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窓に目を戻すと、黒いスーツの男性の背を愛しそうに見つめながら見送る女の人が目に入った。
…微笑んだ?
私に?
まさかね。
不思議に思っていると後ろから呼ばれた
「揃われたようよ」
と。
私はそのままママの元へ戻ると、いつの間に来たのか、パパが先方の親らしき人に挨拶をしているところだった。
「はじめまして」
と、丁寧にお辞儀をすると
「こちらこそ」
と、返される。
この品の良さそうな凛とした少し小柄な女の人が《お義母さま》だろう。
そしてこちらの方が《お義父さま》。
で?
当人は…?
と視線をロビーの先に移すと、黒のスーツを着た先程の中庭に居た男の人が向こうから歩いてきた。
彼女との一時を終えて、今から仕事にでも向かうのだろうか。
そんなことを考えながら窓を見ると、そこにはまだあの女の人が居た。
さっきから動いていない?
あぁ、そうか。
あの人の姿が見えるから…
見送っているのかも。
そうして…
視線をママ達の方へ戻すと…
黒いスーツの男の人はパパと握手をしていた。