第23章 戦士たちの希望
リュウは娘のヴィーナによって、ついに記憶を取り戻す事ができた。
だがその頃カーワ村では激しい戦いが繰り広げられていた。
ギゾランとレイラはすでに気を失い、ドーラとマジックがボロボロになりながらも戦っていた。
「ハアハア……さすがに年には勝てんのう」
弱りかけたマジックに、ハンジーが炎の魔法で攻撃しようとしていた。
だが、その隙をついて、ドーラが剣でハンジーを斬り殺した。
「すまん。ドーラ、助かったぜ」
「クソ!ハンジーが死んだか……しかしあの餓鬼、何者だ?まさか本物のドーラじゃ……」
「へっ、俺が本物のゴン・ドーラだったらどうする?」
「(ヤツが生きていれば60くらいのはず……だが、目の前のヤツはどう見ても50年前と変わらない姿……一体どうなっているんだ)」
「シン、とりあえず一旦、引くか」
「クソ!次は必ず貴様らを殺す」
二人は浮遊術で空に浮いた。
「に、逃がさん」
ドーラはそう言うと、両手から炎を出し、攻撃した。
炎は二人に直撃し、ゾイがそのまま落下した。
そして落下するゾイにドーラは一刀両断。
シンは逃がしたが、この戦いでゾイとハンジーを倒す事ができた。
「ハアハア……一人逃がしたか……」
「じゃが、今のうちに回復の術で、皆の怪我を治すぞ」
「はい……」
ドーラとマジックはギゾラン、レイラ、マリー、ローズを回復させた。
そしてしばらくしたら、リュウやルーナたちが戻ってきた。
「遅くなってすいません」
「ん?その3人は?」
「この二人がアールケイ姉弟」
ナイトは疲れたため、姉の背中で眠っていた。
「お、おい、本当にその子、強いのか?」
「はい、土方さんの弟子ですから」
「なんと!こやつ土方の弟子か」
「でも弱そうだぞ」
「ギゾラン、見た目で判断する物ではないぞ。ワシも噂でしかこの子の強さを知らぬが、リュウたちが連れてきたのだから、ワシはこの子が、本物の戦士じゃと信じる」
「はい、本物の戦士です。で、この子が……ぼ、僕のむ、む、娘です」
「娘!」
誰もが当然驚いた。
リュウは自分の記憶が戻った事、さらに未来から来た事などをマジックたちに説明した。
ただし、自分の父親がドーラで母親がローズという事は二人が結ばれるまで隠すことにした。
下手にしゃべって気をまずくし、二人が結婚しなかったら、自分やヴィーナが存在しなくなってしまうからだ。
また、他の戦士たちの未来についても語らなかった。
「なるほどのう……じゃが、これで希望が出てきたわい」
「はい……ですが未来は変わることもあります。全てはこれからの僕たちしだいです」
「うむ」
「でも魔王たちをどうやって倒したか知っているんだろう」
と、ギゾランが聞いてきた。
「知っていますが、必ずそうなるとは限らないんです。さっきも言ったように未来は変わることがあります。すでに土方さんの死に方が僕が聞いた死に方と違うんです」
「どう違うんだ?」
と、今度はレイラが聞いてきた。
「土方さんは魔王の炎に焼かれながらも、自らの愛刀で自害しました。でも、僕が未来で聞いたのは、右腕を失うまでは同じですが、その後魔王は、土方さんを吸収しようとしたので、自害されたと聞きました」
「どちらの土方も、魔王にやられるなら、自らの死を選んだのは同じなんだな」
「はい。あと、さっきの戦いでドーラ様が、ゾイとハンジーの二人を殺したようですが、僕が未来で聞いたのは、あの戦いではハンジーだけが死に、ゾイとシンは逃げられたと聞いています」
「じゃあ、リュウのいた未来では生きている人間も、死ぬ可能性があるわけだ」
と、ギゾランが聞いてきた。
「はい、ですから皆さんの未来を語らなかったのです」
「うむ、先の知った人生など面白くないからのう」
「ホント、そうです。僕やヴィーナは自分の人生をある程度知っていますが、未来は変わることがある……そう思うと、しっかり生きなければルーナさんと結婚できないかもしれませんからね」
その言葉にルーナはクスッと笑った。
「お父様、それだけは困りますからね。二人が結婚されなかったら私が生まれませんからね」
「は、はい……」
ヴィーナの言葉にリュウが小さくなっている姿を見て、一同は笑った。
未来は変わることもある。
もしかしたら魔王たちに敗北する可能性もある。
だが、希望を捨てなければ、必ず勝てると戦士たちは心に刻んだ。