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第17章 土方総司の弟子

彼女が何故、日本刀を知っているのか。

ルーナは考えられるとしたら、土方総司がこの街に来たのではないかと思った。


「ミストさん、土方総司君をご存知ですね?」

刀を眺めていたミストは、ルーナの方を見てこう答えた。

「1年半くらい前になりますが、買い物の途中に5人の男性に犯させそうになった時、助けてくださったのが土方さんでした」

「そうですか」

「その後、半年くらいここで暮らし、弟に日本という国の武道、武術を教えていただきました」

「マジック様から聞きましたが、弟さんはかなり武術の達人らしいですね」

「まだまだ、未熟者です。私と弟とは10歳違いで、彼が幼き頃に両親は流行の病で亡くなりました。その後私は、母親代わりに弟を育てました。ですが5年前から私は錬金術に興味を持ち、弟を知人に預けてホーエンハイム様の下で二年くらい勉強させていただきました。そして弟を預けた知人も武術の達人でした。ですから私がいない間、その方からも2年間、弟は武術を学んでいます」

リュウとルーナは彼女の話から、まだ十代前半だろうけど、すごく強くてたくましく、体もかなり大きいと思った。


「ミストさん、弟さんに会わせていただけますか?」

「いいですよ。もうじき、買い物から帰ってくるはずですから」

ルーナたちはその間に、土方が戦死した事をミストに話、弟の力を貸してほしいと頼み込んだ。

「そうですか……あの土方さんが……」

「危険な戦いとは重々承知の上での頼みごとです」

と、リュウが言った。

話をしている間に、ミストは日本刀を直していた。

「えっ!もう直ったのですか!」

「はい」

「さすがホーエンハイム様のお弟子さん」

と、リュウは褒め言葉を言い、刀を眺めた。

「不思議だな~なんかどこかでこの刀をもった気がする」

「リュウくん……」


そして、しばらくすると玄関が開いた音がした。

「ただいま~」

「お帰り。ご苦労様」

ミストは玄関へ行き、弟を迎えた。

そしてルーナたちの前に、ミストの弟が顔を出した。

その姿は二人が想像していたのとはえらい違いで、まだ幼い顔をし、リュウのように女子おなごみたいな体つきをしていた。


「はじめまして、僕ナイトといいます」

「は、はじめまして……私はルーナで、この子はリュウくん」

「ナイト、この方があのバトルソルジャーだ」

「えっ!本当ですか!僕感激です」

さらにナイトは日本刀を見て、はしゃぎ出した。

「これ、日本刀だ。この世界にも在ったんですね」

「ナイト、それは土方さんの刀なのよ」

「えっ?」


ミストはルーナから聞いたことを弟のナイトに伝えた。


「そんな……あの土方さんが……僕が強くなったら戦ってくれると約束したのに」

さっきまではしゃいでいたのが、今度は泣き始めた。

「お姉ちゃ~ん」

姉の胸に抱かれ、泣く姿を見て、ルーナはこの子を危険な目に合わせたくないと思った。

「ミストさん、さっきの話……ナイト君の力も貸していただきたいという頼み事は忘れてください」

「ルーナさん」

「ナイト君を危険な目に合わせる事はできません。ですから、私たちはこのままマジック様たちのところへ戻ります」

「ルーナさん、弟はまだまだ未熟者ですが、連れて行けば必ずあなた方の力になります」

「ですが」

「ぼ、僕怖いよ」

「ナイト君だって怖がっているじゃないですか」

「ナイト、私も付いていくから大丈夫よ」

「本当!お姉ちゃんが一緒なら、僕どこでも行くよ」

そういうと彼は自分の部屋へ何かを取りに行った。


「ミストさん、いいのですか?」

「はい」


ナイトが部屋から戻ってきた。

そして彼が持ってきたのはなんと日本刀だ。


「見て見て、僕専用の日本刀だよ」

「私が賢者の石を使って、作った刀です。人が斬れないように刃引きをしてありますが」

「この刀とお姉ちゃんがいれば、僕は何も怖くないから、さあ、行こう」

まるでどこかに遊びに行くみたいにはしゃぐナイト。


「あ、あのねナイト君、これから行くところは遊びに行くんじゃないのよ」

「分かっていますよ。魔王を倒しに行くんでしょう」

「そうなんだけど……」

「ルーナさん、こうなったら、ナイト君の実力を見せていただきましょうよ」

「でも」

「僕の実力が見たいの?いいよ。ここじゃ狭いから、近くの公園で見せてあげる」


4人は近くにある公園へ向かった。

「いいのかな~」

いろんな意味で心配するルーナであった。


そして4人は公園にたどり着いた。


「じゃあ、僕の実力を見せてあげるから誰か相手をお願いしま~す」

「それじゃあ私が」

「わ~い、バトルソルジャーに相手してもらえるなんて嬉しいな~」

相変わらず子供らしくはしゃぐナイト。

「あっ、僕、魔法は何も出来ないから」

「そうなの。じゃあ私も魔法は使わないわ」

「本当ですか?使いたかったら使ってもいいからね」

「ナイト君の実力しだいかしら」

「ふ~ん、まあいいや。では始めましょうか」

そう言うと一瞬のうちに、ルーナの間合いに入った。

「えっ!?早い!」

そしてそのまま右上段回し蹴りを放った。

ルーナは何とか両腕でガードした。

ルーナとナイトの身長は150とちょっと、体重も40とちょっとであるため、二人のウェイトとリーチに差はない。

「さすがですね」

そう言うと自分の愛刀を抜いた。

「ルーナさんって、剣を持つとき、どうやって持って構えるのかな?」

「えっ?私は右利きだから右手で持って構えるわ」


彼女の剣術の構えは、我々の世界で言うフェンシングのような構えであるため、彼女は細身で先端の鋭く尖った刺突用のレイピアを用いる。


「レイピアですか。土方さんから教わったんですが、両刃は突きに適していて、片刃は、特に反りがついている刀は斬るのに適している。でも、この日本刀は片刃だが、斬撃にも突きにも適している。まあ、僕のは刃引きしてありますが」


そういうと、正眼に構え、やや右に刀を開き、刃を内側に向けた。

天然理心流の平晴眼の構えだ。


「あ、あれは、土方さんがレイラさんと戦ったときに見せた構え」


「土方さんのいた日本という国では、流派に異なるらしいんですが、基本は両手持ちらしいんですよね。その方が威力が倍増するみたいで」


ナイトはそう言って、突きを放った。


「早い!」


ルーナは紙一重で避けたが、そのまま横薙ぎへ変換した。

刃引きの刀といえども、当たればかなりのダメージを喰らう。

ルーナは後ろへ飛んで何とか避けたが、さらにそこからまた突きを放った。

ルーナの体制が崩れているため、交わすのは至難。

ナイトはわざと外し、うすら微笑んだ。


「どう?これで僕の実力が分かった?」

「えっ?ええ……」


「すごい、さすが土方さんの弟子だ」


「完全に私の負けね」

「でもお互い本気を出していない」

ナイトは微笑みながらそう答えた。


こうして土方総司の代わりに、ナイト・アールケイという強力な仲間が加わった。

だが、魔王も魔の四天王を蘇らせようとしている。

果たして魔の手から平和を取り戻せるのだろうか。






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