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私はこの春、中等科から在籍していた|《凰秀国際女学院》の短大を卒業した。
大学ではなく何故短大にしたのかは、その後留学ではなくイギリスへ移住して母方のお婆様の元で暮らそうと思っていたから。
私のママは日本人の父とイギリス人の母を持つハーフ。
だから私はクオーター。
戦時中、負傷したお爺様を介抱したお婆様との間に恋が芽生え晴れてゴールイン。
まるで映画のような話。
お婆様は元々貴族でイギリス王室ともゆかりの有る家柄。
そこへそのまま留まる形で結婚したお祖父様。
語学の壁と、生活の違いで仕事をすることは出来なかったけどそれでもお婆様との愛は順調に育まれた。
ママはその娘として花のように育ったのだとお祖母様の邸のメイド達に聞いた。
でも、貴族と言うのは名ばかりで時代と共に何の力も権力も持たなくなり、富も食い尽くすばかりの生活。
そして、ママはパパと結婚した…
それは…
お爺様とお婆様の生活を守る為に。
貴族出身として生まれ育ったお婆様の生活は変わらない。
そしてお祖父様との暮らしも状況が変わっても変わらない。
パーティーに招待され、また招待する。
贅沢な暮らしに慣れてしまったお婆様を助けるため。
お祖父様はこの先の危機を分かっていても、自分の不甲斐なさが招く生活の現状にただ、ママに頭を下げるしか出来なかったと言う。
ママは出席したパーティーでパパに見初められ、お爺様達の生活の援助を条件にパパと結婚した。
そして私が生まれた。
元々、そこに愛が有った訳でもないパパとママの間には冷たい風が吹き抜けていて、パパは当たり前のように、外に愛人を作りその間に子供を作った。
そして、家に引き取り|《息子》として跡取りを作った。
そんな私には兄が1人と、弟が1人居る。
それぞれ母親の違う…兄弟。
兄の修星〈しゅうせい〉は6つ上の26歳。
アメリカの大学を出て、今はパパの会社の後を継ぐべく副社長と言う立場。
弟の塔季〈とうき〉は私より5つ下で今はまだ高校に入ったばかり。
いずれは兄の右腕にでも成るんだと思う。
会社の事は全く知らないから分からないけれど、《男》は役に立つが、《女》はお飾りか何かの駒にしかならないのだろう。
私は会社のことは一切触れたことはなく、ただ習い事に日々追われた生活をしていた。
「己を磨け」
それは幼い頃から私に呪文のように植え付けられた言葉。
そしてそれが私の生きる道なんだと聞かされて育った。
だから頭では自分の立場を理解していたつもり。
《政略結婚》
会社の利益になる所へ嫁に出される。
それが私が生まれてから課せられていた運命。
いわゆる私《駒》の使い道。
だけど…
これは実際に突きつけられるとそう簡単に受け入れられる物事ではなかった。