4
食事もほぼすんだ頃、ママが
「茉愛沙、何かお伺いすることはない?」
と促してきた。
「…」
緊張しているわけではない。
私には何も問うことも疑問に思うことすらも必要ない様な気がした。
白を赤と言われても
「はい。それは赤です」
と言う立場に居る。
そう言いわなければならない立場に。
その事を理解した今、私に何を問えと?私に何を望めと?
「それにしても可愛らしいお嬢様ね。お歳は20歳でしたかしら?」
「はい。まだまだ世間知らずでお恥ずかしいばかりです」
お義母さまとママの会話。
その後もむず痒くなるような会話が続いていく。
聞く気にもなれず曖昧に微笑みだけを作ってテーブルの下でハンカチを握りしめていた。
「そうだわ。零、このホテルを少しお散歩してらっしゃいな。素敵なお庭が有ると聞きましたよ」
それにはさすがに瞬きの数が増えてしまった。
だって…
この人がさっき赤いスーツの人と優雅に散歩をしていた姿を見て居なかったのだろうか。
硝子1枚隔てた向こう側であんなに目を引く女性の肩を抱いていたと言うのに…
でも、零はその言葉に視線だけで返事をして席を立ち
「少し歩くか?」
と聞いてきた。
「…はい」




