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浴室を出ると自室に戻り、厚手の大判のショールを取り出す。
まだ6月。
掛けるものが何も無いと言うのは堪える。
部屋はエアコンももちろん完備されているし当分はこれがあれば大丈夫…。
ソファーに座り部屋を見渡す。
窓。
…今はアイボリーのカーテンを付けている。
そして壁一面のクローゼット。
部屋にあるのは白いこのソファーベットのみ。
そしてちょっとした棚がわりに使っている積み上げたトランク。
私の持ち物はそれだけ。
バスセット、洗面セットは小さな籠に入れてその都度持ち歩くことにした。
洗濯物も部屋に持ち帰った。
もし…
あの女の人がここに来ても気分を害さないように。
これから…
どんな生活が始まるんだろう。
疲れきった私はその日、ソファーベッドを倒す事なく、枕替わりのクッションに顔を埋めてそのまま眠り込んだ。
本当に疲れていたから…
人生の一大イベントと言われる結婚式。
女の子なら誰もが憧れ、夢見る物だろう。
だけど、実際のところ私はドレスも式場も何一つ選んでいない。
お色直しのドレスは打ち合わせで訪れた時に5着、新作のデザイン画のカタログを見ながら店員さんが説明して、お勧めしてくれるものを
「じゃあそれで」
と、言って決めただけ。
ここのブライダルの専属デザイナーの全て新作。
それを採寸して私のサイズに作り上げてもらった。
だから前撮り当日まで一度も試着をしていない。
セミオーダーだったけれど私は拘らないし思い入れもないから全然平気。
そして着たドレスは式の後、ホテル側に無料で引き取ってもらった。
条件はリフォームしてからレンタルに落とすこと。
桐生家の披露宴に使われたものがそのままどこかの披露宴で使われたんじゃ困る。
と言うお義母様の言葉から。
そのまま実家に置いておくと言うことも出来たけど、それはウエディングドレスだけで良い。
第一、桐生家とも有ろう者が披露宴で着たドレスを他のパーティー等で着るとは思えない。
そんなことは三条家でも絶対しない。
ウエディングドレスですら本当は残しておきたいほど執着も愛着も他の利用価値もないのだけれど。
逆に思い出として残しておきたモノではないのに。
後々ここを出たときに、目にしたくないものが増えるだけ。
あの、ティアラも…
値段がいくら位の物なのか知らないけどそんなことは関係ない。
だけど流石にそこまでは言えなかった…




