第21章 リュウの正体
まるで何かに取り付かれたかのように、荒んでしまったリュウ。
雷の魔法の次は氷の魔法で両足を凍らせ動けなくし、再び雷撃を放った。
「(こ、これで記憶が戻るなら、耐えなくては……)」
さらにナイトがやった一回転し、かかと落とし、そして片方の足で蹴り飛ばした。
バキッ!
と音と共にアルテミスは5メートルくらいふっ飛んだ。
「うっ……」
「すごい。リュウ兄ちゃんすごいよ」
「リュウくん……」
そして、リュウは刀を抜いた。
正眼に構え、やや右に刀を開き、刃を内側に向けた。
天然理心流の平晴眼の構えだ。
このままではリュウはアルテミスを殺してしまう。
そう思ったルーナは大声でリュウに叫んだ。
「リュウくん、やめて!それ以上やったらその人本当に死んじゃうわ」
その言葉にリュウの動きが止まった。
「ハアハア……ぼ、僕は一体……どうなってしまったんだ」
「うっ……ううっ……さすがだわ。リュウさん。これが貴方の力よ」
「アルテミス……お前一体」
「貴方が記憶を取り戻せば、魔王になんか負けないわ」
「お前、俺の記憶を取り戻そうとこんなことをしたのか?」
「アルテミスさん、早く手当てをしないと」
「ルーナさん、貴女は本当に優しい方ですね。回復の術なら出来るから大丈夫です」
「ホント。良かった」
その時リュウが人の名前を小声で呼んだ。
「ヴィーナ……」
「リュウくん?」
「その名前、私の名前です」
「えっ?リュウ君、この人を知っているの?」
「リュウ……その名前と僕の運命は生まれる前から決まっていた」
「リュウくん?」
「思い出した。僕の名はリュウ・シー・ドーラ」
「えっ?ドーラって、ドーラ様と同じ」
「ルーナさん、リュウさんの父親はゴン・ドーラ様です」
「ええ!」
「そして私はルーナさん、貴女とリュウさんの娘、ヴィーナ・スー・ドーラです」
「ええ!!」
「私とリュウさんは、20年後の未来から暗闇に飲み込まれてこの時代に来たのです」
「20年後の未来……でも、同じ時期に飲み込まれたのに、貴女のほうが年上に見えるわ」
「この時代へ来た僕は、10歳になったばかりの僕です」
さすがのルーナも混乱していた。
未来ではリュウが二人存在するのか?
次回でリュウの全てが明らかになる。