第22章 リュウの運命
今から10年後にリュウはこの世に生を受けた。
父の名はゴン・ドーラ
母の名はローズ・ドーラ
そして彼の名と彼の運命は生まれる前から決まっていた。
彼の名前を付けたのは、彼が過去に行き、彼を育ててくれた老夫婦だ。
過去に行き、この名前を授けられるのも彼の運命なのだ。
「リュウくん、ドーラ様とローズさんの子が生まれたらしいわよ」
リュウとルーナは10年前に結婚し、そして娘ヴィーナを授かり、ドーラの家の近くで家を立て暮らしていた。
「おお~めでたい。すぐに祝いに行こう」
「私も行く」
「ヴィーナ、お前のお父さんが今日生まれたんだぞ」
「?」
「リュウ君!それはまだ内緒でしょ」
「あっ、そうだった」
ヴィーナはこの時10歳で、混乱を避けるため、彼女が15歳になるまで、真実を語らないようにしていた。
ドーラの自宅に来たリュウ一家
「きゃー、かわいい」
「本当可愛いですね(自分の赤子時代を見るなんて、なんか不思議な感じがする。しかも娘よりも後に生まれるなんて)」
「可愛いね、ヴィーナ」
「うん、伯父様、この子の名前は決まったんですか?」
本来ならばゴン・ドーラとヴィーナは祖父と孫という関係だが、真実を語るまでは、伯父と姪という関係となっていた。
「お前の父は魔王との戦いで一番活躍しておった。だからお前の父と同じ名をつけた」
「じゃあ、この子はお父様と同じリュウという名なんですね」
「そうだ。洗礼名にはお前の母と同じ、シーと付けた」
シー……この魔法世界では光の神を意味する言葉だ。
「すごい。私のお父様の名前とお母様の洗礼名を受け継いだなんて凄い」
「お前も魔法の修行をしっかり行い、父や母に負けぬ魔法使いになれ」
「はい」
それから6年後……
彼は魔王と戦うため過去に行く運命。
そのため、父ゴン・ドーラや後の妻ルーナ、さらには成長した自分や真実を知った娘のヴィーナ達から魔法や武術を学ばされていた。
彼の場合は10歳で暗闇に飲まれてしまうため、彼が真実を知るのは6歳の時だ。
それまで何で、高度な魔法や武術を学ばなければいけないのかという不服を感じていた。
「毎日、毎日、魔法や武術の修行ばかり……」
リュウは川辺で一人、石を投げながら愚痴をこぼしていた。
そんな姿を遠くからルーナが見守っていた。
成長したリュウの家
「今日も修行が終わった後、川辺で一人愚痴をこぼしていたわ。なんかかわいそう。まだ、6歳だから遊びたい年頃なのに」
「ホントかわいそうな俺……特にドーラ様、いや、親父の修行は厳しいからな~」
「でも、それがリュウ君の運命なのよね」
「生まれる前から決まっていたんですよ。でも、過去に行ったから、ルーナさんに出会えた」
彼女の姓は結婚後、ドーラとなっていたのだが、周りからはルーナと呼ばれ、夫のリュウもルーナさんと呼んでいた。
「そろそろ、子供時代の僕に真実を伝えてあげてください。ルーナさんから伝えてもらえれば、僕はやる気を出します」
「うまく伝えられるかしら」
「伝わります。本人が言うんですから大丈夫です」
そして次の日
リュウは今日の修行を終え、いつものように川辺にいた。
「はあ~ほかの子はいいな~」
と、愚痴をこぼしていると、ルーナが彼に声を掛けた。
「リュウくん」
「ルーナさん」
「修行辛い?」
「う、うん……」
「そうよね。まだ6歳だから遊びたい年頃よね」
「うん」
「でもあなたのお父様は10歳という年で魔王と戦ったんだから、凄いわよね」
「お父さんは、僕なら自分を超えれると言っているけど、僕には無理だよ」
「私はを超えられると信じているわ」
「……」
「だってリュウ君、私の旦那様の名を受け継いでいるんですもの」
「叔父さんの名前を付けてもらったのは嬉しいんですが、僕には叔父さんやお父さんみたいにはなれないですよ」
「なれるわよ。だって私の旦那様とリュウ君は同一人物だから」
「えっ?」
「信じられないかもしれないけど、これから話す事は事実よ」
ルーナはリュウに真実を語った。
「そんな……そんなの嘘だ」
6歳の少年でなくてもショックな事実だ。
「本当よ。お願いだから信じて」
「ルーナさん……」
リュウはショックも受けたが、喜びも感じた。
もし事実なら、自分の妻が綺麗で優しいルーナということになる。
この時からリュウはルーナに憧れていたのだ。
「ルーナさんが嘘をつくような人じゃないというのはよく知っています。だから信じます」
「リュウ君」
「それに僕の奥さんがルーナさんだと知って、すごく嬉しい」
「リュウ君……ありがとう」
そう言ってリュウの頬にキスをした。
リュウの顔は真っ赤になった。
「大きくなったら大人のキスを教えてあげる」
その言葉にリュウの胸は張り裂けそうだった
それからのリュウは今まで以上に修行に励んだ。
そして10歳を向かえてから、しばらくしたある日
ヴィーナと二人で、川辺で修行をしている時、まだ昼なのに、突然大きな暗闇が現れた。
いつ、どこで二人が暗闇に飲まれるのかリュウはルーナたちに語っていない。
知れば、ルーナの性格上、放ってはおけず、自分も闇に自ら飲まれると思ったからだ。
「す、吸い込まれる」
「でもこれが私たちの運命……」
「ルーナさん、過去で会いましょう」
そして二人は闇に飲み込まれ、過去へ来てしまうのであった。
「私が過去へたどり着いたのは、ほんの3日前です」
「そうだったの……でもリュウくん、自分の事を思い出せて良かったわね」
「はい」
「じゃあ、カーワ村へ戻りましょう」
「はい」
リュウたちが未来から来たという事は、魔王を倒した事は確実。
だが、未来は変わることもある。
全ては彼らの今後の戦いにかかっている。
あれ、未来のヴィーナは?と突っ込まれる前に、言い訳を書いておこう。
まあ、あれですよ。
まだ、話が途中だから未来のヴィーナは登場させなかったんです。
あとマジックたちもね。
もしかしたら魔王との戦いで戦死するかもしれないし……
まあ、どんな展開になるのか自分でも分からなくなってきました。