第13章 ゴン・ドーラ
魔王と戦いから2日後の夜
カーワ村……
ルーナは眠れないため、リュウに告白された川辺にいた。
しばらくするとリュウもやってきた。
「ルーナさん」
「リュウくん、あなたも眠れないの?」
「いや、少し寝て目が覚めたモンですから……で、変な夢を見たんですよ」
「へ~、どんな夢だったの?」
「ええ~、二人の男女がいて、女の人は赤ん坊を抱いていたんですよ。それで確か、この子の名前はリュウ、この子の名前とこの子の運命は生まれる前から決まっていた。そんなような事を言っていたんですよ。で、その後に、もう少し年を取ったルーナさんが現れたんですよ。で、目が覚めたんですけどね。もしかしたら抱かれていた赤ん坊が僕なのかも」
「じゃあ、抱いていたのがお母さんかもね」
「でも、夢ですからね。あっ、あと、ルーナさんと一緒にもう一人、男性なのか女性なのかよく分からない人がいたかな~。で、二人の男女の名前を呼びながらルーナさんともう一人の男性らしき人が現れて、で、ルーナさんが赤ん坊を見たところで、目が覚めたんですよ」
「年を取った私と赤ん坊のリュウくんか……」
「夢ですからね。それに今以上にルーナさん綺麗でした」
その言葉にルーナはクスッと笑った。
「ねえ、リュウくん」
「はい」
「そろそろリュウくんへの気持ちに答えなければいけない……そう思ってずっとここで考えていたの」
「ルーナさん……」
「もし、リュウくんがドーラ様だったらどうしようとか、いろいろ考えて、そして、決心がついたわ」
この時リュウは、もし振られても、自分の気持ちを伝える事ができ、それに対してルーナが本気で考えてくれた。振られても悔いはない。そう自分に言い聞かせた。
「ルーナさんの答えを聞かせてください」
「リュウくんがドーラ様かどうかは、まだ分からないけど、もし、ドーラ様だったとしても、ドーラ様じゃないとしても、私を好きと言ってくれたのはリュウくんだから……優しくて、素直で、そんなリュウくんが私も好き」
「本当ですか?」
「うん……だから、魔王を倒す事ができたら、一緒に暮らそう」
「は、はい!」
そして、二人にとって、2度目のキスをしようとした。
だがその時、近くで誰かが助けを求めている声が聞こえた。
「リュウくん」
「はい、行きましょう」
そして二人は声が聞こえた場所へ行くと、二人の男性が、10歳くらいの女の子を襲おうとしていた。
しかも、女の子の近くには少年が倒れていた。
「ローズ、もう逃がさないぞ」
「誰か、助けて~!」
「やめなさい!」
「ん?誰だ?」
「逃走中の魔王かその手下かと思ったけど、違うみたいね。でも、大の大人が二人がかりで、子供たちを襲うなんて、許さないわよ」
「何~!ん?おい」
「ああ~コイツ、バトルソルジャー……」
「そうよ。それでもまだ、その子達を襲う気?」
「い、いや……行こうぜ」
「ああ」
「さすがルーナさん」
「もう大丈夫よ」
「怖かった……」
「でもお友達の方は心配ね」
「あっ、友達じゃないです」
「えっ?」
「ここで倒れていて……私、追われていたから、そのまま放って逃げようと思いましたが、でも怪我しているから……放っておけず、考えていたら、あいつらに見付って」
「何で追われていたの?」
「それは……」
「ルーナさん、この子顔を見てください」
「えっ?」
ルーナもリュウもその少年を見て驚いた。
「ソックリだ。7年くらい前の僕に……」
「どういうことかしら……とにかく、怪我をしているし、ドーラ様の家へ連れて行きましょう」
「はい」
「あなたもいらっしゃい」
「えっ?」
「何か問題を抱えているのでしょう」
「でも……」
「お譲さん、この人はバトルソルジャーと言って勇敢な戦士なんだよ」
「バトルソルジャー!聞いたことあります。あなたがそうでしたか」
リュウは自分ソックリの少年を抱えた。
「なんか自分を抱いているみたい」
そして、少年と女の子をドーラの家へ連れて行った。
「皆、起きて」
「どうした?奇襲か?」
と、レイラが慌てて起きた。
他の女性戦士たちも起き始めた。
