第11章 魔王復活!そして、さらば勇敢な戦士よ
地に突き刺さっている剣を、クーロンはついに抜いた。
すると地面が光、そして魔王が復活した。
だが、その姿は50年も閉じ込められていたため、干からびた姿をしていた。
「俺様を復活させたのはお前か?」
「はい、魔王様。私の名はクーロン、この女は奴隷のギゾランです」
「俺様はどれくらいの間、閉じ込められていたんだ?」
「はい、50年です」
「そうか。そんなにも経つのか……して、俺様を何故復活させたのだ?」
「はい、私も平和が嫌いで、この時代を魔王様と共にメチャメチャにしたいためです」
「ほう、そうか」
魔王は不気味に笑い、クーロンの頭を掴んだ。
「な、何を?」
「この時代を俺様と共にメチャメチャにしたいのだろう。なら、お前の若さ、能力、知識、記憶を吸収させてもらう」
そういうと魔王の手が光った。
「ぐわ~」
大声でクーロンが叫んだ。
「クーロン様」
ギゾランが魔王に攻撃をしようとした。
だが、もう片方の手から繰り出された爆風でギゾランは吹っ飛び、壁に叩きつけられた。
「こいつの全てを吸収したら、今度は俺の奴隷にしてやるから、おとなしく寝ていろ」
「ぐわ~クソ!」
クーロンは魔王を殴り始めた。
「いいぞ!もっと抵抗してみろ」
「クソ!」
「どうした?もうお終いか?」
それから3時間後……
「ふう……ずいぶん時間がかかってしまったが、クーロンというヤツの全てを吸収してやったぞ」
干からびていた魔王の姿は、50年前の若き頃の姿を取り戻した。
ただ、クーロンを吸収したため、髪が金色になり、目が赤くなった。
「コイツの記憶によれば、今活躍しているのはバトルソルジャーという女か……おい女、起きろ!」
「うっ……」
「我が名はクーマ・ビルダー……これからはこのビルダーの奴隷になるんだ」
「ウッ……」
「返事はどうした」
「かしこまりました。ビルダー様」
「よし……さて、どこにバトルソルジャーとその仲間がいるかな」
魔王は集中し、そして強いパワーを感じた。
「ここから、北のほうか……行くぞギゾラン」
「はい」
二人は宙に浮き、カーワ村へと向かった。
カーワ村……
「う~む、完全にビルダーが復活しおった」
「すげ~、パワーだな~土方」
「ああ、しかもここに向かってきていやがる」
「長老、村人を家の中へ」
「はいマジック様」
「あっ、このドラコを頼む」
「はい」
ルーナたち6人と、マジックは、さっきまでリュウたちがいた川辺で待機した。
そして、空を見ると魔王とギゾランの姿が見えた。
二人はゆっくり地面に下りた。
「コイツが魔王」
「久しぶりじゃな。ビルダー」
「ほう、マジックか。他の4人はどうした?」
「さあのう」
「クーロンはどこ?」
「記憶によればお前がクーロンの姉マリーか」
「そうよ」
「お前の弟なら、吸収してやった」
「えっ!」
「なるほどのう。それで50年前と変わらぬ姿をしておるのか。まあ、違うところは髪の色と目の色くらい」
「クーロンの記憶によれば、お前がバトルソルジャーだな。それから、その隣にいるのがこの女と、そして、俺様やマジックと同じくカーメから魔法を学んだキャーロットだろう」
「ああ」
「その後ろがカムイとかいう賞金稼ぎか」
「あいにく、私は賞金稼ぎはやめたんだ」
「フン……で、変わった剣を差しているのが土方総司か。名前も変わっておるな」
「俺はこの名が気に入っているんだが」
「そして、残りの一人が、ん?(まさかゴン・ドーラ……いや、そんなはずはない。ヤツが生きていたとしたら、もう60くらいのはず。だがクーロンの記憶では一番警戒しておる人物……)小僧名は?」
「リュウだ」
「(やはり別人か……クーロンは警戒しておったようだが、この中じゃそれでほど強いパワーを感じん……まあいいか)おい、貴様ら、今回俺様は挨拶に来ただけだ。ギゾラン相手をしてやれ」
「はい」
「俺様はクーロンがいたアジトにいる。その女に勝ち、俺様と戦う勇気のある者だけかかって来い」
そう言って魔王ビルダーは飛び去っていった。
この時、土方やキャーロットでさえ、恐怖を感じ、追うことが出来なかったのだ。
「ば、化け物が」
土方がそう呟いた。
「それより今はあの女が相手だったな」
「土方、アイツはオイラが戦う」
「キャーロット……いいだろう」
「皆も手を出すなよ」
「キャーロット、お前に私が倒せるかな?」
「さあな~」
そう言ってキャーロットは構えた。
「いいだろう。まずお前から殺してやろう」
そう言うと、手から電撃を出した。
普段なら紙一重で避けるはずなのだが、キャーロットは動こうとしなかった。
バチバチ!
という音が鳴り響いた。
「ぐっ」
「キャーロットくん」
「アイツ、まさか……」
「何なの総司君……なんでキャーロット君は避けなかったの?」
「アイツ……死ぬ気だ」
「えっ!」
他の戦士たちは驚いた。
「何で?」
「そこまでは分からん」
「キャーロット、何故攻撃しない」
「オイラ、おめ~のことが好きだ」
「な、何を……」
「オイラの命でおめ~が元に戻るなら、オイラの命くれてやる」
「ふざけるな~!」
そう言ってギゾランは間合いに入り、キャーロット殴り始めた。
バキッ!
ボキッ!
「そんなんじゃオイラは死なね~ぞ」
「クソ!」
ギゾランは距離を置き、雷雲を呼んだ。
「止めなきゃ」
「ね~さん、行くな!」
「総司君、何で……ハッ!」
土方は拳を強く握りそこから血が流れ落ちた。
「総司君……」
「やれよ。ギゾラン。オイラはおめ~に自分の気持ちを伝える事が出来た。もう悔いはない」
「そうかい」
「リー先生、カーメ先生、今参ります」
「死ね!キャーロット」
「ギゾラン、幸せになれよ……皆さらばだ~!」
そして、ドーンと雷鳴が鳴り響いた。
「キャーロット君……マリーちゃん手当てを」
「はい」
「無駄だ。ヤツはもうこの世にはいない」
「総司君……」
「ハアハア……はっ!キャーロット……キャーロット!」
ギゾランが大声で叫んだ。
「私は何てことを……」
彼女の目から涙が流れた。
そんな彼女の近くへ、総司が近づいた。
「私を殺して」
「アイツは幸せ者だ。愛する人のために散って逝ったのだから」
「でも……」
「キャーロット、お前の命と引き換えにギゾランは元に戻ったぞ」
「キャーロット……お前の気持ち私には伝わったぞ。でも……もうあなたはいない……」
「キャーロットの分まで生きろ。ギゾラン」
「土方」
この日、勇敢な戦士が、花弁のように散っていった。
「俺もお前のような死に方が出来るかな……」
土方が密かに呟いた。
その後ルーナたち6人と、マジック、ギゾランによって、勇敢な戦士は弔われた。