第15章 侍の魂
未来から来た男の影響で、ゴン・ドーラや土方総司、ジャッキー・リーがこの時代に来た事が分かった戦士たち。
さらにリュウは未来から来たのではないかと考えているマジック。
それが分かるのは、リュウが記憶を取り戻した時であろう。
魔王ビルダーや、逃走したクーロンの手下たちはリスポ隊という我々の世界で言う警察のような組織が捜索していた。
戦士たちはその間に、魔王ビルダーとの戦いに備えて、武器を揃えたり、技を磨いたりしていた。
「うおおおお!」
と、叫びながら手から大きな炎を出すリュウ。
彼はマジックやドーラたちの指導により、魔法を使いこなせるようになってきた。
「すごいわ。リュウくん。そんな大きな炎、私では出せないわ」
「うむ、炎の魔法は完璧じゃのう」
「はい、マジック様」
「ヤツは、記憶を無くしたと同時に、魔法のやり方も忘れたのであろうが、にしてもあれだけ大きな炎を出すにはかなりの修練が必要じゃ。おそらく、記憶を無くす前に、優れた魔法使いから術を学んだのであろう」
「カーメ先生でしょうか?」
と、ドーラがマジックに聞いた。
「それは分からん。じゃが、もしヤツが未来から来たのであるならば、すでに世を去っているカーメ先生から術を学ぶのは不可能じゃ」
「そうですね」
「まあ、まだヤツが、未来から来たかどうかは分からんがな」
「マジック様」
「なんじゃ、リュウ」
「今度は剣術を指導してください」
「ワシは、剣術は苦手じゃ。剣術ならルーナかレイラから教われ」
「はい!ではルーナさん、お願いします」
「いいわよ。じゃあ、剣を持って」
リュウは揃えた武器から自分に合う剣、又は刀を探した。
「う~ん、やっぱ土方さんみたいな片刃がいいかな」
と、いいながら、彼は片刃の刀を探した。
だが、なかなか彼の気に入る刀はなかった。
「やっぱ土方さんが持っていた日本刀という刀がいいんですが……何でもサムライとう戦士の魂らしいですから」
「あれはヤツの国の独特な刀じゃ。この世界にはないのう。刀匠人も似た物は作れても、同じ物は作れんじゃろう」
「土方さんの刀が折れていなければな~」
「レイラ」
「はい」
「折れた刀はお前が土方の形見として持っていたな」
「はい」
「すまないが、その刀をリュウに授けてはくれぬか?」
「それは構いませんが、折れた刀をどうするおつもりですか?」
「ワシがいた風魔の森をさらに東に行くと、リーゼンという大きな街がある」
「知っています」
「で、そこにミスト・アールケイという有名な女性錬金術師がおる」
「女性錬金術師ですか」
「うむ。女性でまだ若いが、あの今は亡きホーエンハイムの弟子じゃ」
我々の現実世界でも、同じ名で、ホムンクルスを作るのに成功したという伝説を持つルネサンス初期のスイスの錬金術師がいる。
現実世界のホーエンハイムは医者でもあり、古代ローマの高名な医者、ケルススを凌ぐという意味を込めてパラケルススと名乗っていた事で有名である。
そしてこの魔法世界においても、同じ名を持つホーエンハイムは、有名な錬金術師であった。
「その者に頼んで、折れた刀を修復してもらえ」
「では僕が行って頼んできます」
「うむ。逃走中のクーロンの手下やビルダーと遭遇せぬようにな」
「はい」
「私も着いていってよろしいでしょうか?」
と、ルーナが言った。
「いいじゃろう。恋人同士仲良く行くがよい」
と、その言葉にリュウとルーナは照れた。
「そういえば、アルケの弟は錬金術は出来ぬが、武術に優れていると聞く。今は一人でも仲間がほしいから、そのものが真の戦士なら、つれて着ておくれ」
「はい」
リュウとルーナはミストとその弟に会うべく、折れた土方の刀を持ってリーゼンの街へと向かった。
この時、魔王ビルダーがとんでもない事をやろうとしている事も知らずに……