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エピソード1-2

 おさななじみであり、妻のさよこは昔から色白で華奢な体つきをした、いわゆる男の庇護欲をかきたてるような存在だった。


 そんなさよこと同級生の俺のことを、さよこはいつもたよってきては、定食屋で遊んでいた。


 アニキの譲二(じょうじ)は名前とは正反対で、なにひとつ他人にも身内にも譲らない。


 なにしろじいちゃんのよくない女遊びの性質を色濃く受け継いでいるため、家族間でのトラブルも多い。


 アニキのせいで、さよこの性格は歪んでしまった。


 今では息子の父親がアニキなんじゃないかと疑うほどだ。


 せっかく初恋の人と結婚できたのに、口を開けばアニキのことばかり。


 俺はだんだんさよこに飽きてきた。


 でも、ちょっと待て。俺がさよこに飽きたのではなく、さよこが俺からアニキに乗り換えるための策略だとしたらどうだ?


 まんまとその策にハマったら、俺が馬鹿みたいじゃないか。だったらいっそうのこと……。


 いや待て。ここは我慢のしどころだ。


 女なんてほかにもいるわけだし、さよこにこだわって事件を起こすなんて馬鹿げてる。


 だが、アニキの方はどうだ?


 いい年をしていながら、いまだに家庭を持たずに派手に遊び暮らしているという。


 実家には金の無心以外で連絡を取ることはない。


 つい先日も、知り合いのコネで入社した会社にリストラされたらしい。その理由というのがまた馬鹿げていて、上司の妻と一線を越えたという。


 あたらしい仕事が見つかるまで、仕送りしてくれないか? という逆に無心されて、なんとも言えない気分になった。


 額から汗がにじみ出る。


 この家を相続した理由は、親父がリノベーションする代金を工面してくれると申し出てくれたからだ。そうでなければ税金すらまかないきれない。


 そうして不動産屋と相談し、賃貸物件として契約するのはどうかと話がまとまったところだ。


 まさか、こんなに早く見学者が来るとは思わなかった。


 それにしても……。


「暑くないですか? ペットボトルのお茶でよければありますけど?」


 いつまでも古井戸から目を離さない女に、どこか不気味な意図を感じて震え上がる。


 その顔がふっと、なにかをふっきったように俺の方に向いた。


「せっかくですから、いただきますわ」


 半袖でも暑いくらいなのに、この女はなぜこんなに涼しい顔をしていられるのだろうと、おのれの喉仏を伝う汗を手の甲でぬぐった。


     つづく

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