第25章 ゴルゴーンの石
ドーラたちがサーヤ村に向かって、間もなくすると魔の四天王のシン・ターナが再びカーワ村に攻めてきた。
「お前がシン・ターナか?」
「(ドーラ?いや、この前より成長している。一体どうなっているんだ)」
「お前に勝ち目はない。おとなしく降伏しろ。さすれば命までは取らん」
「けっ、生憎俺は一度死んでいるんだぜ。魔王さまのためならこの命惜しくないわ」
「ふぁ~、よく寝た」
今まで寝ていたナイトが起きてきた。
「なんか強そうな人だけど、あの人も仲間なんですか?」
今まで寝ていたため、ナイトは状況が把握できていない。
「ナイト、あの人は魔王の手下よ」
と姉のミストに教えられた。
「ふ~ん。ねえ、寝起きの準備運動に、あの人と戦ってもいいですか?」
ナイトの問いにリュウはこう答えた。
「殺さない程度ならね」
「な、舐めているのか!貴様ら!俺の相手をドーラならまだしも、こんな小僧一人を相手にしろというのか!」
「戦えば、この子の強さが分かるぜ」
「くっ……いいだろうそいつから殺してやる」
シンは魔の四天王一の剣術使いだ。
そしてシンは剣を抜いた。
ナイトは柄に右手を添え、抜刀術に構えた。
「如何した小僧。何故抜かん?」
シンがそう言った瞬間、日本の近代武術の呼び名で云う縮地でシンの間合いに瞬時に入り、抜刀した。
彼の刀は刃引きの刀だが、彼の神速剣により、シンの肋骨が2、3本は折れた。
「ぐっ……何だ。この餓鬼……まったく動きが見えなかった」
だがシンも負けずと、ナイトの喉めがけて突きを放つが紙一重で避けた。
さっきまで甘えていた子供とは思えないほどの強さだ。
さらに彼はやや右上に構えた。
薩摩に伝わる「二の太刀要らず」と呼ばれる示現流の蜻蛉と呼ばれる構えだ。
これも土方が独学で学んだ物だが、彼が学んだ空手(唐手)には示現流の影響があり、空手が一撃必殺と呼ばれているのもそのためだ。
全身全霊の全てを初太刀にかけて、袈裟斬り……鋭い斬撃がシンの肩を直撃した。
「このような剣術……初めて味わう……」
「さすがだわ。ナイト君」
「あれが土方さんから学んだ剣術……」
「本当に強いんだ。あいつ」
レイラもその強さに驚いた。
だが、シンは死ぬまで戦う気だ。
その頃、魔王がラーベルを吸収し始めてから3時間近くが経った。
「ふう……」
「魔王さま」
魔王はラーベルを吸収した。
そのため魔王の姿が、さらに変化した。
「なるほど……俺様の最大の敵はゴン・ドーラの息子リュウ・シー・ドーラか」
「魔王さま」
「行くぞ!」
「え?そちらは白竜の森とは逆ですが」
「ただ、強力なパワーを得ても奴らには勝てんのが分かった。それよりもコイツを使って、奴らとゲームをしてやるのもまた一興か」
そう言って魔王があるものを取り出した。
それはゴルゴーンの石というものだった。
魔法の世界にはこんな伝説がある。
ゴルゴーンという美しき女神が、全ての美を自分の物としようとし、最終的には心と体は醜くなり、その時に流した涙で出来たと云われるのがこのゴルゴーンの石だ。
この石を若くて美人で処女の女に見せると蒼い光を放ち、それを浴びた女は石となると云われている。
そして、1週間以内にこの世界のどこかにあるぺルセの聖水をかけなければ、女は魂を抜かれ完全に石となると云われている。
「ククッ……これを使いローズとかいう女を石にし、そしてその女の魂がなくなった時、リュウ・シー・ドーラは存在そのものがなくなる。年老いたマジックやゴン・ドーラたちだけなら俺様とカミューでどうにかなる」
そう言って魔王はカミューと共にカーワ村に向かった。
これで完全にリュウの知る未来の歴史はなくなった。