第26章 ゲーム開始
ラーベルを吸収したことにより、未来の知識を得た魔王ビルダー。
これにより自分がどのように殺されるかを知り、一番邪魔な存在がリュウであることを知る。
そのため、この世にまだ生を受けていないリュウの存在そのものを消そうと、彼の母ローズを石に変えて、魂を奪うため、カミューと共にカーワ村に向かっていた。
サーヤ村に向かっていたマジックたちは異変に気づき、彼らもカーワ村に戻ることにした。
その頃カーワ村では、四天王の一人シンとナイトがまだ戦いを行なっていた。
「クソ!何故餓鬼に……」
普段は甘えん坊で、まだ齢13歳の少年に四天王の一人であるシンは苦戦していた。
「もう勝負が付いたわ。潔く負けを認めて」
と、ルーナがシンに言った。
「まだだ。まだ、勝負は付いてね~」
シンは四天王の一人として、負けられなかった。
「何で魔王の味方をするの?」
「魔王さまがこの世界を支配すると信じているからだ。善などこの世から消え、悪こそが正義となる。魔王さまならそれが出来ると信じているからだ。分かったか」
その時、マジックたちが戻ってきた。
「強いパワーを感じたから引き帰してきたんじゃが、その必要もなかったか。ワシらの仲間は本当に頼りになるのう」
「ナイト君一人で相手をしてくれました」
リュウのその褒め言葉にナイトは喜んだ。
だが、その隙を付いてシンはナイトに斬りかかった。
ナイトは交わすと同時にシンの懐に入り、背負い投げをした。
そしてシンは地面に叩きつけられた。
だが、戦士たちの顔が険しくなった。
そう、魔王とカミューがついに現れたのだ。
「む!ヤツの姿が変わっておる。まさかドラコを……いや、あの姿からドラコを吸収したようには見えん……ビルダー、貴様また人を吸収したな~」
「フッフッ……まあな。おかげでいろんな事を知った」
「なんじゃと?」
「ま、魔王さま、すいません」
「シン、貴様を投げた小僧は俺様の目を潰した土方の弟子だ。恥じる事はない」
「は、はあ……」
「へ~、僕が土方さんの弟子だとよく知っているね」
「フフッ、貴様も未来では俺様を倒した戦士として、有名らしいからな」
「未来じゃと!?」
「だが、一番邪魔な存在はリュウという男……だが、お前はまだこの世に生を受けていない」
「な、何でそれを?」
「フッ、敵に教える義理はね~」
「うっ……」
「お前の母が今死んだら、お前は存在そのものが無くなるな~」
そう言ってゴルゴーンの石を出した。
「あ、あの石はまさか!ゴルゴーンの石!」
「その通りだマジック。カーメが持っていたので、破門された時、盗んでやった」
「女子は皆逃げるんじゃ」
「えっ?」
ゴルゴーンの石の秘密を知っているのは、マジックとドーラだけだった。
「もう遅い」
ゴルゴーンの石は蒼く光、美しく若い処女の女戦士たちを石に変えた。
石にされた戦士は、ローズ、マリー、ヴィーナ、ミスト、ギゾランの5人だ。
ルーナとレイラはすでに経験済みであるため石にはならなかった。
ルーナはリュウとはまだであるが、前バトルソルジャーであるクラハと交わっている。
レイラは10年前に5人の男たちに犯されている。
このため二人は若くて美しくても石になる事はなかった。
もちろん四天王の一人、カミューも魔王の夜伽の相手をしている。
そのため彼女も石にはならない。
「ハハハッ、予想より多く石にすることが出来たぜ。さて今からゲーム開始だ。ルールはマジックかドーラにでも聞きな」
「何てヤツじゃ」
「リュウ、貴様は母親を救えるか?救えねば母親の魂は消え、そしてお前自身もこの世から消える」
「(まさかこの中にリュウの母親がいるのか!?)」
と、ドーラが思った。
まさか自分の妻がローズで息子がリュウだとは思いもしないであろう。
戦士たちの中でリュウの母親と父親を知っているのは、リュウ自身とルーナ、ミスト、そしてリュウとルーナの娘ヴィーナだけだ。
「クソ~」
そう言って、リュウは刀を抜き、魔王に反撃を仕掛けた。
だが、今のリュウは怒りに任せての攻撃だ。
「そんなじゃ~、俺様は倒せないぜ」
そう言って、リュウの鳩尾にパンチを放った。
「ぐはっ……」
「リュウ君」
「もう、会うことはないだろう。リュウ・シー・ドーラ」
魔王はリュウのフルネームを言い残し、カミューとシンと共に去っていった。