表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/42

第12章 武士道とは死ぬ事と見つけたり

夜キャーロットを弔い、そして朝日が昇った。

戦士たちはドーラの家で、今後について話し合っていた。


「誰も何も言わないが、何か意見はないのか?」

そういいながら、マジックは牛乳のような物を飲んだ。

「魔王ビルダーを見て、お主たち恐怖を感じたか?なら、出て行ってもいいぞ。出て行ったからって、臆病者とは誰も思わん。相手が悪すぎただけだからな」

「お、俺、こんなに恐怖を感じたのは初めてだ。まさかあんな化け物とは……」

土方が震えながらそう言った。

「(あの総司君が怯えているなんて)総司君、大丈夫?」

「情けね~、今まで大口叩いといて……本当の俺は臆病者だ。昔はいじめられていたし、リュウやキャーロットには言ったが、自分のいた世界で好きだった人に振られるのが怖くて、告白できなかったし……やっぱり臆病者なんだ」

「そんなことないわ。むしろ今までよく戦ってくれたわ」

「ね~さん」

「元々総司君はこの世界の住人じゃないのに」

「ルーナね~さん……」

「総司君だけじゃなく、他の皆も、無理して私に付き合わなくてもいいからね」

その言葉に誰も反応しなかった。

「臆病者は俺だけか……」

「土方、お前は私が今まで戦った中でもかなり強い。ここを出て行っても誰にも臆病者なんていわせないから」

「レイラ……」

「土方さんのおかげで、告白する勇気を貰いました。その事は一生忘れません」

「リュウ……」

「弟のせいで土方さんにまで迷惑をかけてスイマセン」

「マリー……お前は悪くないからね」

「私は特に言う事はない」

「ギゾラン……」

「お前はまだ若い。これからじゃ」

「じーさん……いや、マジック様」

「いつか、元の世界へ戻れるといいね」

「ありがとう。ね~さん、皆……」

そう言って土方はドーラの家を出た。

「さて、これからどうするか話し合いましょう」

「あっ、アイツにやっぱ一言言いたかった」

「今ならまだ近くにいるはずだから、言ってきて」

「すまん、すぐ戻る」

ギゾランは土方の後を追いかけた。

そして村の外れで土方に追いついた。


「ギゾラン、お前まで出てきたのか?」

「フン……なかなか役者だな~お前」

「何のことだ?」

「お前、魔王のとこに行く気だろう」

「まさか~」

「お前はキャーロットと同じだ。強いやつと戦いたいだけの男……でも心の優しい男。だから、仲間を犠牲にしたくないためにあんな芝居をした。そうだろう」

「確かに、強いやつと戦いたいのは、キャーロットと同じだ。だが、キャーロットと違うとこもある。魔王と戦うのは仲間のためではなく己のため……俺の中の修羅の血が騒ぐんだ。それと、アイツは人が殺せんが、俺は裏のバトルカジノで3人殺した事がある」

