焼き払うには遠く及ばず
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
他にも理由は二つほどあるんですけど、ご自分で仰る事はほぼない気がします。
だから私が言います。
風と共に尾行に届く馨しい香。揺らめく髪は、大元から離れると火の粉の様に輝く、眩い程の赤。その姿に唖然としていると、ゆるりと此方をご覧になる。
肌の露出を拒む様なお姿。首も、指も、足先に至るまで、ぴったりと肌に吸い付く下着。その上から着物と袴を身に付けていらっしゃる。唯一露出しているのは、顏と人差し指と小指くらい。 これまでお会いした方々も露出は控えておいでだったが、此処までなさる方は初めてだった。
「熱くはないだろうか?」
「? はい」
「ならば良い」
そう仰ると、丁寧に一人分の感覚を開けて腰掛けた。
其れから丸々一年が過ぎ去った。茹だるような夏の日も、凍える様な冬の日も、決して御前の風姿が変わる事は無かった。ただ露出した顏と指先だけが、人肌を称えていた。
ある雪の日、私も極力露出を控えた格好で、この場を訪れた。奇しくも彼の方と似たような格好。露出しているのは顔くらいのものだった。お揃いを感じて少し嬉しくなる。
「貴方様の出で立ちは、この季節にはとても暖かそうに思えます。けれども露出した指先は少し心配ですね。霜焼けにならないか」
そう冗談混じりに申し上げると、改めてご自分の指先をご覧になった。この凍てついた世界でも、腫れる事無く美しい曲線を描いている。
「其れで良いんだ」
「? はい?」
一瞬何の事か分からずに、思わず真顔になる。その反応を見て、彼の方は少し寂しげに微笑んだ。
「俺がこの格好の理由の一つは、誤って誰かを焼き焦がさない様にする為だ。これは一種の制御装置を兼ねている」
確かに彼の方の体温は人と比べ物にならない程に高い。近寄るだけで暖かい。もし仮に、素肌同士が触れ合ったら熱を感じると思う程に。それくらい暖かい。
「だがもし、全ての感覚を遮断してしまったら、力を制御することが出来なくなってしまう。出力の増減を推し量れなくなる。故の露出だ」
「……」
基本的に神様は好意表現は激しい。抱き締められる事も、顔に触れるのも当たり前だった。けれども彼の方だけは必ず一歩引いたところから、そっと接する。其れはきっと誰かを傷付けたくないという気持ちから来るものなのかも知れない。じゃあ、彼の方は生涯誰にも触れる事無く過ごすのだろうか? 人の熱も知らず、永遠に。
「あの、手に触れても宜しいでしょうか……」
そう申し上げると、警戒した様に身を強ばらせた。なんなら少し後退りもなされた。
「申し訳御座いません。けれどもやはり、もっとお近づきになりとう御座います」
すると恐る恐ると言った様に、此方に手を伸ばされる。黒の手袋に覆われた指と、白い皮膚に覆われた指、その両方を上下から包み込む。
黒の指はかじかんだ指を溶かす程に暖かった。白の指は雪を溶かす程に暑かった。
「熱くはないだろうか。焼いてはしまわないだろうか」
「何方もとても、溶けるほどの熱さで御座います。ですが焼き払うには遠く及ばず」
そうして火照る程にそうしていた。微睡んだ事は言うまでもない。
静かなる赤 に登場したあの神様です。
以下、R15です。私の設定の話。
肌の露出を控えているのは、傷を隠す為です。
神話から体をバラバラにされています。
故に関節や首回りに縫い跡があります。
傷跡は無くせますが、傷を治してしまったら、あの時の悲劇もきっと忘れてしまう。
けれども誰かに心配されたいとは欠片も思ってません。
そんなのは罰にならない。
そんな自罰的な思考から、この選択をなさってそうな。
あと繋げた体がバラけ無いように押さえ付ける為です。
小説の内容と上記の理由から、ぴっちりインナーの着用決めました。
最初は指の露出もゼロだったんですよ。
でも指出してるの性癖なんです。
それ以外考えられなくなりました。
だから考え直して思いついたのがこの理由。
全部の感覚を遮断したら、出力の増減も分からなくて暴走してしまうのでは?
という思いから。
あと何処かで人と接触したいと思っていて欲しいです。