皇帝の味は朕の味?
この作品は、AIその他、多くの人々の協力の下に書かれました。
中夏帝国。そこは、民が飢えに苦しむ一方、皇帝が贅沢三昧の暮らしを送る国であった。皇帝は、親の七光りで帝位を継いだだけの、愚かで傲慢な男であった。
ある日のこと、宮殿に高名な占い師がやって来た。皇帝は、この占い師に自らの未来を占ってもらうことにした。
「陛下、後世にお名前を残すことを望まれるのであれば、世界でもっとも巨大で豪華なラーメンを作り、それを食す必要があります」
占い師は、真剣な面持ちで皇帝に告げた。皇帝は、その言葉を聞いて目を輝かせた。
「世界一だと? それは面白そうだ! さっそく取り掛かるぞ!」
皇帝は、臣下たちに巨大ラーメン作りを命じた。臣下たちは、皇帝の突拍子もない命令に困惑したが、逆らうことは許されなかった。
巨大な鍋、大量の麺、選りすぐりの食材… 臣下たちは、国中を奔走し、巨大ラーメン作りに必要なものをかき集めた。しかし、作業は難航を極めた。巨大な鍋は重すぎて運べず、食材はすぐに腐ってしまう。臣下たちは、皇帝の怒りを恐れ、寝る間も惜しんで作業を続けた。
「まだ完成しないのか! 朕は一刻も早く、あのラーメンを食したいのだ!」
皇帝の怒りは煮えたぎるスープのように沸騰した。臣下たちは皇帝の命令に、あたふたとうろたえた。民は飢えに苦しんでいるというのに、皇帝は自分のことしか考えていなかった。
ついに、巨大ラーメンが完成した。宮殿の庭には、巨大なラーメン鉢が設置され、その中には、湯気が立ち上るスープと、中夏全土から集められた海の幸、山の幸が山のように盛り付けられていた。
盛大な披露式典が開かれ、皇帝は満足げにラーメンを眺めた。しかし、一口スープをすすった瞬間、皇帝の表情は曇った。
「なんだこれは! まったく味がしないではないか! この世で一番素晴らしいラーメンを作るように言ったはずだぞ!」
皇帝は、臣下たちに向かって怒鳴り散らした。
「ですが陛下、既に国内全土を渡り最高品質の牛を、豚を、鶏を用意しております」
臣下たちは、恐る恐る答えた。
「ええい、こんなもので朕を満足させられると思うな。この世界でもっとも素晴らしいものから出汁を取るのだ!」
皇帝は、ますますヒステリックに叫んだ。
臣下たちは顔を見合わせ、困り果てた。しかし、一人の臣下が意を決して口を開いた。
「では、この世界でもっとも素晴らしいものから出汁を取りますね」
次の瞬間、臣下は皇帝を抱え上げ、巨大ラーメンの器へと投げ込んだ。
「ドボン!」
そう、この世界でもっとも素晴らしい皇帝は、もっとも素晴らしいラーメンの出汁となったのである。
その味はまたとない珍しい味であった。珍味、これは「朕の味」という言葉が語源だったのだ。
こうして、愚かな皇帝は、自らの傲慢さによって身を滅ぼした。巨大ラーメンは、皇帝の愚行の象徴としてそのまま残された。
歴史書は彼をただ一言「麺帝」とだけ記している。
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