトルソルジャーですか?」
「そうですが」
「お願いです。お、弟を殺してください」
「えっ?」
ルーナはとりあえず彼女を家の中に入れて、飲み物を出した。
「ありがとうございます。あっ、私マリーといいます」
「私はルーナ、彼はリュウくんよ。あのう、弟さんがどうかしたのですか?」
「弟の名はクーロン。5年前、武器屋を襲って、マーネを奪い、貴女の恋人によって捕まった男です」
「ああ~、あの事件ね」
「弟は牢獄されましたが、3前に出所しました」
「それで、また何か問題でも起こしたの?」
「出所後、しばらくは真面目に働いていたのですが、いつもバトルソルジャーに復讐し、こんな世界をメチャクチャにしてやる……そう言っていました」
マリーは飲み物を少し飲み、再び話し始めた。
「私の家は極貧で、親も私が小さい時に流行の病で亡くなり、弟と何とか生活していました。弟は世の中にはマーネをたくさん持っている奴らもいるのに、俺の家は何故、貧乏なんだ……いつもそんなような事を言っていました。そして、マーネ欲しさに、武器屋を襲ったのです」
「そうだったの」
「去年からは、変な連中とツルむようになり、先月、今のバトルソルジャーとこの世界を破壊しに行ってくる……そう言って私の前から去ってしまいました」
「それで、弟さんは今どこにいるか分からないのね?」
「はい」
「でも、まだ何も事件を起こしていないのだから、殺すというのは」
「あの子は本気です。だから、迷いに迷って、貴女に依頼しに来たのです」
その時だった。
ルーナの家にまた、一人の女性がやってきた。
「ルーナさん。大婆様がお呼びです」
「大婆様が!」
ルーナはリュウとマリーを連れて、大婆様と呼ばれるところに向かった。
この老婦人は、占いを得意とし、村では最長老である事から、村人から大婆様と呼ばれているのだ。
「大婆様、ルーナさんが見えました」
「来たか」
「大婆様、御用はなんですか?」
「50年前の悲劇が再び始まろうとしておる」
「えっ?」
「何者かが、魔王を復活させ、この世界に再び大戦争を起こそうとしておるようじゃ」
「だ、誰がそんなことを……」
「金色の髪に赤い目をした十代後半から、二十代前半の男の姿が見えた」
「クーロンだわ!」
そうマリーは大声出した。
「名前までは私にも分からぬ」
「大婆様、それはいつですか?」
「はっきりとは分からぬが、近いうちに、その男は仲間と共に魔王を復活させる気じゃろう」
「クーロン……」
「マリーちゃん、まだ、弟さんと決まったわけじゃないわ」
「絶対弟です」
「ルーナよ。お前にはそれを阻止してもらいたくて、呼んだのじゃ」
「はい」
「ここから東にある風魔の森に、かつて魔王と戦った5人の戦士の唯一の生き残り、マジック様がおるはずじゃ。マジック様の力を借り、世界の平和を守ってくれ」
「分かりました。ただ、私からもお願いがあります」
「なんじゃ?」
「この二人をこの村の皆で面倒を見てあげてください」
「分かった」
だが、リュウはこう言った。
「俺、ルーナさんの役に立ちたい。足手まといなのは分かります。でもルーナさんに着いていって、強さや正義を知りたい」
「リュウくん」
「(はて?この少年どこかでみたような気が……)」
「分かったわ」
「なら、私も行きます」
「マリーちゃん」
「魔王の封印を解こうとしているのが弟じゃないかもしれない。でも、もし弟なら、止められるか分かりませんが、私は弟に説得してみます」
「じゃあ、3人で行きましょう」
こうして3人の旅が始まった。