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どこをどう歩いたのか、今からの事を考えながらただその背中を追っているといつの間にか着いていたようだ。
零が木のお洒落な扉を開けると、一気に店の中が盛り上がった。
「漸く主役の登場だ!」
「きゃあ!桐生さん!本物?!」
様々な声が上がる。
貸し切りなんだと思うけど…
こんな風に浮いた声を出す人が友人に居るのだろうか?
少し…以外だ。
そう思いながら、零が押さえてくれている扉の中に入った。
「!」
中に入って回りを見渡し目を見開いた。
「来てくれてたの?」
私の友人として披露宴に来てくれていた子達がごっそりとここに顔を見せていたから。
誰が声を掛けたの?
私は掛けてない。
だって、来て貰うつもりなんて無かったから。
「当たり前でしょう?茉愛沙のお祝いに」
「そうよ。茉愛沙」
声を掛けてくれたのは中等科の時からの級友。
「…ありがとう」
学生時代の私は普通に友達には恵まれていた。
上流社会とか関係なく、本当に楽しく過ごしていた。
高等科や短大に上がっても。
それは変わらなかった。
懐かしいあの頃…。