「そうか……で、勝てるのか?」

「さあな。だが、心の底から恐怖を感じたのは本当だ。この事はね~さんたちには言うなよ。魔王あいつは俺の獲物だから」

土方のその言葉にギゾランは恐れを感じた。

「あっ、そうだ。もし、俺が死んだら、短期間だったが皆と過した時間すごく楽しかった。ありがとう。そう伝えてくれ」

「土方……」

「じゃあ」

「土方!その言葉は私は伝えない。だから、生きて帰って自分で伝えろ」

「そうか……そうだな……じゃあな。あっ、そうそう、やつらのアジトはどこだ?」

「ここから北西の方角にあるワールの森にやつらのアジトがある」

「ワールの森か遠いな~、途中でウーマを手に入れるか」


ウーマとは、我々世界の馬のような生き物だが、頭に一本角があるから馬というより伝説の生き物ユニコーンに近い。

また、このウーマはかなり高価な生き物で、安くても日本円で50万円はする。


「マーネはあるのか?」

「ああ、バトルカジノでかなり稼いだから」

そう言って魔王のいるアジトを目指し、歩き始めた。


その頃クーロン……いや、魔王のアジトでは……


「貴様ら、何を怯えておる?」

手下たちは魔王に怯えていた。

「それにしても、ここは俺様に相応しくない場所だ。よし、明日にでもファンジーの街にあるファンジー城を攻めるか」

魔王はそう言いながら不気味に笑った。

そして夕方……


魔王が何かに気づいた。

そして外いる門番たちが騒ぎ始めた。


「土方総司参上!」

そう言いながら、途中で手に入れたウーマ乗って、土方は攻め込んだ。

「雑魚に用無い。魔王を出せ!」


魔王のいる部屋へ一人の手下が入室してきた。

「も、申し上げます。し、侵入者が一人……」

「バトルソルジャーか!いや、このパワーはヤツじゃない」

そう言って魔王は外に出た。


「お前か」

「よう、喧嘩売りに来たぜ」

そういうとウーマから降りた。


「ギゾランを倒したのか?」

「アイツはキャーロットの命と引き換えに元に戻った」

「そうか……使えない女だ。それより他の連中はどうした?臆して来れぬか?」

「お前程度なら俺一人で十分だ」

「ハハハッ!面白いヤツだ。どうだ、あの女の変わりに俺様の手下にならんか?」

「嫌だ」

「そうか。残念だ」

「んなことより、一対一タイマンで勝負せい!」

「たいまん?面白い小僧だ」

「お前の顔ほどじゃないさ」

「頭に乗るな!」

土方はついに魔王を怒らせた。

「(怖え~、正直逃げ出したいくらいだ。だが、それと同時に修羅の血が騒ぐ)」

そして二人戦いが始まった。


その頃ルーナたちは、夜の奇襲は手下たちが警戒していると読み、早朝なら、気を抜く者も出てくると判断し、そのために体を休めていた。

「ルーナ、どうした?怖いのならお前も出て行ったほうがいい」

とレイラがルーナに言った。

「いや、そうじゃいいわ。ただ、嫌な予感がするだけ」

「ルーナさん、大丈夫ですよ」

「リュウくん……」

「では、僕とマジック様は長老様の家で休みますから」

だが、マジックの様子がおかしい。

「マジック様?」

「二つの強いパワーが激しくぶつかり合っておる」

「えっ!」

「まさか、あの少年が……」

「総司くん!」

彼の名を呼び、ルーナは魔王のところへ行こうとした。

「やめておけ」

「ギゾランさん、何故ですか?」

「私たちが加勢に行ってもアイツは喜ばない。いや……恨まれるだろう」

「でも……」

「本当は私、アイツが魔王のところへ行く事を知っていたわ」

「なっ……」

「アイツはこう言っていた。魔王と戦うのは仲間のためではなく己のため……俺の中の修羅の血が騒ぐんだ。それと、キャーロットは人が殺せんが、俺は裏のバトルカジノで3人殺した事がある……その言葉を聞いたとき、私はアイツに恐れを感じた」

「そうだったの……でも、私は行くわ。たとえ恨まれても、総司君は大切な仲間だから」

「そうかい。好きにしな」

「マジック様、この村にウーマはいますか?」

「確か、長老が二頭もっていたはず……行って、借りてきてやろう」

「スイマセン」

「私も行く」

「レイラさん」

「僕も」

「私も」

「リュウくん、マリーちゃん」


しばらくしてマジックが戻ってきた。

「外に二頭用意した」

「ありがとうございます」


ウーマは二頭、しかもリュウとマリーはウーマに乗れない。

そのため、レイラの前にマリーを、ルーナの前にリュウを乗せて、魔王のアジトへ向かった。

「ワシも行くが、お主はどうする?」

「……私も行くわ」

二人は浮遊術でアジトへと向かった。


その頃土方は、魔王との戦いでボロボロであった。

また、魔王自身も、土方によってボロボロであった。


「ハアハア……まさか、こんな小僧一人にここまでやられるとは……貴様何者だ?」

「ハアハア……土方総司。武道家だ」

そういうと天然理心流の「平晴眼」に構え、三段突きをしようとした。

だが、一発目で受け止められた。

「白刃取りか!」

「ホント、珍しい剣だな」

魔王はそう言って、刀を折った。

パリーンと音がした。

だが、土方は刀を離し、魔王の左目を右指で潰した。

「ぐっ……小僧」

魔王の左目から血が流れ落ちる。

魔王は少し距離を置き

「おい、貴様らの剣をよこせ」

手下にそう命じた。

そして手下の一人が、恐る恐る魔王に剣を渡した。

「死ね!」

土方は左に避けようとした。

だが完全に交わすことは出来ず、右腕を斬り落された。

「うっ……ぐわ~」

「ハアハア……そろそろ終わりにしてやる」

そういうと魔王は手から大きな炎を出した。

「生きながら焼かれるのは、かなり苦痛だぞ」

そして魔王の炎が土方を包んだ。

「ぐわ~」

「ハアハア、苦しみながら死んでいけ」

「ぶ、武士道とは死ぬ事と見つけたり……貴様に殺されるくらいなら、自らの死を選ぶわ」

そういうと左手で折れた刀の剣先を拾い、そして自らの腹を切り裂いた。


その時、ルーナたちが到着した。

「総司君!」

ルーナが大声で叫んだ。

宙に浮いているマジックが風の魔法で炎を消し飛ばした。

そしてマジックとギゾランは地上へ下りた。


「マリーちゃん」

「はい」

「無駄だ。そいつは自らの手で死んだ」

そう言った魔王をルーナは睨みつけた。

「貴様ら、バトルソルジャーたちの相手をしろ!」

「は、はい」

「この魔王様が逃げることになるとは……この屈辱必ず晴らしてやる」

そう言って魔王は、この混乱に乗じて逃げ去ろうとした。

「ま、待て~!」

ルーナが大声で叫んだ。

だが、いくら手下とはいえ、100人以上はいる。相手にするには数が多すぎた。

結局、手下たちの相手をしている間に魔王を逃がしてしまった。


この戦いで死者は土方総司1人

重傷者は魔王と手下82人

軽傷者は手下47人

また、戦士たちも軽傷を負った。

その後、手下たちは、我々の世界でいう警察のような組織に捕縛された。

だが、手下たちの中に、軽傷で済んだ者たち47人のうち10人が逃走した。


そして土方の墓はキャーロットの隣に作られた。

その墓の前にレイラが立っていた。

「好きな女に振られるのが怖くて告白できなかった……そう言ったよな。あの後、リュウから詳しく聞いたよ。後悔しているんだってな。フッ……それは私も同じだ。土方、私はお前が好きだった。告白しなかった事に私も後悔している……あの世じゃその美奈子って子に告白しろよ。あと、キャーロットやジャッキー・リーと楽しく喧嘩しな。そして、マーナをよろしく頼むぞ」


レイラは手を合わせ、涙を流した。

すると、晴天だった空が暗くなり、やがて大雨が降り始めた。

まるで天が、彼女に同情してるかのようだった。

レイラはそれから2時間、墓前から動かなかった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