第9章 伝説の戦士
ルーナたちはマジックのいる風魔の森を目指し歩き続けた。
そして……
「この森が風魔の森……」
「風魔の森って名前のわりには、風一つない静かな森だな」
と、土方が言った瞬間、ものすごい風が吹き荒れた。
「何だよ。急に……ん!誰か居やがる」
「ホホホッ……この森に何か用か?」
そう言って現れたのはヨボヨボの老人だった。
「あ、あなたが、マジック様ですね」
「いかにも」
「わ、私は……す、凄い風……私はルーナといいます」
「ワシには心地よい風じゃがな」
そう言って、マジックが手を叩くと風は止んだ。
「じーさん、アンタの魔法か?」
「総司くん、言葉に気をつけて」
「よいよい。ワシは風を操る魔法が得意でのう。この森は元々1年中風が吹いておってな。ワシには居心地がいいから、20年前からここで生活をしておる。ここに誰か来ると風が教えてくれたもんじゃから、風を止めて待っておった」
「そうでしたか」
「ルーナといったな」
「はい」
「噂は聞いておる。バトル何とかと名乗り正義のために戦っておるのじゃろう」
「はい」
「して、その正義の戦士が何用じゃ?」
「実は」
「ん?そこの女子みたいな少年……いや、そんなはずは……」
「僕が何か?」
「似ておるんじゃ。ワシらと共に戦った。ゴン・ドーラという少年に……」
「はあ……」
「50年前、当時ワシは30歳で他の3人、J・O、ジンヤー、アックス・ジャンパーの3人は20代半ば……そんな中唯一、ドーラは10歳という年齢でワシらと共に戦っておった。ワシらは皆、カーメ先生の弟子じゃった」
「カーメ先生!オイラもカーメ先生の弟子だ」
「ほう……おぬしもか。だが、先生は5年前に亡くなったと聞く。ならばおぬしが先生の最後の弟子か」
「あと、ギゾランって女もいる」
「そうか……実は魔王と呼ばれておる本名クーマ・ビルダーもカーメ先生の弟子、しかも1番弟子じゃ」
「何~、じゃあ、オイラと魔王も兄弟弟子かよ」
「そうじゃ。ちなみにワシが2番弟子じゃ。じゃが他の4人が弟子になる前に、アヤツは己の力を己の欲のために使っていた事から破門されたが……その後、4人も弟子入りし、そしてビルダーとの戦いが始まった。50年前、先生はすでに200歳を超えるお体ゆえ、魔王との戦いには参加出来んかったが、ワシら5人にそれぞれ合った魔法を教えてくださった。ワシは、風を操る魔法を、J・Oには氷を操る魔法を、ジンヤーには雷、アックスとドーラには炎の魔法をそれぞれ教えていただいた。まあ、他にも浮遊術や回復系の魔法なども教わったのう。そして、オウマの洞窟にビルダーを追い込み、先生から教わった封印の術でヤツをワシの剣に封印したんじゃ」
「初めて知りました」
「僕も」
「私も」
「私もだ」
「オイラもだ」
「俺は当然知らないから」
「にしても、そこの少年、ドーラに瓜二つ」
「もしかしたらリュウくんは、ドーラ様じゃないでしょうか?」
「それはない。50年も時が経っているんじゃ。生きているなら60歳になっとる。それにアイツは魔王を封印した後、暗闇に飲み込まれたんじゃ」
「暗闇!じーさん、俺も暗闇に飲み込まれて、別の世界からこの魔法世界へ来たんだが」
「なんじゃと!」
「もしかしたら、ドーラって人は暗闇に飲み込まれて、俺とは違い、時空に流されて過去から、この時代にやってきたのかも」
「信じられん。が、世の中には信じられんことがたくさんある」
「僕はそうすると未来に来てしまったのでしょうか?」
「そうだよ。俺の世界じゃタイムトラベルという。お前、山で倒れていたんだろう。で、それ以前の記憶は無い。きっと頭でも強く打ったのかも」
「でも僕は……」
「俺だって、この世界に来た時は信じられなかった。神隠しという言葉が俺の国にはあるんだが、まさか自分がそんな不思議な体験をするとは思いもしなかった」
「う~む、ドーラの故郷、カーワ村に行けば少しは思い出すかも」
「カーワ村……そこが僕の故郷!?」
「しかし、マジック様」
「なんじゃ?」
ルーナはマジックにクーロンたちが魔王を復活させようとしている事を話した。
「愚かな……なら、復活させてやれ」
「な、何てことを」
「今回、そいつらを阻止出来ても、また同じことをする者が現れるかもしれん。ならば、復活させて、お前たちで魔王の息の根を止めたほうがいいとワシは思うが」
「ですが」
「お前さんらなら、出来る気がする。ワシはもう、年だから戦いに参加しても足手まといになるだけ。これからはお前たち若者の時代じゃ」
「はあ」
「魔王の封印されている場所はここから南の方角、じゃが、カーワ村はここから北にある。まあ、どっちを選ぶかはワシがすることではない」
「ねーさん」
「マジック様の言うとおりにして、復活したら私たちで退治しましょう」
「よし、カーワ村までワシが案内しよう」
一行はドーラの故郷、カーワ村に向かうことにした。
果たしてリュウは伝説の戦士の一人、ドーラなのだろうか?