第72話 ボルダリング 負けず嫌い
【ボルダリング】
ピッケルなどを使わずに身体一つで壁を登るスポーツ。
下にはマットが敷いてあり落ちても安心?
壁にはカラフルな突起があり、順番通りに登ったりするらしいけど僕はそこまで詳しく無い。
そして僕が今アクティベートしたボルダリング施設は四段階あり、普通、上級、地獄級、超地獄級と良からぬ名前の壁が二つほどある。
そしてオーガの家族とレイさん、僕は超地獄級の壁を見上げていた。
「ショウさん、他の三つはなんとなく分かるのだが、この壁を登るってどういう事だ?どこを掴めば良いのだこれは…」
「あの壁の小石みたいな突起ですかね…多分…」
よく見れば小さな凹みや小石程度の突起がある。吸盤でも無いと無理じゃない?
「ここを登るスポーツですか?確かに難しそうですが…」
「これは腕が鳴りますね、崖を登るなんて子供の頃以来でしょうか」
腕鳴ります?上から落ちたらすごい音して鳴りそうですけど。
「私には無理かも!上級で遊んでくる!」
チヒロちゃんは上級のコースに走って行き、登り始めるが…中盤あたりで足を踏み外し見事に落っこちてきた。
「これ面白いかも!指先だけで石掴むから結構難しいみたい!」
上級も相当難しそう。20メートルほどで突起の幅がまず広い、チヒロちゃんの身長では届かない。
小さな足場からジャンプするしか無いのだが足先ほどしかない突起からジャンプは難しそうだ。
そして傾斜もある。うーん…これは勝負どころでは無いんじゃ…
そして地獄級と超地獄級のこの高さ、みんなで見上げる壁は遥かに高く、100メートルはあるか?20階建てのビルくらい?イカれてやがる。
地獄級は所々に卵サイズの突起があるが幅が広い、腕の力で飛べる距離?5メートルは離れてない?
「チヒロ、ちょっと俺が登ってみよう。」
ゴウケツさん?無理だよアナタ大きすぎるよ。
しかしゴウケツさんは上級の突起を掴みスルスルと登っていく。
指先の力で?あの巨体が?僕は今何を見ているんだろうか。
見事に呆気なくクリアして見せた。
「これは面白い!何とも言えぬ達成感があるな!」
「お父さんすごーい!流石だね!」
ゴウケツさん…ニコニコしちゃって幸せそうなんだから。
「なるほど…私も行きます!」
まあ上級くらいならレイさんクリアできそうかも。
レイさんはゴウケツさんより身軽に登って行くが、最後の突起が遠すぎる。
どうすんだろあれ…
ゴウケツさんの手の長さなら普通に届くけどゴウケツさんそもそもデカいから…
すると腕力のみで飛び出し、壁を蹴って最後の突起を掴んだ?
いや、小指が引っかかっただけだ、流石にその体制では…。
「届きましたね」
そう言うと小指の力で身体を持ち上げ、そのまま勢いよくゴールに手をかけた。
なに今の。なんかすごいもん見た…。あとメイド服着替えたらどうですか?なんか下から見上げてるの罪悪感あるんですけど。
「この達成感…クセになりますね…」
「そうだろう、人間の動きではないような気もするが大したもんだ。」
上でゴウケツさんと達成感を共有するメイド。あんな光景を見られるとは…
「それでは私も行きましょう」
この流れだとサイカさんも行けちゃうな。
最初はスルスル登っていくがやはりネックは最後のジャンプか…。
サイカさんも悩んだ末にレイさんと同じ方法で壁を蹴ったのだが…あと数センチ届かずに落下していく。
まあ下はマットだし、なんならサイカさんなら怪我なんかしないだろう。
しかし落下する手をゴウケツさんが掴んだ。
「惜しかったな」
「私の負けですかね…もう少しだったんですけど…少し悔しいですね」
「良くやった、最後まで諦めない立派な戦士だった。」
良い夫婦だ。仲良いもんね二人とも。
「何かすごく負けたような気がするのですが…」
レイさんは何かスッキリしないようだ…分かるよ!その感じ!
全員が下に降りてきたのだが…
そう言えばチヒロちゃんってどこに…
「ねぇ見てー!もう半分まで来たよー!」
上を見上げると地獄級の壁を半分まで登っているチヒロちゃん、何?どういう事?
見てみるとレイさんのように壁を蹴りながら登っている。身軽だからってここまで出来る?なんか空中歩いてない?
「すごいな、チヒロは立派な戦士だ」
ゴウケツさん戦士以外の褒め言葉知らないの?
「ちょっと私も登ってみます!」
レイさんもチヒロちゃんを見て何か掴んだらしくどんどん登っていく。
しかし途中で突起を掴み損ねて落下してしまった。
「これは…難敵ですね、もっと精度をあげて飛ばなければ…」
無理しない方が良いよ、空中歩けるようになったらもう一回やってみよ?
結局チヒロちゃんは地獄級を制覇してしまった。
得意げに降りてくる子供を迎える父と母。
子供の成長が嬉しいのだろう、二人とも嬉しそ…うか?なんかすごい作り笑いみたいな…
「チヒロ!すごいわね!ちょっと麻雀でもしない?今度は頭を使いましょう!」
「チヒロ、お前は戦士だ。次はパンチングマシーンをやろう、きっと前より強くなっている事だろう」
「チヒロさん、おめでとう御座います。次はエアーホッケーしませんか?面白いですよ」
なにこの大人達、ボルダリングで負けたからって自分が得意なゲームで勝負持ちかけてる!!負けず嫌いにも程がある!しかも子供相手なのに!!
大人の悪い所出てるよ!
その後それぞれの得意種目で威厳を見せつけ、なんとか面子を保ったようだ。
麻雀はかなり危なかったけど…
その後は毎度の宴会だ。釣りもあるし水族館も増えたよ!衣装室もあるんだよ!
ある程度説明をした後に僕はボルダリングに一人やってきた。
上級か、ちょっとやってみるか。
やってみると意外に登れる、なるほど、指の力がある程度あればあとは体幹か。
いやラストは普通に無理だ。僕は一人で落下し、壁を見上げてこう思った。
レイさんって人じゃないんじゃないの?