「僕はマジック様を呼びに行ってきます」
「お願いね」
リュウは長老のところで休んでいるマジックを呼びに行った。
そして数十分後、リュウが、マジックを連れてきた。
「大体のことは来る途中に、リュウから聞いた」
そう言って、眠っている少年の近くによった。
「怪我をしていましたが、マリーちゃんが治してくれました」
「そうか」
「マジック様」
「この子は顔だけじゃなく、服装までも一緒じゃ」
「では」
「間違いなく、この子がドーラじゃ」
「それではリュウくんは?」
「う~む……分からん……それより、そこのお譲ちゃんが、お前たちが助けた子じゃな」
「はい」
「お譲ちゃん、名前は?」
「ローズ・スレイヴです。周りからはローズって呼ばれています」
「ではローズ、何故追われておったんじゃ?」
「私、去年、奴隷として売られたんです」
「そうか」
「ご主人様からこき使われて、暴力まで振るわれました。毎日毎日、怖くて……」
「それで逃げ出した。まあ、追っていたのは、金で雇われたシタッパじゃろう」
「はい」
「これで二人の正体は分かった。じゃが、おかげでリュウ事が分からなくなってしまったのう」
「分かっていたんです……僕みたいな男がドーラ様な訳がないと……」
「リュウくん……」
ルーナはそっとリュウの手を握った。
そして、少年が目を覚ました。
「うっ……はっ!ここは?それに誰だお前たちは?」
「信じられない話かも知れぬが、信じてもらわねばならん」
「はあ?」
「まず確認のために聞いておこう。おぬしの名は?」
「得体の知れぬ者達に名乗る気はない」
「そういうと思うた」
「お前たちは何者だ?魔王の手下か?」
「いや、わしらはお前の仲間じゃ。ゴン・ドーラ」
「何故俺の名を?やはり魔王の手下か?」
「ワシはお前の兄弟子マジックじゃ」
「ふざける!」
「ワシらはオウマの洞窟にビルダーを封印した。そして、一番最初に外に出たお前は暗闇に飲み込まれた」
「……」
「お前はそのために、過去から未来へ来てしもうたのじゃ」
「未来?」
「そうじゃ。ここは魔王を封印してから50年後の世界じゃ」
「嘘だ!」
「嘘ではない。ワシはお前の事なら何でも知っておる」
「何でもか?なら、俺の生まれはどこか知っているか?」
「ああ、お前の生まれはカーワ村、母はソセ・ドーラという娼婦で、そのときのお客との間にお前は生まれた」
「う~ん……なら、俺の師匠の名は?」
「お前の師匠の名は、カーメ・ローシー一番弟子は魔王となったクーマ・ビルダー、二番弟子がこのワシ、マジック・グレー、三番弟子はアックス・ジャンパー、四番弟子はJ・O、五番弟子はジンヤー、そして、ワシらがこの村カーワ村に着いたとき、母を亡くしたお前をカーメ先生は弟子にした。他に聞きたい事は?」
「もういい……信じられんが事実のようだな」
「ああ、そして今、愚かな人間たちによって魔王を復活させてしまった」
「スイマセン。その首謀者は私の弟です」
「マリーちゃんは悪くないわ」
「ルーナさん……」
「で、魔王は今どこに?」
「ワシらの仲間の一人、土方総司という男によって重傷を負った。じゃが、お前も知ってのとおり、ヤツも回復系の術が使える。今はおそらくワシらに気づかれぬようパワーを押さえ、何か作でも考えておるとワシらは読んでいる」
「もう一度仲間の一人の名を聞かせてくれ」
「土方総司」
「変わった名前だ」
「ヤツもな、闇に飲み込まれ、別の世界から来た男じゃ」
「別の世界!」
「そこでは魔法の変わりに科学という物が発達した世界らしい」
「で、その男は?」
「魔王との戦いで、自らの手で腹を切って自害した」
「なっ……」
「今度こそ魔王との決着をつけねばならん。そのためにお前の力を貸してほしい。頼む」
「アンタが、兄弟子のマジックさんなら、僕がどう答えるか分かっているでしょう」
「お前なら、必ず力を貸してやると言ってくれる」
「その通りです」
こうして本物ゴン・ドーラが仲間に加わった。
だがそのために、リュウの素性がますます分からなくなってしまった。